高齢者のためにコミュニティでできること Part.4

「高齢者のために、コミュニティでできることを考えよう。」をテーマにスタートした今回の研究室。今回は、これまでに取り上げてきた「国内外での高齢者が対価を得て働くニーズマッチング事例」から、マンションの中でできることを考えます。

これまでの記事
高齢者のためにコミュニティができること Part.1~高齢者を取り込む鍵は、対価という概念~
高齢者のためにコミュニティができること Part.2~子育て、シェアハウス、国内の事例~
高齢者のためにコミュニティができること Part.3~海外の事例から考える、高齢者による社会貢献の仕組み~


「マンションのシルバー人材センター」的組織を第三者が構築する!?

佐藤:これまで「高齢者のために、コミュニティでできること」を考えてきましたが、単なる交流や親睦のためのコミュニティではなく、高齢者が生き甲斐や満足を感じることができる仕組みづくりに話題がシフトしてきました。そして平生さんから「その仕組みのひとつのかたちは、対価の提供をベースとしたビジネスモデルなのではないか」という示唆をいただいたことで、国内外の事例を考察してきました。

平生:見てきた事例は、ニーズとニーズがうまくマッチングしている上に、しっかりとした報酬メカニズムも存在していましたね。安価でサービスを利用できる、高齢者人材を活用した「シルバー人材センター」のようなサービスをマンションでも利用できないでしょうか。マンション内に居住者のシルバー人材センターみたいな組織があって、それはボランティアではなく、有償でサービスを提供する、というような。

三輪:子育てサービスだけじゃないでしょうけれど、港区の「子むすび」サービスが、マンション内にあるようなイメージですね?

平生:そうです。ただ、そういう仕組みを提案するとしても、当事者である高齢者から「有償サービスですよ」と言い出しにくい状況があると思うんですよね。だからそこは、第三者の管理会社などが代行してお金を取る仕組みを提供します。お金を出してサービスを利用する人がいないのであれば、それはそのサービスに魅力がないということですから、非常にわかりやすいですよね。

藤本:そうですね。それは管理組合でもなかなかできないことですしね。

平生:理事長から高齢者を有料で雇って仕事をしていただきます、というパフォーマンスを行ってもいいと思うんですが、いろいろ積み上がる問題をクリアして実行できる人はいないでしょう。だからたとえば管理会社が、「マンションのシルバー人材センター」みたいな組織を構築して、「高齢者によるサービスを、通常2000円のところを800円で計算してサービス提供できますから、管理組合として利用してみませんか?」と呼びかけることはできるでしょうね。第三者的な企業が、そういうサービスの仕組みを提供していかないとやはり難しいでしょう。

三輪:自分たちの身の回りのことを高齢者にお願いするということで、サービスを利用する側としては「高齢者の支援をしている」という意味合いにもなりますよね。実現するには港区の「子むすび」サービスのマンション版みたいになるようなシステム化が必要でしょう。

平生:システム化しないとなかなか実現できないでしょうね。それこそ理事長や個人で音頭を取ってやるにはよほどのパワーが必要ですよ。ニーズをマッチングするためには、ちゃんと対価を払って受け取ってもらうという、わかりやすく、使いやすい仕組みになっていないといけませんね。

三輪:マンションに住む主婦も、そういうシステムに登録したいかもしれませんね。フルタイムは無理だけど自分の予定が空いていて、やりたい時間だけ働ける。普段は対価にならない家事仕事でも、誰かのためならば有償サービスになる訳です。自分のちょっとしたお小遣い稼ぎだったり自己実現だったり、誰かの役に立つ、何かのために力を注ぐということは、きっと社会との接点になりますよ。

藤本:主婦の方は、今まで培ったスキルやキャリアを、子育てのために一時的にお休みしてらっしゃる方も多くいらっしゃいます。そんな方々が、潜在的に持っている時間と技術を提供できる仕組みになるといいですね。

三輪:そうですね。それに、自分もそのサービスを利用する立場にもなり、空いている時間には、自分がサービスを提供する立場にもなるというフレキシブルな有償助け合いシステムだと理想的ですね。

平生:やっぱり労働の対価って、どんな年齢であれ人間にとってはおもしろいものなんですよ。マンションというひとつの大きな枠組みがあり、共有スペースもある訳ですから、可能性はあるかもしれない。いや、あるといいですね(笑)。

高齢者、主婦、マンションには潜在的な人材リソースが眠っている

藤本:最初に平生さんが「高齢者は在宅時間が長い」とおっしゃいましたが、実はそれは専業主婦の方にも言えることですよね。実はマンションでの在宅時間が長い方々というのは、潜在的な人材リソースになっていくんじゃないでしょうか。

平生:実は在宅している必要性もなく、でも外に行く場もなく、やむを得ず在宅している人たちをコミュニティと結びつけて、何かしらの可能性を生み出せれば良いですね。その中には、高齢者も、子育てを終えた主婦も、ニートもいるかもしれない。彼らがどうコミュニティを利用して経済活動を生み出していけるかという点に注目するのも、新しい論点かもしれません。

佐藤:やはりそう考えると、高齢者や主婦といった年代や性別で区切らない方が良いのかもしれませんね。

三輪:マンション内ワークセンターとか、マンション内リソースセンターとして、高齢者だけに限らずに考えていけるといいですね。

平生:そうなると、提供者の年代によって、同じ仕事でもスキルの差があるというのも考慮しないといけないでしょうね。値段は、単価という考え方もあるし、成果という考え方もあると思います。普通だったら時間内にどのくらい働くかというのもあります。仕組みというのは、ニーズとニーズをマッチングさせることよりも、僕は、値段をつけてあげるということだと思います。「この仕事でいくらの価格」って決めれば、自然と概要ができあがってくると思います。

佐藤:今回紹介した海外の事例のひとつひとつについても、本当はどのくらいの金額が発生しているのかという点も掘り下げてみていきたいですね。マンション・ラボのアンケートで、「こういうサービスにはいくら支払ってもいいと思いますか?」ということを皆さんに訊いてみてもおもしろいですね。

なんといってもお金は大事です

藤本:結局コミュニティでは、高齢者や主婦という立場に関係なく、ギブ&テイクという形をとるのがいいのではないのでしょうか。じゃあ、ギブ&テイクって何なのかというと、「お願いしますよ」「いいですよ」という、もうできあがっている関係ではなく、全然知らない人同士でもゆるく提供と利用ができる場だと思います。

平生:うん、「ギブ&テイク」という言葉がでてくるのもよくわかります。だけど、この「ギブ」という言葉にはまだ、「無償」の意味合いが含まれていると思うんですね。「ギブ(提供)」と「テイク(利用)」の間には、イコールとしての「&」ではなく、「お金」というものが介在するという考え方にシフトしていかないといけないんじゃないでしょうか。

藤本:現在の高齢者の「ギブ&テイク」は、「無償の善意」というものでつながれていますね。

平生:社会が、そういう風に「無償の善意」でつなげないといけないと思い込んでいる節があります。そりゃあ、美しい善意の場合もあるかもしれないけど、そういう善意という気持ちをベースにしているシステムは、ちょっとしたことで壊れやすいですし、すぐやめたくなってしまいがちだと思います。

三輪:今まで「ギブ&テイク」や「ボランティア」という言葉できれいに飾られていたことを、新しいシステムとしてやっていくべきなんでしょうね。

平生:うん、そこを労働に対するお金というものをベースとしていきたい。やはり、評価され淘汰された仕組みづくりで、お金は介在していいと思う。それが健全な人間です。なんといってもお金は大事ですよ。

藤本:私もそう思います!

佐藤:整理すると、高齢者や主婦という立場も関係なく、有償で助け合う仕組みをどのように作るかがポイントのようですね。労働の対価を支払うニーズマッチングは、集住という特性を持つマンションだからこそ可能性を秘めたシステムかもしれません。そしてこのアイデアが実現可能なものなのか、どういった形があるのかについては、今後の課題としていきたいと思います。

今回は、「高齢者は人材的な資産であり、有償で活躍できる場を設けたい」という前向きな意見がでてきてよかったですね。今までにない画期的な着眼点だと思います。今後は、さらに具体的な高齢者や専業主婦のリソースを活かしたビジネスや取り組みなどで、マンションライフに活かせそうな事例を国内・国外を問わずに収集し、さらに深く研究していきたいと思います。

皆さんどうもありがとうございました。


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高齢者のためにコミュニティができることPart.1~高齢者を取り込む鍵は、対価という概念~
高齢者のためにコミュニティができることPart.2~子育て、シェアハウス、国内の事例~
高齢者のためにコミュニティができること Part.3~海外の事例から考える、高齢者による社会貢献の仕組み~

2012/08/02

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