住み慣れた場所で暮らすために!「ゆいま〜る高島平」既存住宅のストック活用の試み

手前の棟に、サービス付き高齢者向け住宅「ゆいま〜る高島平」が開設されます。

住民が高齢化した団地の空き室問題は、社会問題となっています。そんな中、高齢化問題を抱える高島平団地に全国初の試みとして、団地内に点在する既存住宅のストックを活用してサービス付き高齢者向け住宅を開設する「ゆいま〜る高島平」というプロジェクトがあります。プロジェクトを推進するコミュニティネットにお話を伺いました。

団地再生の新しいかたち「ゆいま〜る高島平」とは?

高島平団地の外観。

高島平団地は、1972年に都内有数のマンモス団地として誕生しました。現在は住民も高齢化し、高齢化対策と共に団地内の既存住宅のストックの再生・活用が課題となっています

「ゆいま〜る高島平」は、こうした課題を解決するべく、(株)コミュニティネットが独立行政法人都市再生機構(UR都市機構)と20年間の定期建物賃貸借契約を結び、高島平団地の26街区2号棟に点在する既存住宅のストックを借り受け、改修工事を行い、サービス付き高齢者向け住宅として登録し、入居者に貸し出すという事業です。2014年12月から入居を開始します。

このプロジェクトを担当しているのが、全国で団地再生型の高齢者住宅の運営実績を持つ(株)コミュニティネットです。実はマンション・ラボ編集部のスタッフが、このことを知ったのは、世田谷で活動するコミュニティネット社員の方から。コミュニティネットでは、プロジェクトがスタートする前に、その地域や住む人々のことをより深く知るために、地域プロデューサーとなる社員は、その地域に住むことを命じられるのだそうです。地域に密着したリアルなサービスを提供しようという熱い姿勢が感じられます。

しかも、団地内にサービス付き高齢者向け住宅が共存するというのは全国でも初めてのこと。一般住宅として長年住んでいる団地住民にとっては、心強いサービスではないでしょうか? そこで、マンション・ラボ編集部はコミュニティネットの高橋英與社長に、詳しいお話を伺いにいきました。

(株)コミュニティネットの高橋英與社長。ホームページで「ダメダメ社長ブログ」を公開中です。「ダメダメ社長」のネーミングの由来は、「人に何かを提供するには一方的なサービスだけではいけない。互いにしてもらい、してあげる関係づくりを考えないと、真のサービスにはならない。それにはまず自分が弱さをさらけだす社長にならねばいけない」と気付いたことからだそうです。

ダメダメ社長ブログ
http://c-net.jp/damedameblogs

「ゆいま〜る高島平」は、さまざまな面でユニークな試みです。その特長についてお話を伺いました。

高橋社長「だいだい90%位のシニアは、老人ホームになんて入りたくないと思っているんですよ(笑)。私達が提供する高齢者住宅『ゆいま〜るシリーズ』でも、基本は在宅介護だと考えています。『ゆいま〜る高島平』は、老人ホームと在宅介護の、ちょうど中間くらいの概念だといえます。団地の中に住んで普通の暮らしを営みながら、サービス付き高齢者向け住宅の利点が受けられます。

スタッフは、近くの商店街の店舗を利用したフロントを拠点に日中常駐します。夜間はオンコール対応とし、生活支援サポートとしての安否確認や生活相談、ケアマネジメント支援、コミュニティ支援を24時間365日体制で行っていきます。また、『ゆいま〜る高島平』の入居者だけでなく、生活支援サポートだけを受けたい住民にも有償でサービスを提供していく予定です。

既存住宅をストック活用することで、団地の持ち主であるUR都市機構では空き室解消につながりますし、新築で一からつくるのではなく、既存住宅を改修・リサイクルすることでコストダウンも見込めます。投下資本も少なくて済みますので、既存住宅のストック再活用に悩むこれからの集合住宅には非常に展開しやすいモデルケースとなるでしょうね」

「ゆいま〜る高島平」は、次世代型の集合住宅対応のサービス付き高齢者向け住宅の試みですが、プロジェクトがスタートするまでにはどのような経緯を経てきたのでしょうか。またやはりここにも、事前に社員が住み込んで地域密着型のサービスを計画されたのでしょうか?

高橋社長「そうです。うちはみんな住み込み方式です(笑)。『ゆいま〜る高島平』の立ち上げを担当した伊藤も、高島平に住み込むことからスタートしました。

プロジェクトをスタートする際には、社員は地域プロデューサーとして、地域に住んで、住民の声を聞くことを徹底しています。リアルなニーズを吸い上げねば、真に求められるサービスは提供できませんから。地域プロデューサーは、地域のさまざまな人の声を聞くために、毎月会合を実施して話し合う場づくりも行います」

写真左の方が「ゆいま〜る高島平」の立ち上げを担当した伊藤晶子さん。すでに1年半高島平に住み込んで、地域ネットワークを広げて準備してきました。地域ケアには人の輪が基本ということを実感する、コミュニティネットならではの方針です。

「ゆいま〜る高島平」では、公募が決まる1年前の2012年9月から一般社団法人コミュニティネットワーク協会※が企画調査を行い、「高島平で暮らし続けるしくみをつくる会(以下、つくる会)」の会合を毎月1回のペースで開催。つくる会には、団地住民、周辺地域の住民、団地再生や在宅ケアのしくみづくりや高齢者向け住宅に関心のある方々が参加しています。つくる会では、参加者の声を聞きながら、たとえば「ゆいま〜る高島平」の居室はどんなものがいいのか、サービスのあり方などを話し合いながら決めていきました。

※一般社団法人コミュニティネットワーク協会は、子どもから高齢者まで、さまざまな価値観を持った人たちが、世代や立場を超え、ともに支え合う仕組みのある「まち」づくり、「100年コミュニティ」を提唱しています。(株)コミュニティネットでは、その理念を実現するために、全国で「ゆいま~るシリーズ」の事業主体として「100年コミュニティ」づくりを進めています。

「ゆいま〜る高島平」の居室の模型。3タイプのパターンから選べます。

話し合いの結果できあがったのが、上記の模型のような3タイプの居室です。そのうち完成した2タイプお部屋の写真を少し紹介しましょう。

収納が多いタイプ(Aタイプ)撮影:丸田歩

南北に光が入るLDKタイプ(Cタイプ)撮影:丸田歩

普通のサービス付き高齢者向け住宅だと、25平方メートルくらいの狭い画一的な居室スペースになりますが、元々ある居室を活用している「ゆいま〜る高島平」の場合は、平均43平方メートルほどのゆったりしたスペースとなります。

老いたからといって、誰もがいままでの暮らし方を手放したくないはずです。シニアのライフスタイルは一人ひとりさまざま、決して一括りにはできません。多様な暮らし方ができる住まいが必要です。高橋社長は、選択肢をたくさん持って提供し、選べることが大切だといいます。

気になる賃貸料金は、93,600円〜98,100円/月程度。支払い方法は、家賃一括払い、毎月払い家賃、一部家賃前払い制度の3タイプの支払い方法があります。その他に共益費2,700円/月、生活支援サービス1人36,000円/月が必要です。最初に必要な敷金2ヶ月分以外は必要なく、有料老人ホームの入居とは異なり、賃貸物件を借りる感覚で借りられる手軽さがあります。

桜やケヤキ並木、数多くの公園があり、緑豊かな高島平団地の環境。住み慣れた団地を離れることなく、安心して老後を暮らしたい、そんな願いを叶える「まち」に育っていくのでしょう。

「ゆいま〜る高島平」は、12月1日からオープン予定です。「ゆいま〜る高島平ブログ」には、すでに入居予定の70歳女性の以下のようなコメントがありました。

「地域って、身体感覚の一部です。あの角を曲がると、お気に入りの店があり、慣れ親しんだ環境があり、風景の中に家族との思い出が溶け込んでいる」

住み慣れた団地に、安心して暮らすことの大切さを感じる一文が印象的でした。
ゆいま〜る高島平ブログ
http://c-net.jp/takashimadairablogs

シニアの暮らしの不安、ナマの声が、コミュニティネットの基盤

つくる会を組織して、地域に住むナマの声の吸い上げに尽力してきたコミュニティネットですが、団地内に「ゆいま~る高島平」というサービス付き高齢者向け住宅ができることについて、他の住民からの反対はなかったのでしょうか?

高橋社長「何を始めるにしても、反対意見というのはつきものです。逆に反対意見があるからよいコミュティができあがっていくものだと考えています。議論のないコミュニティというのは脆弱になりがちです。議論を尽くしたコミュニティは、骨太に育っていきます。そのために、プロジェクトスタート前からつくる会の活動で、地域の意見を吸い上げる場づくりを行ってきました。人の声を聞く場というのはとても大切ですから」

コミュニティネットでは、高齢者住宅のご相談を受ける中でシニアの不安や問題が、さまざまなプロジェクトを考える上での基盤となっているそうです。たとえば、こんなシニアの声があります。

・高齢者住宅には入りたくない
・住み替えないでサービスを受けたい
・いまと同じ家賃で住みたい
・高齢者だけしかいない高齢者住宅には住みたくない
・緊急通報や見守りがほしい
・できるだけ広い部屋が欲しい
・まわりも高齢者の団地不安
・体が弱っても住み続けたい

高橋社長「シニアのリアルな声や相談を、日々伺っていますので、商品企画のアイデアもニーズを吸い上げたしっかりしたカタチになります。私も長年この仕事に関わってきていますが、一方的なサービスを与えることだけが高齢者サービスではないのです。うちの会社には“入居者にサービスをするな、してもらえ”というポリシーがあるのですが(笑)、我々はサポートをするだけ、基本は自分達でやっていただく参加型のサービスが基本となっています」

これからのコミュニティとは? 支え合う100年コミュニティの実現を目指して

いわゆる「空き室問題」は、団地だけでなく分譲マンションでも問題となりつつあります。マンションでの解決策についても伺ってみました。

高橋社長「今後、分譲マンションをどうケアしていくかはテーマとなっていくでしょうね。空き室を管理組合法人で借り上げる試みを行っている自主管理組織もあります。たとえば分譲マンションから1戸でも借り受けることができれば、『ゆいま〜る高島平』のマンション版のサービス付き高齢者向け住宅をつくることができます。そうやって先行事例をつくって考えていけばいいのではないでしょうか。空き室問題解決は、所有者や管理事業者、管理組合のニーズでもあります。そこから次のビジネスモデルが生まれることだって、大いにありますから。
さらに分譲マンションの隣接地に介護関係の組織を呼び寄せて、ケア拠点施設を建設して対応するというプランもできるでしょうね」

こうした空き室活用についても、コミュニティネットでは、自分たちの会社だけでなく、地域のさまざまな関係団体や民間企業とヨコの連携をしていくことで、効率化を図っているそうです。

高橋社長「いまの日本の問題は、NPO同士のヨコのつながりが弱いことです。高齢者ケアの仕組みをつくるためには、NPO、企業、自治体、すべての生活支援関連の団体が一緒になって取り組めば効率的なのです。多摩市で地域の医療・介護・福祉関係機構、研究者、民間企業、NPOが一同に集まって地域のトータルケアを目指す『一般社団法人多摩マイライフ包括支援協議会」が2013年12月に組織され、私たちの会社も賛助会員として共に取り組んでいます。高島平でも同じような取り組みが行われることで、地域のトータルケアが可能になるものだと考えています。

これからは、ひとつの企業だけが潤うとか、TAKEするという時代ではありません。こういう社会的側面の問題解決には、儲けようと思ってはダメです。最初に与え続けることで、あとになってビジネスにつながっていくことが多いのですから。いかにGIVEしてSHAREするか? 得たお金をいかに社会に還元するか? 夢と算盤の両方を携えて、100年続くことができる、多世代で支え合うコミュニティ、支え合う社会を皆で目指していくべきだと思います」

コミュニティをみんなで支え合う社会の実現。そんな未来が、身近にやってきていることを実感しました。「ゆいま〜る高島平」の12月オープンが楽しみです。

株式会社コミュニティネット

団地再生・環境共生・他世代交流をテーマに、高齢者から子ども、障がい者までの多世代がともに支え合う「まち」づくりを進める。全国7箇所に、さまざまなタイプの高齢者向け住まい「ゆいま〜る」拠点を展開しており、高い評価と共感を得ている。

株式会社コミュニティネット
http://c-net.jp
ゆいま〜る高島平
http://c-net.jp/takashimadaira

住み慣れた団地やマンションが、老いても安心して暮らせる住まいになる。コミュニティがそれを支える。それは、これからの高齢化社会の新しいコミュニティのカタチなのかもしれません。オープン後の入居者の様子が楽しみです。

2014/10/31

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