高齢者のためにコミュニティでできること Part.2

子育て、シェアハウス、国内の事例

「高齢者のために、コミュニティでできることを考えよう。」をテーマにスタートした今回の研究室。今回は、高齢者が経験や職能、その特性を生かした新しいビジネスの国内事例を探ってみました。

地域の高齢者が子育てを支援する、港区の育児サポート「子むすび」

佐藤:前回の研究室では、高齢者をコミュニティに取り込むにはどうしたらいいかというテーマで話し合いました。その中で平生社長から「高齢者に役割を与えて、コミュニティの中で働いていただく仕組みを作る。そしてそこには対価を払わないといけないのではないか」という提議が生まれました。今回は、国内で高齢者が生き甲斐を持って働く新ビジネスの事例を使って、研究を進めたいと思います。

藤本:一般的に言えば、自治体のシルバー人材センターも時給制で対価が支払われています。特技や職能経験を生かし、楽しんで働いてらっしゃる人も多いです。知人のお父様は、自分で働いてお金を得ていることに自信や満足を得ていきいき働いていらっしゃるとか。

平生:それは最大のモチベーションですよ。たとえば朝起きて仕事へ行くのが面倒だと思っても、あてにされているし、お金も得られるし。「じゃあ行きましょうか」となりますよね。

三輪:は実際に利用者として、港区の育児サポート「子むすびサービス」を活用しています。これは、育児の手助けが必要な利用会員と、育児サービスを提供してくれる協力会員とを結びつけた区民相互援助ビジネスです。私の場合は、高齢者の協力会員の方に、子どもの送り迎えや一時的な預かりをしていただいています。

藤本:地域に根ざした、非常によい取り組みですね。

三輪:行政サービスなので、時間的縛りが早くて、利用時間が午後夜20時までなんですけどね。「今の時代22時まででしょう!」って思うんですが(笑)。保育園もお迎えが18時15分ですし、時間概念は民間ニーズとのズレがありますね。サービスの内容そのものはよくても、対応時間が極端に昔並みで、うまくニーズとかみあわない部分もあるんですが、やはり有り難いサービスには間違いないです。

平生:サービスを提供する協力会員も、地域の一般の方ですか?

三輪:そうです。「子むすびサービス」は、港区の地域全体で子育てをサポートしようという主旨です。主にリタイアされた地域住民が協力会員として登録されていて、私たち利用会員はサポート料として時給800円をお支払いします。

佐藤:具体的にどこからどこまでサービスとしてやってくださるのでしょう?

三輪:お迎えサービスは、協力会員の方が子どもを保育園に迎えに行って、私が仕事から帰ってくるまで預かって食事の面倒を見てくださいます。私の仕事が遅くなる時には、私の家かその方の家か、どちらで面倒を見てもらうか選べるようになっています。協力会員は、高齢者だけでなく、30〜40代で、同じようにお子さんをお持ちの方もいて、自分の子どもと一緒に面倒を見てくださる方もいます。港区は居住者も国際的なので、預かってくださる方が外国人の方の場合もあり、それも選べるようになっています。

藤本:高齢者だけを協力会員に限るという訳でなく、全年代の住民が、地域ぐるみで住民が子育てサポートするというシステムですね。素敵です。

三輪:はい。私も仕事を引退したら登録して、助けていただいた分を地域へ恩返ししたいと思っています。

藤本:そうしたサービスがあるという情報はどうやって得られましたか?

三輪:先輩の子育てママからのクチコミですね。育児中の人には有益なサポートなのに、あまり広報されていない気がします。ちなみにこれは子育てサポートですが、同じように地域で高齢者を助け合う有償在宅福祉サービスとして「おむすびサービス」というのもあります。これも地域住民同士で会員登録して互いに有償で助け合うものです。

港区の育児サポート子むすび

保育施設や学校などの送り迎え、留守中の一時保育などの育児サポートの有償提供(時給制)。保育する場は、原則として協力会員宅または利用会員宅。そのほかに、港区では同様のシステムで、高齢者や障がい者を対象とした在宅福祉サービスも行っている。

東京都港区 「子むすび」育児サポート
http://www.city.minato.tokyo.jp/fukushikatsudou/kodomo/kodomo/shien/ikujisupport.html

東京都港区「おむすびサービス(会員制有償在宅福祉サービス)」
http://www.city.minato.tokyo.jp/fukushikatsudou/kenko/fukushi/koresha/sekatsu/omusubi.html

高齢者とシングルマザーとが一緒に暮らす可能性—シェアハウス

佐藤:前回の記事で紹介した「高齢者がマンションで必要とするサポート」のアンケートでは、コミュニティサポートがほしいという回答が3位でした。そもそもマンションでは近隣との日々の交流があまりないから、高齢者としてもいざという時に不安なのかもしれません。普通ならばマンションの中に高齢者のためのコミュニティを設けるという発想かもしれませんが、新しい可能性としては、以前マンション・ラボで紹介した「シェアハウスの新しい試み」があります。

平生:それはどういうものですか?

佐藤:(株)ナウいという企業が推進している『IGHシェアハウス』というプロジェクトで、高齢者とお子さんを持つシングルマザーとが一緒に暮らすシェアハウスの試みです。シングルマザーと高齢者のマッチングで、双方の問題を解決しようというのがユニークな事例ですね。

三輪:体験説明会の記事を拝見すると、高齢者とシングルマザーのお見合いのようですね。親子関係だとなかなか難しい同居が、他人だからこそうまくいくという利点もあるのかもしれませんね。

高齢者とお子さんを持つシングルマザーとが一緒に暮らす可能性を探る


マンション・ラボ シェアハウスの新しい試み~世代間交流をコンセプトにした『IGHシェアハウス』~

三菱地所内のマンションを横断した新しいコミュニティづくり

藤本:先日ニュースで見た例は、「シングルマザー専用シェアハウス」というものでした。複数のシングルマザー同士が、シェアハウスに住んで、個人の居室の他に、台所やお風呂などの共有設備を使用します。子どもを預かったり、お料理を忙しい人の代わりに作ってあげたり、住人同士で困った部分を補い合ってうまく機能しているようでした。

平生:なんとなくそっちの方が、マンションでの可能性は大きい気がしますね。

三輪:高齢者になってからいきなりコミュニティに参加するというよりは、もっと若い頃から築き上げてきたコミュニティの中で、時間を共有する方が楽しいだろうなと思いますね。
今、三菱地所レジデンスでも、マンション単体と言うよりは、グループ内のマンションを横断するかたちで大規模な会員組織「三菱地所のレジデンスクラブ」を組成しました。そこでは、様々なイベントを開催してコミュニティ活動を支援しています。たとえば春には「春の空土ファームと桃の花見バスツアー」というイベントを開催しました。これは平日だったということもあって、70代の方々が多く参加されました。そういう楽しい企画をパッケージ化して売られているマンションも増えていると思います。こうした企画をうまく活用しながら、マンションの中で高齢者同士の交流ができるコミュニティが育っていくと理想的ですね。

コミュニティ活動を支援する、三菱地所のレジデンスクラブ

三菱地所グループで分譲・管理しているマンションの所有者・入居者を対象としたWeb会員組織。コミュニティ活動を支援するためのさまざまなキャンペーンやイベントを開催している。

三菱地所のレジデンスクラブが行った「春の空土ファームと桃の花見バスツアー」
http://soratsuchi.com/active/2012/bus_0418_repo.html

コミュニティ活動応援キャンペーン〜純米酒 丸の内プレゼント~
http://www.mec.co.jp/j/news/pdf/mec120510.pdf

藤本:そうですね。グループ内のマンションを横断したコミュニティづくりというのは画期的だと思います。イベントを通じて関係をはぐくんでいくのは理想的ですね。また、生き甲斐や社会参加をいかにマッチングできるかということや、居住者の中でも年齢のギャップを埋めてニーズマッチングができていけば、楽しく関係性が築けるのかもしれません。これはすごくヒントになりますね。

平生:港区の「子むすび」は、ニーズとニーズのマッチング、そしてそこに価格メカニズムがきちんと設けられているというよい例でした。いま元気に働ける高齢者が活躍できるような対応が、社会としてスマートになされていない。その状況を、マンションというコミュニティでどうにかできないか、ということを痛感します。

佐藤:その部分をこうした事例からヒントをもらって考えていければいいですね。次回は、高齢者が対価を得て社会貢献しているビジネスの事例を、海外から探りたいと思います。


次回に続く

以下記事も合わせてご覧ください。

高齢者のためにコミュニティができること Part.1~高齢者を取り込む鍵は、対価という概念~

2012/07/12

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