マンションアフタースクールプロジェクトPart.12~住民の、住民による、住民のための文化祭~

マンション・ラボでは大規模マンションでコミュニティを形成するため、「住民文化祭」というイベントを企画・実行してきました。このプログラムは一回だけで終わるのではなく、最終的には住民の方々の手によって運営されることを目標に掲げています。

第1回目の文化祭が行われたのは、2013年4月。知識も経験もゼロからのスタートだった初回は、NPO団体「放課後NPOアフタースクール」(以下、アフタースクール)の協力により実施されました。

アフタースクールでは大人たちが講師(市民先生)となり、各人の得意分野を子どもたちに教える活動を行っています。そこで、マンション文化祭ではそれを“マンション住民先生”として実践。第1回目は見事大成功に終わり、マンションがいかに人材の宝庫で、コミュニティを形成・活性化できる可能性をもっているのかを住民の方々が自覚できました。

その後、同年11月の第2回住民文化祭は、より住民主導で開催。1回目にスタッフとして参加した住民が中心となり、プログラムの企画立案や当日のイベント運営に尽力するなど、少しずつ住民の方々の自主性・積極性が発揮されていったのです。

そして、いよいよ今回の文化祭で、一連のプロジェクトは大きな区切りを迎えます。この「第3回住民文化祭」は、いままであったマンション・ラボ編集部やアフタースクールの力をできるだけ借りず、住民の方々が自ら企画・実施したもの。つまり、本当の意味での「住民の、住民による、住民のための文化祭」が開催されたのです。

待ちに待った第3回住民文化祭! 今回もたくさんの方々が参加してくださいました。

住民自ら作り上げた「第3回住民文化祭」

五月晴れとなった2014年6月某日。住民文化祭が行われるマンションには、梅雨の季節というのがウソであるかのように、太陽の光がさんさんと降り注いでいました。まさに文化祭日和。まるで住民スタッフの熱意が太陽を呼び込んだかのようです。

今回で3回目ということもあり、どの住民スタッフも準備は手慣れたものです。とはいえ、外部スタッフのサポートがほとんどないなかでの開催はこれが初めての試み。それが逆にカンフル剤となったのかもしれません。いちから自分たちの手で作り上げるという意気込みのためか、みなさんのエネルギーはこれまでをはるかに上回るものでした。

開催時刻の直前には住民スタッフが全員集合し、最終確認を行います。全員が一体となった様子からは、すでに大成功を予感させるものがありました。

「なにか伝達事項があればいつでもいってください。文化祭を成功させましょう!」

中心となるメンバーが声をかけ、「第3回住民文化祭」はいよいよスタートです。

文化祭の幕開けを前に住民スタッフの方々の高揚感も最高潮に!

グレードアップした『作品展示』!

前回も好評だったマンション住民による『作品展示』。展示内容は、以前にも増してさらにグレードアップしていました。今回は8人の住民の作品を展示。どれもプロ顔負けの作品が並んでいます。

さまざまな作品が並べられ、展示スペースの雰囲気は前回よりも華やかになりました。

制作された住民スタッフの方々からは、今回の展示に対する次のような喜びの声が聞けました。

「回を重ねるごとに出展者も作品数も増え、うれしいかぎりです」

「今回初めて作品を展示した人もいますね。昨年の文化祭の成功もあって、積極的にサークルのメンバー集めを行えるようになりました」

マンション内のサークル活動も活発化し、出展者・作品数が増加しているとのこと。さらに住民スタッフのなかには、新たな分野として今年の初めから粘土細工のサークルを立ち上げた方もいて、その生徒さんたちの作品も展示されていました。

サークルの生徒さんたちの作品。飾り付けに個性が表れています。

美しく飾られた作品の数々。当然、準備・制作などはかなりの負担になったはずです。しかし、そこは3回目という経験がものをいいます。今回の文化祭に向けて、住民のみなさんはアイディアでカバーしていました。

「粘土細工は各個人が材料を買うとそれなりの費用がかかるので、講師の私がまとめて購入しました。参加者から集めた1000円の会費とマンションから支給されるサークル活動費でやりくりしています」

「仕事をしながら参加している人もいるので、定期的に集まるのは難しいのが正直なところ。今回は1回で完成できるよう、2~3時間程度で作れるものにしました。みなさん、飾り付けなどでオリジナリティを出してくれています」

また、今後の活動についても意欲的なお話が聞かれました。

「毎回、同じ人だけが出展すると、どうしても同じような作品になりがち。これからどんどん新しい人を入れて、少し毛色の違う作品をおみせしていきたいですね」

すでに次回開催に向けての目標を口にする方も。今後もこうした取り組みを継続していきたいという気持ちがひしひしと感じられました。

プリザーブドフラワーを使った作品。こんな装飾ができたら素敵ですね!

文化祭では、サークルの方々が勧誘活動にも勤しんでいました。

新企画『ブックチェンジ』も大盛況!

今回が初の取り組みとなる企画もありました。それが『ブックチェンジ』。これはブースに種本となる本が並び、いらなくなった本を持って行けば、欲しい本と交換できる催しです。

ブックチェンジのブース。読み終えた本を持って行けば、好きな本と交換できます。

「もともとは他のマンションさんでやっていた取り組みを、今年の春先に行われたマンションの竣工記念日に開催したイベントでトライアルとして試してみたもの。非常に好評だったので、今回の文化祭でもぜひやろうということで実現しました」

実施までの経緯を説明してくれたのは担当スタッフの方。良いものを取り入れていこうという、強い積極性がこんな言葉からも垣間見えます。

ブースは開始早々から大盛況。子どもから大人まで、多くの方が自分の家の読まなくなってしまった本を持ち寄り、気に入った本と交換していきました。

立ち寄った方々は、本を手にとって何と交換しようか楽しんでいました。

「子どもは年齢によってすぐに読む本が変わってしまうけど、捨てるのはもったいないですよね。この催しを通して、いらなくなった本がマンション内のほかの人の役に立ってくれればうれしいです」

「マンションでやっているので、いらない本を自室からすぐに持って来られるのが便利。今後もぜひ続けてほしいです!」

参加した方々はこのようにお話してくださる方が多くいらっしゃいました。結局、その後も参加者は後を絶たず、終了時刻まで活況を呈していました。

「たくさんの人が本を提供してくれたので、終わるころにはすっかり本が入れ替わっていましたね。子どもも大人もじっくり本を吟味して満足してくれたようなので、よかったと思います」

担当したスタッフの方も、本を通じて住民同士がつながるこうした取り組みに大きな手応えを感じていました。

バラエティ豊かなラインナップとなった「音楽会」

前回大盛り上がりとなった音楽会は、今回もやはり目玉のイベントです。『みんなで作る音楽会!』と題されたこの催し。前回よりも出演者が増え、楽器の演奏だけでなく、民謡や合唱など、非常にバラエティに富んだ演目になりました。

グノー作曲の「アヴェマリア」を演奏。誰もが知っているそのメロディに、みなさん聴き入っていました。

津軽民謡の軽快なテンポに合わせて舞を披露。最後は子どもたちも一緒に踊りました。

とくに驚いたのは、今回が初めての演目となる民謡です。

「前回は演奏会をみているだけでしたが、今回は是非とも参加したいと思いました。民謡というのは普段、なかなかみる機会が少ないと思うので、こうした場で親しんでもらい、興味をもってもらえたらうれしいですね!」

民謡を披露し終えた女性は、ご満悦な表情で話してくれました。お客さんの反応も上々。いままであまりなじみのなかった民謡にみんな釘付けです。最後は子どもたちも前に集まり、一緒に民謡を踊りました。

子どもたちの合唱は、この音楽会で最大の盛り上がりとなりました!

もちろん、子どもたちだって負けていません。かわいらしい振り付けにあわせた「ミッキーマウスマーチ」や大人気となったディズニー映画のテーマ「レット・イット・ゴー」など、元気な合唱を披露しました。

「子どもたちが楽しそうに合唱する様子をしっかりビデオカメラで記録できたことがよかったです。学校以外にもこうした場があることは、とてもいいことだと思いますね」

「子どもたち同士はすぐ仲良くなるので、生活の場でそうした友達の輪が広がるのはうれしいことですね」

そんな感想を話してくれる保護者の方もいらっしゃいます。

こうして充実の内容となった今回の音楽会。参加者だけでなく担当者も大満足だったようです。

「新しい人も加入してくれて、前回との差別化ができました。同じ人ばかりで演目を考えていると、どうしても同じようなものになりがちです。新しい人にもどんどん参加してもらって、新鮮みのあるアイディアを実現していければ、その輪がどんどん広がっていくはず!」

「あまり練習の機会はとれませんでしたが、子どもたちの吸収力がすごい! すぐに覚えてくれました。きっと、楽しみながら練習できたことも大きかったですね」

一方で、新たに発見した課題もありました。

「子どもたちはすぐに大きくなってしまうので、メンバーが固定化してしまうと続けていけなくなります。もっと小さい子どもたちにもどんどん参加してもらえるよう、働きかけていくことが大切だと感じました」

単純に今回の文化祭の成功に満足するだけでなく、住民スタッフの方々は問題意識をもっていました。

歌に合わせた読み聞かせの様子。絵本の「はらぺこあおむし」が披露されました。

音楽会が終わると、そのまま絵本の『読み聞かせ』に突入です。こちらも前回まではなかった新しい取り組み。「はらぺこあおむし」の大きな絵本が歌にあわせて朗読されました。

まるでミュージカルのような読み聞かせに、子どもたちは真剣に聴き入ります。

「今回は『ブックチェンジ』という企画が加わったこともあったので、本に関連した演目をひとつ加えました。好評だったようなのでよかったと思います」

こうして、音楽会は拍手喝采のうちに幕を閉じました。

人気イベント『ワインテイスティング』と『居酒屋交流会』は今回も実施!

16時を過ぎるとパーティルームには大人の方々が集まり始めました。『ワインテイスティング』の時間です。第1回目の文化祭から好評を博してきたこのイベントも今回で3回目。毎回テーマを変えて実施しています。

今回のテーマは「ブドウの品種」による味の違い。参加者は赤、白それぞれ3本のワインを試飲しました。「カベルネ・ソーヴィニヨン」や「シャルドネ」など代表的なブドウから造られるワインの飲み比べです。

ソムリエの先生による「ブドウの品種」の講義風景。参加者も熱心に耳を傾けていました。

クイズ形式だった前回とは異なり、今回はテイスティングを通して自分の好きな品種を探るというスタイル。外部講師としてソムリエの方がそれぞれのブドウの特徴を説明し、参加者は勉強しながらワインを楽しみました。「こっちの方が飲みやすい!」「食事と合わせるならこっちかな?」そんな声があちこちから聞こえてきます。

そして17時。ワインの知識も深まったところで、パーティルームには子どもたちも合流します。サンドウィッチやジュースなども用意され、『居酒屋交流会』の始まりです。子どもはもちろんのこと、大人たちもお酒が入ったことでいつにも増して会話が弾み、みな楽しそうに過ごしました。

居酒屋交流会は子どもから大人までたくさんの人で賑わいました。みなさん楽しそうです!

住民主導の文化祭実施に大きな手応え! 視線はすでに“継続的な開催”へ

こうして大成功を収めた「第3回住民文化祭」。今回の文化祭を振り返って、中心的な役割を担った住民スタッフのみなさんにお話を伺いました。

「本番前、音楽祭のリハーサルがすんなりとできました。やはり3回目ともなると、要領がわかります。時間配分も、どうすればうまくいくかつかめたので“経験の強さ”が発揮できたのではないかと思います」(音楽会担当)

「回を重ねるごとに、すべてにおいてレベルが上がってきているのが実感できます。また、参加者も増えているので、新たなつながりが生まれるという点も刺激的ですね」(飾り付け担当)

3回目ともなると、準備も手際よく行われていました。

今回はなんといっても住民の力だけで企画・実施されたのが、前回までとの大きな違い。その点についてもお話ししてくださいました。

「ソムリエの先生のアポ取りから、すべて私ひとりでやりました。やはり大変でしたよ。『ワインテイスティング』のテーマも毎回変えているので、ソムリエの方と打ち合わせを重ねて決定しました」(ワインテイスティング担当)

「最初はつなぐネットコミュニケーションズさんや放課後アフタースクールの方が主導となってやっていたものが、回数を重ねることで、自分たちでできるようになりました。やり方が体系化していったので、今回は当日も自分たちだけで非常にスムーズに運べたと思います」(読み聞かせ担当者)

「最近アニバーサリープランナーの講座に通っていて、イベントなどの飾り付けを勉強していました。今回は飾り付けに風船を使いたいという案だけが出ていたので、ぜひとも飾り付けを担当したいと思い、会場全体の飾り付けに立候補したのです」(飾り担当者)

みなさん、自ら主体的に参加できるようになったのは大きな収穫だったと口にします。また、今後もこうした取り組みを続けていきたいという前向きなご意見も多く聞かれました。

「文化祭はもう3回開催しているので、多くの人にサークルの存在が知られるようになりました。これからはもっと興味をもつ人が増えてほしいですね。そのためにもこの住民文化祭を継続していけたらと思います」(作品展示担当)

今後もサークル活動を通して住民文化祭を盛り上げていきたいと話す作品展示担当の方々。

もちろん、実際やってみて新たな課題もみつかりました。

「仕事の合間に協力してくれる人も多いので、文化祭を定期的に実施していくための課題があるのは事実です。それはこれから考えていかなければならないですね。だた、今回はできるかぎり自分たちで主体的に取り組めました。会議なども、自然と議事進行できたので、確実に進歩していると思います」(音楽会担当者)

自分たちの力だけで文化祭を企画・運営したのは今回が初の試み。この成功が住民の方々の自信となったことに間違いありません。住民スタッフの視線は、すでに次の目標である「文化祭の継続的な開催」へと向けられています。今後、文化祭の運営は完全に住民の方々の手に託されますが、彼らならきっと、文化祭を通じたコミュニティ形成を持続させてくれることでしょう。

昨年から続いたこのマンションアフタースクールプロジェクトの「住民文化祭」によって、自主性・主体性をもってマンションコミュニティの形成へと踏み出したみなさん。こうした姿勢が広まり、多くのマンションで同じようなイベントが開催されるようになるのは、決して遠い未来の話ではないはずです。

住民スタッフのみなさん。第4回の開催も期待していますよ!

2014/08/22

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