殺処分ゼロを目指す「猫付きマンション」に教わる猫との住まい方

マンションで猫と一緒に住みたい。猫好きの人なら誰もがそう思いますよね。ペット禁止マンションや転勤が多いなどのさまざまな理由で猫を飼えない人に向けて、そして猫の殺処分ゼロを目指してつくられた「猫付きマンション」。
いまその数は徐々に増えてきています。

今回は、企画発案者であるNPO法人「東京キャットガーディアン」の山本葉子代表に、猫と人間が安心してマンションで暮らすためのアドバイスを伺いました。

2010年からスタートした「猫付きマンション」は、現在不動産会社や大家さんから大注目

かわいい猫の写真や動画がシェアされ、家族同様に愛されるペットは大人気。猫が暮らしやすい仕様にした猫マンションも注目を浴びています。

その一方、動物愛護センターで殺処分される犬や猫は、全国で年間161,847頭(環境省 平成24年度統計資料より)。飼い主が亡くなったり病気になったりしてやむをえずペットを手放す人もいますが、飽きた・うるさい・家族が反対するといった安易な理由の飼育放棄で動物愛護センターに持ち込む人も数多く存在します。また、野良猫が生んだ子猫たちが持ち込まれることもあります。

猫の殺処分ゼロを目指して、この現状を根本的に変えるために、「猫付きマンション」や最近では「猫付きシェアハウス」を推進しているのが、NPO法人「東京キャットガーディアン」です。

東京キャットガーディアン

2008年から活動。大塚・西国分寺の猫カフェスタイルのシェルター、蒲田の保護猫カフェを拠点として、行政から猫を引き取り飼育希望者に譲渡する活動や地域猫活動を行っています。日本初の試みとして、賃貸マンションに保護猫が付いてくる「猫付きマンション」活動を推進。
http://www.tokyocatguardian.org

NPO法人「東京キャットガーディアン」の山本葉子代表に、大塚にある猫カフェ型開放型シェルターでお話を伺いました。

「東京キャットガーディアンは、NPOとしての活動スタートから丸6年が経ちます。行政に持ち込まれる猫を保護して里親募集を行ったり、地域猫活動を進めたり、この場所のような開放型シェルターを拠点として活動を展開してきました。ただ、子猫は里親が見つかりやすいのですが、成猫はなかなか貰われていきにくい。もっと成猫を助けたいというモヤモヤした思いがずっとあった中で、成猫たちの居場所としての『猫付きマンション』を企画しました。」

公開しているシェルター以外にご自宅でも150匹の猫と暮らす山本さん。シェルターの保護猫は、里親を待つ猫たちばかり。来て・(猫を)見て・学んでもらう場として、里親希望の人だけでなく、猫に触れあいたい人のためにもシェルターを一般に公開しています。

当初は、企業のオフィスの一部にスペースを設けた企業内猫カフェのアイデアもあったそうですが、場所の移動に弱い猫の性質から、賃貸マンションに住ませて入居者に猫を預かってもらう、日本初の「猫付きマンション」のコラボレーション企画へと発展していきました。最近では、不動産会社や大家さんが「猫付きマンション」の説明会に大勢集まり、熱心に勉強されているそうです。

大家さん、入居者、保護団体、みんながハッピーになる「猫付きマンション」への期待度

「猫付きマンション」のシステムは、以下のようにとてもわかりやすいものです。

①入居者は、「猫付きマンション」で賃貸マンション契約を交わします。この時点で入居者は、猫付き・猫なし、自由にお部屋を選べます。

②猫付き希望の入居者は、「一時預かりボランティア」として、「東京キャットガーディアン」と猫の“一時飼育契約”を交わします。

③入居者は、シェルターの保護猫の中から相性のいい猫を選んで一緒に暮らせます。条件は、1歳以上の成猫から選ぶこと。このことによって里親が見つかりにくい成猫の預かり先をつくることができます。もちろん生涯一緒に暮らしたいと思ったら、そのまま里親にもなれます。

「『猫付きマンション』は、大家さん、私達保護団体、ご入居者、三者による飼い主のいない猫の保護ボランティア活動として、行政からも了解されており、猫と人との新しい住まい方の提案となっています。『猫付きマンション』には、現在20頭以上の猫たちが住んでいます。頭数としては微々たるものかもしれませんが、こうした新たなシステムをつくることが、動物愛護への認知を広め、殺処分ゼロへの突破口になっていくと考えています」と、山本さん。

部屋を貸したい賃貸マンションの大家さんにとってみれば、「猫付きマンション」ということで注目され、マスコミでも取り上げられやすくなります。実際、問合せ件数が格段に増えたという物件もあったそうです。

また猫を飼っている人にとっては、猫視線のマンションということで好感を持たれるとか。期間限定でも猫と暮らしたい入居者、一匹でも多くの猫を保護したい保護団体、三者三様のニーズがうまく結実したのが「猫付きマンション」なのですね。

現在入居者を募集している「猫付きマンション」やしっぽのある動物と暮らせるマンション情報は、東京キャットガーディアンがプロデュースしている賃貸物件情報サイト「しっぽ不動産」で検索できます。

賃貸物件情報サイト「しっぽ不動産」
http://tcg-home.blog.jp

猫にやさしいインテリア仕様や工夫がいっぱい

「猫付きマンション」の室内。部屋のコーナーを活かして取り付けられたキャットウォーク仕様の飾り棚。さりげなくインテリアに溶け込んでいます。

「猫付きマンション」は、山本さんのアドバイスで、キャットウォークや猫ひっかき防止用壁、ペット用網戸・脱走防止用柵など、猫仕様のお部屋になっている点も注目です。

「部屋に大きなキャットタワーを置かなくても、猫の導線に沿って移動できるキャットウォークの飾り棚にすれば省スペースだし、インテリアも邪魔しません。そういえば、マンション・ラボのキャットウォークをDIYする記事も楽しく拝見しましたよ」と山本さん。

DIYでマンションにキャットウォークを実現!

物件によって異なりますが、「猫付きマンション」には随所に猫が暮らしやすい工夫が施されています。いま猫を飼っている人もぜひ真似したいアイデアです。

安心してマンションで猫と暮らすために、猫の逃走防止策

こんな風にくつろいでいても、一瞬にして室外へ飛び出してしまうこともあり得るのです。

山本さんに、マンションで猫と暮らすために注意するべき点について伺ってみました。

「ごく稀に来る里親さんからのご相談が、猫が逃げ出してしまったというものです。完全室内飼いでお願いしている猫が逃げてしまうのは、飼い主さんの不注意もありますが、猫だって頭がいいですから。よく里親さんに、“頭脳は3歳児並みで好奇心旺盛、オリンピック選手並みの身体能力を持っている子どもだと思ってください”と説明しているんですよ。うちの猫は窓の外に興味がないと思い込んでいる方も、外に関心のない猫なんていない!と考えることを前提にしてください。」

好奇心に駆られてバルコニーから転落したり、玄関から飛び出して逃げてしまったり、マンションで猫を飼っていると、実にさまざまな問題が起こります。

「たとえば、玄関のドアを開けるときにも、猫の頭のサイズ以上には扉を開けず、まず少し開けて様子を見て入ります。部屋のレイアウトにもよりますが、玄関の前に内扉があれば閉めておくなど、細かく気を配って注意してほしいですね。里親さんの中には、玄関に突っ張り棒を2本立てて、アコーディオンカーテンを設置して、飛び出し予防している方もいらっしゃいます。」

体重をかけて破ってしまうこともあるので、バルコニーの網戸も過信しすぎると危険だと、山本さんは指摘します。

「猫はいくつになっても、どこで隙を突いてくるのかわからないので、油断大敵です。また、何かに驚いてパニックになると、飼い主にも止められない、意表を突いた行動にでる場合があります。必ず迷子札や首輪に連絡先を付けておいてください。万一何かあったときの手助けになります。」

他にも、小さいオモチャやヒモの誤飲など、猫ならではの危険もあります。東京キャットガーディアンでは、初めて猫を飼う人向けに予約制の講座を開催しているそうです。

初めての猫飼い講座(完全予約制)
http://www.tokyocatguardian.org/news/news090430.html

もし地震になったら?猫と同行避難できるように備えを!

スタッフがお話を伺っている間もずっと、目の前の机に寝そべって存在感をアピールしていた大塚シェルターの保護猫。甘えん坊のこの子も里親さんを待っています。

東日本大震災の際には、シェルターに保護していた猫がパニックになっていないか、山本さんとスタッフとでチェックに回ったそうですが、幸い何事もなかったとのことです。猫を飼う人にとっては、マンションで地震に遭ったらどう行動したらいいのか、不安な点です。

「東日本大震災の際には、家に残してきた猫について中学生の女の子が電話で相談してきたこともあります。避難所に犬は連れていってもいいけど猫はだめだと思って、同行避難をあきらめた人もいたようです。東日本大震災は、災害とペットという課題を考えさせられました。大きな災害の際には、猫もパニックになってどこかへ隠れてしまいます。落ち着いたら必ずケージに入れて、同行避難ができるように行動してほしいですね。」

そのためにも、いつでもケージを取り出せるようにしておく、ケージに入るのを厭がらないように慣れさせておくというように、ふだんから考えて備えておきたいものですね。また、逃走防止策のように、迷子札や連絡先入り首輪を付けておくのも欠かせません。

まず保護猫が先に入居、その後入居者さんを募集!保護猫付きシェアハウス

現在準備中の猫付きシェアハウスの内装の様子。デスクからクローゼット上部へ、猫がうまく移動できるように棚板が付いていますよ♪

東京キャットガーディアンでは、「猫付きマンション」に続いて、現在「猫付きシェアハウス」を準備中です。第一号物件は、現在荻窪にて進行中です。

「猫付きシェアハウス」では、成猫たちが居住者の部屋や共用部分のシェアハウス内を自由に行き来して、入居者は人間同士だけでなく、猫との暮らしもシェアできるそうです。Twitterで、シェアハウスに入居した保護猫たち、そして室内の様子が報告されていますので、興味のある方はこちらもご覧ください。

日本初!「保護猫付きシェアハウス」のクラウドファンディング開始します
http://tcg.ldblog.jp/archives/39697776.html

Twitter東京キャットガーディアン(れいん)@rain2255
https://twitter.com/rain2255

「猫付きマンション」では、ブログを通して入居者同士のオフ会交流もあるそうですが、猫の話題は、シェアハウスでもコミュニケーションの潤滑油としても活用できそうですね。マンションコミュニティでも、猫を飼っている居住者同士でお茶会や情報交換会を行えば、もっとコミュニティの関係が深まるかもしれません。

本さんのもとには、マンションの管理組合や住民から、地域住民で餌やりをしている「地域猫」との関わり方についての相談も多くあるそうです。山本さんは、アドバイザー的な立場でこうした問題解決に関わる場合もあります。「猫と人間がうまく共存していくための手立てがないか、常に考えているんです。」

「こんなにも世の中には猫好きが多いのに、なかなか殺処分数は減りません。そのためには社会のシステムを変えていくしかないと思います。猫付きマンションや猫付きシェアハウスの輪が広がっていけば、私達も一頭でも多くの猫を保護することができます。殺処分ゼロの社会を目指して、こうしたシステムが社会貢献として広がっていってくれることを願ってやみません。」

私達も、猫や犬の殺処分についてもっと真剣に考えていきたいものです。


マンションで猫と暮らすには、それなりのルールがあります。しっぽの家族と楽しいマンションライフを過ごせるように、猫の特性を勉強し、安全に配慮した住まい方を学びましょう。

2014/09/24

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