ゆるやかに人を迎え入れる食堂やライブラリーがある団地、ゆいま〜る多摩平の森

安心して第二の人生を過ごすために、サービス付き高齢者向け住宅を選ぶシニア世代もいます。今回は、約築50年の団地を再生した、高齢者向け住宅「ゆいま〜る多摩平の森」をご紹介します。

築50年の団地5棟を再生した「たまむすびテラス」

(株)コミュニティネットの「ゆいま〜る」シリーズは、自立した高齢者を対象とした高齢者向け住宅です。医療と介護が連携し、生活としての住まいを目指した「ゆいま〜る」シリーズは、団地再生型、駅前再開発型、過疎地再生型など、さまざまな物件の特性を活かしながら全国に展開しています。

以前マンション・ラボでも、高島平団地の空き室を活用した、「ゆいま〜る高島平」の事例を紹介しました。

住み慣れた場所で暮らすために!「ゆいま〜る高島平」既存住宅のストック活用の試み

今回ご紹介するのは、東京都日野市にある、ゆいま〜る多摩平の森。

ここはかつて、UR都市機構が整備・開発したマンモス団地、多摩平団地の一部でした。築50年以上となり、ほとんどの団地は取り壊されて再整備されましたが、5棟の団地だけは、民間業者によりそのまま再生して多世代共生の場「たまむすびテラス」として生まれ変わりました。

若者向けシェアハウス「りえんと多摩平」(写真左手前の2棟)、貸し菜園付き子育て世代向け賃貸棟「AURA243多摩平の森」(ブルーグレーの棟)、高齢者向け住宅「ゆいま〜る多摩平」(一番奥の白い棟)の3種類5棟の住戸棟が建ち並ぶ「たまむすびテラス」。

「たまむすびテラス」では、多世代向けの住戸棟が、同じ敷地内に垣根なく並んでいます。昔ながらの団地の贅沢なレイアウトのまま、住戸棟のあいだには緑の植え込みや歩道、貸し菜園をうまく配置して、ほどよい距離感が保たれています。貸し農園も敷地内にあるせいか、とにかく「緑豊か!」という印象です。

併設されたゆいま〜る食堂。ガラス張りで開放感溢れる雰囲気です。

ゆいま〜る多摩平の森は、昔の団地をリフォームした2棟の間に平屋建ての共用部分、ゆいま〜る食堂と図書コーナー、そして小規模多機能型居宅介護「ぐり〜んはぁと」が増設されています。

ハウス長の清水さんにお話を伺いました。

書架コーナーから見た食堂。長い廊下に本が並んでいます。

個性的だなと思ったのは、木のぬくもりのあるガラス張りのゆいま〜る食堂と書架コーナーです。緑に囲まれて、気持ちよい空間になっています。

清水さん「食堂は、居住者だけでなく、近隣の方々にも開いているほか、イベント会場や集会室としても活用されています。駅からも近いので、近隣のシニアやお子さん連れのママが食事にいらっしゃいます」

ゆいま〜るシリーズの特徴のひとつでもある食堂は、よくあるシニアマンション併設の食堂のように使用予約は必要ありません。ただ、居住者はお元気な方々が多いので、自炊できる人がほとんど。食堂を活用する居住者はまだわずかですが、こうした地域に開いた場があることで、今後の交流が期待できます。

清水さん「食堂へお総菜だけ買いに来る方もいらっしゃるんですよ。すぐ前にある貸し菜園に通っている方が、右手を骨折されたときには、ここでお総菜だけ買って帰られたりしました」

まさしく“まちの食堂”という雰囲気ですね。「ゆいま〜る」で心がけているのは、“地域の拠点”としての共用部分。まわりに開いた場を設けることで、そこからつながりが生まれていくようです。
この食堂では、地域住民も参加できる勉強会やイベントも開催されていますが、居住者が講師となって指導する藍染め教室もあります。

清水さん「せっかくある食堂ですから、地域の人にも使ってほしい。人と場、すべて含めて、ここに“ゆいま〜る”があってよかったね、と思っていただけるようになると嬉しいですね」

シェアハウスの若者、ファミリー、シニアがつながる“結び目”

開かれた場づくりは、多世代共生の場「たまむすびテラス」の他の棟とのつながりにも見られます。

たとえば、若者向けシェアハウス「りえんと多摩平」に住む若い女性が、編み物を習いたいということで、ゆいま〜る居住者の女性が個人レッスンをすることも。

シェアハウス棟に住む中央大学の学生は、多世代交流への意識も高く、地域交流を行いたいという申し入れから、シェアハウスに住む外国人留学生による語学教室が、ゆいま〜る食堂で開催されたそうです。英語や韓国語が飛び交う楽しい勉強会になったようです。

こうした交流イベントは、事業者の方が企画・運営・開催という立場になりがちなものですが、住民から上がってくる提案を事業者がサポートするというスタンスで、“無理しない”かたちでイベントが運営されています。

96歳のAさんを囲んだ、お話を聞く会の様子。なんと一人暮らしで、3食のお食事もすべてご自分でつくられているのだとか。さすがです! マンションコミュニティでも、お元気なシニア住民の健康法の勉強会を催してみてもいいかもしれませんよね。

ゆいま〜る多摩平の森でも、居住者同士の交流イベントが活発に行われています。たとえば、大正7年生まれ・96歳の居住者の健康の秘訣を聞く会では、なんと居住者30名が集まり、満席になるという大盛況。健康で自立した生活を送る96歳の大先輩のライフスタイルを学ぶ、楽しい時間になったようです。

96歳!元気で健康の秘訣は・・・/ゆいま〜る多摩平の森ブログ

居住者は、もともとこの地域出身の方ばかりではありません。しかし地域に役立つための活動を行っている居住者もいます。

居住者や、ぐりんはぁと利用者の中には、近隣小学校の子どもたちの下校の見守りを行う「スクールガードボランティア」にスタッフと一緒に参加している方もいます。
できることをする、というスタンスで行う小さな活動の積み重ねが、次第に地域に根を張っていくのではないでしょうか?

今と未来を守る活動/ゆいま〜る多摩平の森ブログ

ゆるやかな見守りと自由度のバランス

住居棟の一階にある多目的ルーム(ゲストルーム)。住戸をそのまま多目的室にしたもので、少人数で麻雀など趣味の集いをしたり、家族が泊まりに来られた際のゲストルームになったりします。鏡台や家具は、居住者が使われていたものを寄贈していただいています。

居住者のおひとりが、住戸棟の裏手の空きスペースを耕して菜園に仕上げました。夏の間は収穫した野菜がお裾分けとしてみんなに配られたとか。マンションでも、こんなフレキシビリティある活用アイデアがほしいですね。


ゆいま〜る多摩平の森では居住者のシニアの皆さんが、それぞれご自分の得意なこと、好きなことをしながら自分の居場所をつくっている。しかも地域と何かしらつながっている。そんな暮らしが実現しているように思えました。

こうした暮らしづくりを支えているのが、スタッフの皆さんなのでしょう。居住者の自主性を最優先にしてながら、ゆるやかに見守る。「してもらう」のではなく、一人ひとりの「やりたい」という気持ちを大切にしてサポートする。これって、マンションコミュニティの作り方にもあてはまることなのかもしれません。

同じ敷地内に、世代ごとに違うコンセプトの集合住宅があり、ゆるやかにつながる多世代共生型集住というのも、これからの高齢化社会のマンションに必要なコンセプトなのではないでしょうか?
皆さんはどうお考えになりましたか?

ゆいま〜る食堂にあるライブラリースペースの見学を行いました。こちらの記事もご覧ください。

マンションに図書館を作ろう!プロジェクト〜ゆいまる多摩平の森の「まちの図書館」の運営に学ぶ〜

2015/10/16

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