最後の同潤会・上野下アパートのリ・ボーンを追う ~その1:往時の記憶を探る!~

老朽化した集合住宅の建替問題には、さまざまな問題があります。マンション・ラボでは、“最後の同潤会アパート”上野下アパートの建替えプロジェクトを追いかけながら、マンション建替えに関する課題と解決方法についてお伝えしていきます。

第一回の今回は、上野下アパート取り壊し直前の現地見学会をレポートします。

築84年、集合住宅の草分け“同潤会”の建替プロジェクトを追う!

区分所有者にとって、老朽化したマンションの建替えは大きな問題です。区分所有者間の合意形成、仮転居先探し、引っ越し、高齢化した区分所有者へのサポートなど、クリアすべき問題は数多くあります。

全国に600万戸といわれる分譲マンションのうち、築30年以上は約1/5を占めています。今後その割合が増えることから、マンションの建替えは、より大きな問題となることでしょう。

マンション・ラボでは、東京を代表する昭和初期の集合住宅、“最後の同潤会アパート”上野下アパートの建替えプロジェクトを、マンション建替えのひとつの好事例と捉え、取り壊しから新しく生まれ変わるまでの姿を追っていきたいと思います。

関東大震災後に生まれた日本の集合住宅のさきがけ “同潤会アパート”

表参道ヒルズや代官山アドレスが、元は同潤会アパートだったということを知っている人も多いことでしょう。

同潤会とは、関東大震災後の復興事業のために設立された財団法人です。大正末期から昭和初期にかけて、日本の鉄筋コンクリート造りの集合住宅の草分け的な存在となる“同潤会アパート”を、都内を中心に16ヶ所に建設しました。

当時の最新設備を備えた同潤会アパートですが、近年は建物の老朽化も著しく、やがて次々と建替えられていきました。

上野下アパートは、同潤会アパートの中で現存する最後のアパートでしたが、老朽化による建物と設備の劣化や耐震性の問題から、区分所有者による長年の話し合いの結果、建替えを行うことが平成24年に決議されました。

今回は、平成25年5月、取り壊し前に開催された現地見学会の様子をご紹介します。

1〜3階が世帯用、4階が単身用という上野下アパートの構造

建設当時の同潤会アパートは、耐震・耐火性に優れ、ダストシュートや水洗トイレなどの近代的な設備を備え、居住者にきめ細かな配慮がなされた最先端の集合住宅でした。

ここ上野下アパートは、一階に商業店舗が入った一号館と、二号館の2棟構成となっています。見学会は、二号館で行われました。

4階建ての上野下アパート二号館の特長は、1〜3階が世帯用住戸で、4階が単身用住戸となっていることです。

世帯用住戸は、2室、押し入れ、キッチン、水洗トイレ付き。

写真のガラス戸の向こうはキッチン。カウンターキッチンの先駆けですね。

単身用住戸は、1室+押し入れのみですが、狭いながらも楽しい我が家という雰囲気。

室内には、当時最先端だったダストシュート。

4階の廊下の両端には、共同水場と共同トイレがあります。最近人気のシェアハウスのようです。

単身用住戸の並ぶ4階のみ、一直線に廊下がつながっています。当時は、単身者同士でいろんな行き来があったでしょうか。

4階だけ廊下を挟んで両側に住戸があるため、外から見ると写真のように4階だけが出っ張っている外観。

二号館には、合計5つの入口と階段があります。

木製の手すりの丸みは、子ども達が滑り台にして遊んでいた名残だとか。踊り場に子どもの笑い声が聞こえてくるかのようです。

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2013/08/09

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