高齢者のためにコミュニティでできること Part.3

海外の事例から考える、高齢者による社会貢献の仕組み

「高齢者のために、コミュニティでできることを考えよう。」をテーマにスタートした今回の研究室。Part.3は、海外で、高齢者が技能を生かして働き社会に貢献しているビジネス事例を探りました。

これまでの記事

高齢者のためにコミュニティができること Part.1~高齢者を取り込む鍵は、対価という概念~
高齢者のためにコミュニティができること Part.2~子育て、シェアハウス、国内の事例~


佐藤:海外で行われている、高齢者が活躍する興味深い事例をマンション・ラボ編集室で調べてみました。

海外での主な取り組み

1.スウェーデン
コレクティブハウスで、自分のできることが役割として与えられ、自立しながら協力して暮らす仕組みがある。DIYの工房をシェアして興味のある人が集まるといった活動も活発。
また、高齢者のレンタルビジネスが展開され、通常費用の約半額で修理や家庭教師など、様々なサービスが受けられる。高齢者にとっての元気の源は「社会貢献」というポリシー。

2.フィンランド
コモンミール。食事を作る順番を決めて、集会室を使って食べる。

3.フランス
編み物の得意なおばあちゃんを登録し、オリジナル帽子をつくってくれるサイトが人気を博している。

4.中国
大連にある老人ホームでは、ホームの中で入居者がカウンセリングや調理などを行って賃金を得ている。

スウェーデンのコレクティブハウスは、自立しながら協力する仕組み

佐藤:まだすべての調査ができていませんが、ここで紹介している海外の事例は、まったくの無料ではなく、どれも活動に対して何らかの対価が支払われていると思われます。

たとえば1番目の「スウェーデンのコレクティブハウスでは自分のできることが役割として与えられる」とありますが、たぶん最初にどういうことができるか、技能をあらかじめ登録しているのではないでしょうか。

平生:「自立しながら協力して暮らす仕組みがある」と説明されているように、最初から仕組みが提供されているんでしょうね。

三輪:そうですね。自然発生している訳ではないでしょうから。

藤本:スウェーデンでは、プライベート住戸と、コモンと呼ばれる共有空間をシェアするコレクティブハウスというものが浸透していて、これらを束ねている組織があります。その組織からこうした仕組みが提供されたり、専門家が各マンションに派遣されたりということがあるみたいです。つまり仕組みを提供している組織が介在しているということですね。
三輪:フィンランドの共同化のコモンミールも「食事を作る順番を決めて、集会室を使って食べる」とありますが、これもまさに仕組みですね。組合が仕組みを提供して運営しているのかもしれません。仕組みが存在していれば、ちゃんと運営していけるってことですね。

人材リソースを活用・ビジネス化した、スウェーデンの「定年者レンタル」

藤本:「スウェーデンの高齢者のレンタルビジネス」というトピックは、高齢者の持つリソースを広くレンタルビジネスします、というものです。日本のシルバー人材センターで高齢者の技術を有償で提供しているのと同じ概念で、人材をレンタルしています。個人向けだけでなく企業向けサービスも用意されており、ビジネスとしてのクオリティも高そうですね。

スウェーデン「定年者レンタル」

スウェーデンで行われている民間サービス。専門分野での経験・実績を持つ高齢者たちの熟練した技術、能力、知識を、格安で提供するというもの。個人向けと企業向けのサービスの2種となっている。

Hyr en pensionar(定年者レンタル)
http://www.hyrenpensionar.net/

平生:前々回取り上げた国内の高齢者に対するアンケート結果の内容と、今回のアプローチで調べた「海外での取り組み」の内容に大きな違いを感じますね。アンケート結果の方は、高齢者の生活の現状維持のためのものでしたが、一方「海外での主な取り組み」に取り上げられているのは能動的な生き甲斐の機会や社会的役割ですね。たとえば、中国の大連にある老人ホームでは入居者がホームの中で働いて賃金をもらう社会活動がありますね。元看護師長の方が入居者のカウンセリングを行ったり、元料理人の方は厨房で毎日食材の調理を行っているとのことです。

おばあちゃんの技術提供と手編み帽子がほしい人とのニーズマッチング

藤本:3番目に挙げたフランスのおばあちゃんがオリジナルの帽子をつくってくれるサイトはユニークですね。実際にサイトを見ていただくとシステムがよくわかると思いますが、これこそちゃんとしたニーズマッチングのモデルといえるかもしれません。高齢者の対価としてうまくできています。

まず、毛糸で編んだ帽子を作ってもらいたい人が、サイトでオンラインオーダーを行います。毛糸を選び、帽子のデザインを選び、最後に編み手のおばあちゃんを選びます。おばあちゃんリストには、ご本人の顔写真と今までの作品と得意な編み込み技術が閲覧できますので、その情報で判断して、好きな編み手にオーダーします。あとは代金を支払って、できあがるのを待つだけ、というシステムです。

三輪:かわいい−!

平生:これはいいね(笑)。

フランス「GOLDEN HOOK」高齢者によるオリジナル帽子作成販売サイト

フランスのおばあちゃんが、オリジナルの帽子を編んでくれる販売サイト。

GOLDEN HOOK(現在ウインターコレクション準備中のためサイトは休止中)
http://www.goldenhook.fr/

GOLDEN HOOK(facebook)
https://www.facebook.com/pages/Golden-Hook/39145424765

藤本:以前この座談会で、加古川の防災マンションが取り組んでいる「町内チャンピオンマップ」というお話をしました。マンション居住者の中から、災害時にお手伝いできそうな得意分野のスキルを「チャンピオンマップ」としてリスト化するというものです。たとえば、造園技術があるとか看護師であるとか、何かしらのスキルがあるということを自己申告して登録しておきます。登録したことでみんなの防災意識が育つのだと防災会長がおっしゃっていました。これは災害に備えた例ですが、高齢者でも主婦の方でも、マンション住民がそれぞれのスキル登録をして、それを活用するというアイデアは使えますよね。

日本「加古川グリーンシティ防災会の町内チャンピオンマップ」

「町内チャンピオンマップ」は、マンション居住者に職種や免許、特技などを登録してもらう制度。防災意識の向上と、災害時・緊急時など「もしも」の時、適切な人に力を借りるための手助けになる。

マンション・ラボ
「超防災マンションが教える、防災コミュニティづくり成功の秘訣」

加古川グリーンシティ防災会
http://www.greencity.gr.jp/greencity_bousaikai/index.html

三輪:マンション住民が、こういうスペシャルスキルを登録する仕組みをつくってそれをリソースとして活用するということですね。

平生:そうそう、単価もちゃんと決めてね。

藤本:このおばあちゃんが編んでくれる毛糸の帽子サイトも、最初から単価が明示してあるから、気持ちよく利用できるのだと思います。あらかじめ単価を決めることによって、利用者もわかりやすく頼めるし、提供者も納得して働けます。数字が見えていると安心ですから。これは、システム化のひとつの事例ですよね。

平生:そうですね。相対的な対価設定だと不安ですからね。昔の植木職人やお寺のお坊さんとかといった職業って、提供するサービスに定価があってないものが多いですからね。それはまあ日本文化らしくていいんだけど(笑)。ビジネスとして考える上では、仕組みの提示は大切ですね。

佐藤:仕組みと仕掛けですね。次回は、これまで国内と海外の事例を見てきた内容をまとめて考え、マンションという枠組みの中でできることを考えたいと思います。

次回に続く

これまでの記事
高齢者のためにコミュニティができること Part.1~高齢者を取り込む鍵は、対価という概念~

高齢者のためにコミュニティができること Part.2~子育て、シェアハウス、国内の事例~

2012/07/24

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