高齢者のためにコミュニティでできること Part.6 マンションで高齢者が働く可能性について伺う

居場所と出番のあるコミュニティづくりが一番〜コープ南砂

前回までの研究室Part.5で提議された「高齢者が、報酬を得ていきいきと活躍できる仕組みづくりがマンションにあれば、もっといきいきと暮らせるのでは?」という仮説について、マンション内で助け合いの会を運営しているコープ南砂の皆さんにご意見を伺いました。

写真向かって左から、管理組合理事長の岡村さん、助け合いの会副代表の沢里さん、自治会長の岩﨑さん、助け合いの会事務局長の小林さんの4人の方々にお話を伺いました。

居住者の信頼関係の上に成り立つコープ南砂の「助け合いの会」

コープ南砂/助け合いの会

困った時は“お互いさま”が合い言葉の、会員制の互助会。会員は相互にできることで手を貸し合います。

高齢の居住者の暮らしの中でちょっと手を借りたい作業や相談に、居住者である会員が気軽に応えます。

助け合いの会の親睦活動のひとつ、ふれあい喫茶室は、月に2回、女性の居住者が集会室に集まってお茶とお菓子でおしゃべりするというもの。一人暮らしの方も、家族のある方も、しばし憩いを得る場となっています。

コープ南砂では、以前マンション・ラボ記事でご紹介したように、会員制の互助会組織「助け合いの会」により、マンション内の会員同士が互いにできることで手を貸し合い助け合うことで、心豊かに安心して暮らせるコミュニティづくりに貢献しています。

その活動は、住宅設備の保守・修理、家事支援、外出支援、介助支援、子育て支援などの他、ふれあい喫茶室や趣味のグループ活動といった親睦活動まで、多岐にわたる活動を行っています。

会は、出資金としての入会金3,000円と年会費1,000円で運営され、利用料は350円/30分で、うち300円が支援者に支払われます。現在、自治会会員世帯の約80%の127戸が会員となっています。

これこそ報酬を得て、居住者が得意な部分で活躍できる場づくりがマンション内に存在している事例なのではないでしょうか?

しかし「いいえ、それは違います」と、事務局長の小林さんはきっぱりと否定します。

「高齢者が、報酬を得ていきいきと活躍できる仕組みというのは、シルバーセンターや高齢者雇用などの人材活用ビジネスという意味が強いですよね。これらは高齢者に生きがいと自信を与えてくれるもので社会的意味は大きいと思います。

助け合いの会事務局長の小林さん

しかし、我々が行っている助け合い活動は、ビジネスではありません。あくまで目的は、居住者が安心・安全・快適に暮らしていくための相互の助け合いです」と小林さん。

助け合いの会副代表(防災委員会本部長)の沢里さん

「助け合い活動は基本的にはボランティア活動ですが、利用料を無料にすると、高齢者などの利用者が謝礼に気を遣い、場合によっては謝礼の不公平感が生まれてきます。それを予防する意味合いで、最低限の利用料を設定しています」と、助け合いの会副代表の沢里さん。

自治会長の岩﨑さん

「助け合い活動の担い手が、高齢者のふだんの生活のお役に立ち、言葉を交わして手伝うことで、自然なかたちでの高齢者の見守りにつながっています。このことも、助け合いの会の大きな存在意義です」と、自治会長の岩﨑さん。

マンションでビジネス的な起業は無理

管理組合理事長の岡村さん

管理組合理事長の岡村さんからは、「管理組合の規約では、内部発注を禁止しています。マンション内での居住者同士の報酬のやりとりは難しいですね」と指摘されました。

「報酬をもらっての仕事となると、岡村さんが指摘されている管理規約や法的な問題に加えて、居住者同士の不信感や誤解から対立を招く恐れもあります。やはり、ビジネスとしての展開は、どこのマンションでも難しいでしょう」と小林さん。

「助け合いの会」は、他のマンションでも展開可能か?

コープ南砂での助け合いの会は、報酬が発生するビジネス展開事例ではないことがよく理解できました。しかしこの素晴らしい仕組みを、他のマンションでも展開できないものでしょうか?

「もちろん他のマンションでも展開できると思います。そのためには、日頃からマンション内で居住者同士のコミュニティ活動が活発であることが前提ですね。いきなり助け合いの会をつくりました、では無理です。居住者同士の信頼関係、人材の確保、リーダーシップといった条件が揃わないと。助け合い活動は、居住者との信頼関係の上に成り立っているのですから」と小林さん。

コミュニティ活動が育まれていないマンションで、いきなり助け合い活動を呼びかけても、きっと協力する人も依頼する人も少ないことでしょう。マンションの部屋に人を入れて手伝ってもらうというのは、依頼する側にしてもハードルが高いことなのだと、コープ南砂の皆さんの意見を伺って痛感しました。

「居場所」と「出番」のあるコミュニティづくりが大切

では、マンションが高齢者のためにできる、他のことはないのでしょうか?

小林さんたちは、高齢者だけに限らず、マンション居住者みんなの「居場所」と「出番」のあるコミュニティづくりが大切だといいます。

「リタイアした男性陣の多くは、現役時代は“企業戦士”として過ごしたため地域やマンションでのつながりがなく、中には家庭で粗大ゴミ扱いの人もいます(笑)。しかし、団塊世代には優れた人材が沢山います。彼らがコミュニティの中で気持よく参加できる“居場所”と“出番”をつくり、しかるべき男手を団塊世代から集めて確保するといいですよ」と、小林さん。

「悠々自適な生活をするなって、仲間内でも言っているんですよ。軽い責任と適当なストレスがないとボケるぞって(笑)」と岩﨑さん。

「そのかわり、強制しない、命令しない。自分で考えてやることが大切ですね」と沢里さん。

冗談めかしておっしゃっていますが、小林さんたちは居住者全員がマンションの中で何かしらの出番を受け持たせるように配慮しているそうです。

小林さん「2月の大雪の際には、子どもまで出てきて30名くらいで除雪作業を一緒に行いました。ふれあい喫茶に参加している高齢者の方々には、ひなまつり会の折り雛を着物の生地を使ってつくってもらいました。4月の観桜会には、80歳以上の居住者はご招待しましたが、“年寄りは元気にしている様子を見せてくれるのが仕事ですよ”って言っています。」

ふれあい喫茶室に集まる高齢者の方々の手作りのお雛様。

助け合いの会では、「緊急連絡先カード」を希望者に無料発行。外出中に熱中症や持病で具合が悪くなった場合に備えて連絡先を記載したカードとして携帯します。

誰でも参加できる、人の集まる場づくりを行うことを薦めるけれども、ただの飲み食いだけの集まりでは、発展性がない。自分がそのコミュニティの中で役割を担う「居場所」と「出番」があることが、マンションコミュニティづくりの基本だという、コープ南砂の皆さんからのアドバイスには納得です。

助け合いの関係づくりがコミュニティの要(かなめ)

マンション・ラボ研究室では、これまでのPart.1からPart.6まで、高齢者のためにマンションできることを模索してきました。

そしてひとつの可能性として、「それぞれが得意な分野で報酬を得ていきいきと活躍できる仕組みづくり」について、実際にコミュニティづくりに積極的なマンションの方々にお話を伺って参りました。

その中でコープ南砂の皆さんが指摘されたように、報酬を得ることで認められるビジネスモデルとしての展開ではなく、相互信頼関係が育まれたコミュニティ基盤をベースにした助け合いの関係づくりこそが、今後のマンションコミュニティの要なのではないかという思いが強まりました。

「地域通貨」で助け合いの輪を広げる可能性も

また、金銭的な報酬というかたちではなく、マンションコミュニティやそこに住む人々にとってよいことを提供し、その感謝の気持ちとして提供される「地域通貨(コミュニティーマネー)※」を、マンションだけでなく地域全体で提供して助け合いの輪を拡大していくのもひとつのアイデアかもしれません。

※「地域通貨」とは?:特定の価値観やニーズを共有する地域住民のグループ中で流通する価値の媒体。「通貨」と呼びますが、現金と似た紙やプラスチック製のチップなどの形で流通させている場合もあれば、物理的な媒体を発行せず、口座上でのみ管理する場合もあります。直接それを使う人々が自発的に発行します。

自分のできること・してほしいことを登録して、手助けが必要な人に自分のできること提供し、お互いに助け・助けて貰えるコミュニティ。そんな助け合いの輪が、マンションから地域へ広がっていけば、素晴らしい展開になりそうです。

マンション・ラボ研究室では、これからもマンションコミュニティでできることをテーマに、さまざまな取り組みを紹介して、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。また、皆さんからのアイデアやアドバイスもいただければ幸いです。

2014/07/29

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