西京極大門ハイツのスゴイ取り組み マンションは、まちづくりだ!経営学編

たとえばマンションを、みんなが暮らす、ひとつの“まち”だと考えたら?収入と支出、インフラ、エコ、コミュニティ。“まち”づくりに必要なことが、そのままマンションにも応用して考えられそうです。

そして実はすでに、マンションを“まちづくり”として捉えて、さまざまな施策を行っているスゴイマンションがあるのです!

西京極大門ハイツ

京都駅からバスで10分ほどの住宅地にある西京極大門ハイツは、管理組合法人で自主管理を行う190戸のマンション。第一次オイルショックの1976年に建設され、完全自主管理に移行したのが1992年。以来、経営という視点で管理組合運営を行い、あらゆる面でよりよい暮らしの仕組みづくりに大胆に取り組んでいます。2011年には第9回 京都環境賞 特別賞(市民活動賞)を受賞。

「お金を管理すると、自分ごと化する」マンションの経営学

京都にある築37年のマンション「西京極大門ハイツ」は、管理組合法人で自治管理を行いはじめてから約11年。

将来の建て替えのための用地取得計画の仕組みづくりや財政の健全化、省エネの促進、交流のためのコミュニティカフェの開設など、まるでマンションが「ひとつのまちづくり」であるかのような本格的な取り組みを行っています。

今回は、西京極大門ハイツのスゴイ取り組みから経営学編をご紹介します。

これまでは普通のマンション同様に管理会社任せだったのですが、1992年に完全自主管理に移行されました。そのきっかけは何だったのでしょうか。西京極大門ハイツ管理組合法人の理事長 佐藤芳雄さんにお話を伺いました。

「管理会社の対応は住み込み管理員や清掃員を派遣するだけ。フロント業務や理事会運営サポートは脆弱なものでした。住み込みの高齢な管理員ご夫婦が退職されるにあたり、管理委託料を大幅に値上げする見積もりが出たのが、自主管理に切り替えたきっかけですね」

とはいえ、管理機能を自主運営するまでには相当な苦労があったはずです。管理費の収納や執行、会計業務、何から何までをつくりあげ、さらに理事が日常生活の合間に行える仕組みづくりを長年かけて構築してきたそうです。会計ソフトもエクセルを使って独自のものを開発・運用。

「管理組合の会計なんて収入・収支は決まっているものが多いので、極めて簡単なものですよ。簡略化できるところは徹底して簡略化しています」と笑って会計ソフトを見せてくださる佐藤さんですが、いままで仕事で培ってきた技能や経験を、管理組合という事業に活用されている、そんな印象を受けました。

「自主管理を行ってよかったことは、居住者のお金を預かる重みを実感したことですね。管理費が、ただ支払うべきものから、無駄のないように使わないといけないという、“自分ごと”化したのが大きい変化でした。

さらにいえば“経営”という視点で考えれば、現状維持ではなく、よりよい生活のための仕組みづくりや、将来のマンションのことを考えて計画を行うようになりました」

管理費は37年前の金額に値下げ、余剰は「管理費還付金」で還元

大門ハイツ外観

マンション管理業務を“企業経営”に置き換えると、区分所有者は株主といえるかもしれません。よりよい暮らしづくりとして、敷地内のレイアウトや設備を大胆に変更していく一方で、一時はマイナスに陥っていた積立金が数億になるまでに復活したそうです。

「管理費は入居当時の金額にまで引き下げることができました。それでも発生する余剰金については、2ヶ月相当分の“管理費還付金”を毎年度実施しています。

こうした取り組みが評価され、管理組合に対する信頼感は非常に高いものになりました。実際、総会には4/5を上回る参加があり、ほとんどの議案が全会一致で可決されています」

着実に行ってきた取り組みの積み重ねにより、マンションの全員が管理組合を支持し、積極的に参加するベースになったのでしょう。

なかなかできることではありませんが、西京極大門ハイツでは、こうした取り組み事例についても管理組合同士の勉強会の場で講演するなど、外部への情報共有にも積極的です。

次代へ繋ぐ7つの目標を掲げた「まちづくりマスタープラン」

西京極大門ハイツがユニークなのが、「まちづくり マスタープラン」として、建物・設備・住環境等保全整備計画書を策定していることです。これは長期修繕計画の発展系ともいえるもので、策定委員会を設けて、パブリックコメントまでしている本格的な内容です。

「まず良好な経営状態にまでマンション管理を引き戻しましたが、別に儲けたい訳ではありません。このマンションがいかに何十年先まで保つことができるのかが目標です。

その上で必要なのは、将来的な計画です。マンションづくりというよりもひとつの“まちづくり”なんですよ。マンションは土地と建物をみんなで共有している“まち”。その“まち”をより良くしていくための、大きな視点で考えたマスタープランなんです」

長期修繕計画の他に、まちづくりの理念のもと、基本計画と実施計画が策定されたマスタープラン第二期計画では、「住みたいと感じる次代(時代)に繋ぐマンション」をはじめ「グレードアップ」「地球環境への配慮」「安心・安全」「集住の利点追求」「資産価値」「経営的視点」といった7つの目標が掲げられています。

ここまでの目標を掲げたマンションは聞いたことがありません。「西京極大門ハイツがスゴイ!」という所以です。

西京極大門ハイツ「まちづくり マスタープラン」パンフレット。

いつか本当の“まち”になるかも? 壮大な用地取得計画。

京都市では厳しい景観条例が施行され、高さ規制が強化されました。この条例により、京都市内のほとんどのマンションが高さ不適格。西京極大門ハイツも、将来の建て替え計画に際してこの高さ規制を受けると、個人負担なしに区分所有者全員が移り住むことができません。

そこで、将来の建て替えに備えて、駐車場収入を財源とした環境整備積立金特別会計を設置。隣接地を買い増して、敷地に算入し、建て替えまでの間は共有部分として住民が使えるサービスを提供することにしました。

手前がコミュニティカフェに使用している建物。奥が、新たに取得したビル。

「敷地内の七条通りに面したビルを取得しました。将来的にはこの一区画すべてが購入できればと考えています。建て替えで仮住まいをするとコミュニティが分断されますので、できれば建て替えまでの2年間の仮住まいの際には、近隣の物件と等価交換する方法なども模索しています」

この壮大な建て替え構想には、マンション・ラボ編集部もびっくりです。

「我々世代が生きている間に建て替えは実行されないと思います。でも、次の世代に、繋がればいいんです。そのための地盤づくりを行っているんです。だって“まちづくり”ってそういうものでしょう?」

「まぁ、僕らの生きてる間に建て替えはないでしょうねぇ」という佐藤さん

マンションは自分のもの、または仮住まい、そんな目先のことだけで考えていると、なかなかこんな発想は持てません。自分の子どもや孫へ資産を伝える、100年先を見据えて行動することの大切さを実感しました。マンションに必要なのは、“次世代へ繋ぐ”という発想なのですね。

マンションを資産として考えると?販売パンフレットも有償提供

去年の春頃から、所有者がマンションを売る際に使えるよう、販売パンフレットもオリジナルで制作・有償提供するようになったそうです。

「不動産屋さんが、このマンションは管理がしっかりしている、というセールストークをよく使われますが、それを全部見えるかたちでパンフレットにまとめたものです。

管理組合が行っている活動や、建物の資産価値も一目瞭然。めんどくさいと思われる方は、逆にこれを見て敬遠されるかもしれませんが、我々もこうした管理組合の事前情報を知ってから購入していただきたいと考えています」

オリジナル制作の「管理に関わる重要事項書」はカラー版1部3,000円で提供。ここまで詳細に中古物件の紹介を行った販売パンフレットはないのでは?当初は売り主の方向けに制作したのですが、販売を仲介する不動産会社の方が買い求めにくるようになったそうです。

他にも住宅を担保にした組合員融資であるリバースモーゲージ、売買価格の安定化を図るための管理組合による「買い取り制度」、若い世代の購買誘致のために「住宅取得資金貸付制度」といった制度も実施予定だといいます。

マンション全体で、マンションの売買価格を支える仕組みづくりが行われているのです。


マンションを“まちづくり”として捉えると、経営面でこんなにも幅広いことが実現するのかと、西京極大門ハイツのスゴイ取り組みには目から鱗です。次回はコミュニティへの取り組みをご紹介します。こちらもスゴイ!ですよ。

その他の記事はこちら
西京極大門ハイツのスゴイ取り組み マンションは、まちづくりだ!コミュニティ編
西京極大門ハイツのスゴイ取り組み マンションは、まちづくりだ!高齢者対策編
西京極大門ハイツのスゴイ取り組み マンションは、まちづくりだ!省エネ編

2013/08/19

↑ page top