パリの19世紀の個人邸宅を小学校に活用~地域の文化・教育のコミュニティーの場に~

今回はアパルトマンの話題から少し離れて、ある公立小学校を紹介します。

小学校といっても、19世紀に建てられた個人邸宅を改装したというユニークな学校です。学校関係者以外はふだん入れませんが、9月15日-16日の「文化遺産の日」にあわせた特別公開日に、見学にいってきました。

小学校があるのは、パリ9区のクリシー通り。オペラ座やデパート街の東にあたり、ショッピング客のにぎやかさと庶民的な雰囲気が交じり合った界隈です。

ヴェンデル邸を改装した小学校は、クリシー通り10番地にあります。 Hôtel Wendel- 10 rue de Clichy 75009 Paris

4階部分にある円形の彫刻には、ヴェンデル家の頭文字Wが見えます。金色の獅子のドアノブが付いた大きな門をくぐると、石畳になっていて、校庭に続きます。

もともとこの建物は、製鉄業と金融業で財を成したヴェンデル家が、1856年から1864年にかけて建設。ヴェンデル家は第二次世界大戦後まで住んでいて、その後は所有者が転々とした後、1985年から保険会社のオフィスに。2002年にパリ市が購入し、慈善団体が利用していましたが、小学校として活用することを決定。2010年1月から改装工事を始め、2011年9月の新学期から、12クラス、約200人の児童が学べる小学校となりました。

4800㎡の広さを誇る敷地には、L字型に建物が建っています。クリシー通り沿いにある建物は、ヴェンデル家の居間や寝室、ダイニングルームが残る“母屋”。19世紀の装飾をそのまま残して改装され、児童の行事のために使われているほか、1階は児童の食堂に。授業のない週末や夕方、バカンス期間中には、コンサートや展覧会を開催するなどして住民に開放。地区の教育・文化の場として活用されています。

“母屋”の中央階段。鉄の手すりの装飾も美しい。

金色の装飾、天使のモチーフが華やかな居間。

母屋に対して直角に建つもうひとつの建物は、レンガ造りで、母屋とも行き来できるようになっています。ヴェンデル家の使用人の住まいだった場所で、馬の厩舎もあったそう。現在は、1階は多目的ホール、2階から上が児童の教室になっています。壁は真っ白に塗装して、エレベーターも設置するなど近代的に整備。明るくて清潔な廊下や教室に、子供たちのカラフルな作品が飾られていました。

小学校の廊下。真っ白な壁に真っ赤なドアが印象的。

壁の一部がガラス張りになっていて、廊下からも教室を見ることができます。

教室の中の様子。

廊下のフックには、子供たちが自ら魚の絵の名札を作って貼っていました。

真ん中に大木が立つ校庭は、800㎡。校庭の端には、柵で囲まれている噴水がありますが、石を一つ一つ組み立てて修復したものだそうです。水はもう流れていませんが、校庭には不要な噴水を、壊してしまわずに修復して残したという姿勢そのものが、大切なものに感じます。

左に見えるレンガ造りの建物が、児童の教室がある部分。かつてはヴェンデル家の使用人の住まいだったそう。

児童の教室(右側の建物)とヴェンデル家の住居部分。

裏から見た学校の様子。

パリには、古い個人邸宅を区役所や美術館といった違う目的で活用している例がたくさんありますが、小学校への利用は唯一の例といえるのではないでしょうか。19世紀の建物や装飾に、日々何気なく触れあっていることで、歴史や文化財への自覚が自然と芽生えていくのかもしれません。新旧の世代をつないで、地域住民の交流を深めるきっかけにもなるでしょう。

このような文化的にも貴重な建物や公園がお住まいのマンションの近くにあれば、地域交流のきっかけになるかもしれません。自然と人が集まって、会話が生まれて、コミュニケーションが深まっていけば素敵ですね。

2012/10/25

プロフィール

三富 千秋

パリ在住のフリーライター。パンや菓子、料理など食の話題を中心に雑誌や食専門誌に発信しているほか、フランス人のライフスタイルについてのコラムも執筆。フランス人の日常生活をさらに知るべく、フランス各地で取材中。


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