パリの駅舎をリノベーションした「ラ・ルシィクルリ」に都市農園が誕生!

2014年8月に、使わなくなった駅舎を改装した多目的スペース「ラ・ルシィクルリー」を紹介しました。先日、約1年ぶりに訪ねてみたところ、屋根にも線路沿いにも緑のスペースが増え、線路沿いに残っている土を使った実験的な“都市農園”も誕生。定期的に開かれている農園の見学会に参加して、詳細をうかがってきました。

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線路沿いに整備された“都市農園”。右側に見えるフェンスの向こうに線路があります。

見学会のスタートは、「ラ・ルシィクルリー」の屋上から。屋根の上に赤玉土のようなものを2cmの厚さに敷き、ハーブやトマトを植えています。屋根の周囲にはアイビーなどのツル科の植物を植え、時とともに屋根全体を這わせる予定とのこと。

あえて剪定などはせず、自然にハーブを育てています。屋根には2階の窓から入りますが、見学会以外は入れません。

続いて、階下のカフェ・レストランのスペースを通り抜けて、屋外へ。さらに階段を降りて線路脇に向かいます。

階段を降りて左側には、鶏小屋が。鶏は当初16匹でしたが、6月に6匹が盗まれ、10匹になってしまったそうです。えさは「ラ・ルシィクルリー」のレストランの残飯から。レストランは平日およそ200食、週末はおよそ400食をサービスしていて、残飯の量は1日6~12kgに上るそうですから、鶏の存在が、生ごみの削減におおいに役立っているといえそうです。

ただし、認可された鶏卵場ではないため、鶏卵を販売したりレストランで使うことはできません。ですから希望者に無料であげることもあるそうです。

正面に見える木の小屋が鶏小屋。

現在10羽の鶏が元気に走り回っています。

鶏小屋の左はハーブ菜園になっています。

香りの植物を中心に栽培。

ハーブ園の後ろは、鶏の散歩道になっています!

続いて目に入ったのは、金魚が泳いでいる木製の水槽。これは、魚の養殖と水耕栽培が同時にできる「アクアポニックス(魚耕栽培)」のシステムで、フランスでも少しずつ試行が始まっているようです。

アクアポニックスの水槽。金魚が元気に泳いでいました。

アクアポニックスは、魚の排出物を微生物が分解して、植物の栄養素となり、さらに水を浄化して水槽へ戻す、という循環型のシステム。地球にやさしく、土や肥料、水やりも不要で、どこにでも設置でき、誰でも作業がしやすいといった利便性があるそうです。

もっとも奥にある農園は、約400㎡。今年3月から準備を始めたそうで、トマトやズッキーニが大きく育っていました。

担当者が1人常駐し、手入れを行っています。線路脇の土地はSNCF(フランス国鉄)の所有地で、数年の契約で借りているそうです。

一番奥から見たところ。

この農園の特徴は、無農薬で有機肥料を使っているのはもちろん、もともと線路脇にあった土を使っていること。「都市の土は汚染されているという声もありますが、都市に土を“戻し”、活用の仕方を考える必要があると思います」と農園を運営する非営利団体「アミ・ルシィクルール」の担当者は話していました。

同協会は、菜園を始める前に土壌の検査を行いましたが、問題はなし。さらに現在、専門機関に収穫物の検査を依頼中で、どんな結果であれ公表して、今後の研究材料にしていくそうです。

さらにミミズを使って堆肥をつくり、農園に活用。元となるのはもちろん、果物の皮やコーヒーなどレストランから出る生ごみです。

ミミズ・コンポスト。

ガーデニングや農産物の栽培の仕方についての講習会が定期的に開催。さまざまな人が、自然に、この農園の運営にかかわっているのです。

将来的には、無水トイレの設置や雨水の再利用システムの整備など、環境に配慮したシステムを構築していく予定。今年11月終わりから、パリで「国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)」が開かれることもあって、環境に関する意識を高めるためのさまざまなイベントも企画されていました。

最小限の資源で、土地を最大限に利用するシステムは、パリ以外の都市や日本でも、ますます考えていきたいテーマ。なかでもアクアポニックスは、小さなサイズもあるようなので、マンションのロビーや室内のインテリアとしても、気軽に取り入れられそうですね。

2015/10/21

プロフィール

三富 千秋

パリ在住のフリーライター。パンや菓子、料理など食の話題を中心に雑誌や食専門誌に発信しているほか、フランス人のライフスタイルについてのコラムも執筆。フランス人の日常生活をさらに知るべく、フランス各地で取材中。


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