NPO×地域住民で団地再生に取り組む!~千葉・海浜ニュータウン10年の歴史~

大勢の家族が住み商店も賑やかだった地域が、ある時期を経て衰退していったとき、取り残された住民はどうしたらよいのでしょうか。人口転出と減少、少子化、住民の高齢化、空き室の増加、集合住宅の老朽化、商店街の衰退、山積みとなった問題に対し、NPOと地域住民とで10年以上にわたって取り組んできた事例をご紹介します。

急速に高齢化する巨大ベッドタウン、千葉・海浜ニュータウン

髙州団地の風景。

高度経済成長時代に次々と建築され、現在では老朽化した巨大団地を抱える郊外都市の衰退は、日本共通の課題となっています。1970年代に建築された千葉・海浜ニュータウンもそのひとつです。都心で働く人々を支える巨大ベッドタウンとして、稲毛、検見川、幕張の3つの地区に約5万戸の団地がつくられました。稲毛海岸駅周辺に位置する髙州・高浜地区には、約18,000戸の住宅があり、その7割が1970年代に住宅公団によって供給された5階建て・エレベーターなしの団地となっています。

今回ご紹介する、海浜ニュータウンの団地再生に取り組むNPO法人ちば地域再生リサーチ(以下CR3)は、この髙州・高浜地区に拠点を構えて、団地再生に関わるさまざまな活動をしています。

団地の中央に位置する髙州第一ショッピングセンター内にある空き商店を利用したCR3の拠点。八百屋さんやスーパーのついでに気軽に立ち寄れる雰囲気です。

CR3の拠点へ集まった問題意識の高い住民と実践的取り組みを始める

今回は、CR3のスタッフである陶守奈津子さん(写真左)と責任者を務める東 秋沙さん(写真右)にお話を伺いました。

陶守さん「CR3は2003年8月に設立されましたが、それ以前から、千葉県、千葉市、都市再生機構、千葉大学により、“千葉地域再生構想研究会”を設立して、住宅地全般に関する話し合いの場が持たれていました。当時すでに海浜ニュータウンは築30年。老朽化する集合住宅や人口減少などが問題となりつつありましたが、海浜ニュータウンの公共住宅では、建て替えは行われず、建て替えのない再生計画を模索する必要が出てきていました」

老朽化した集合住宅の建て替え計画は大きな課題を抱えていますが、建て替えのない団地再生もまた、長く住み続けるために多くの課題をはらんでいます。

陶守さん「建築家も今まで集合住宅を建築してきたが、その後の住まいの状況に関してはなかなか関わる接点がありませんでした。しかも築30年以上経った集合住宅です。そこで千葉大学の服部岑生(現・千葉大学名誉教授)氏とそのゼミ生による服部研究室により、海浜ニュータウンの集合住宅調査を実施して、現状のコミュニティの問題点を研究し、その成果を社会に発表していくことになりました。商店街の空き店舗の一室を借りて、調査結果の発表や街の模型をつくって、住民が気軽に立ち寄れる拠点を設けて徐々に地域に溶け込んでいきました。CR3は、服部研究室のメンバーが創設メンバーとなって生まれました」

拠点では大学生が当番制で担当していることもあり、なんとなく関心を持った人や、明確な問題意識を持った住民、さまざまな人が集まってくるようになりました。髙州第一ショッピングセンター内の駄菓子屋さんの当時のご主人は、自治会長。お店を後継者に譲った今でも、お菓子を手土産に、拠点へ顔を出してくれるような長いお付き合いになりました。

陶守さん「拠点に集まってきた人々も多種多様です。団地に住まう60代くらいの男性は、都心に住んでいる高齢の親のことが心配で、安否確認のためにヤクルトや弁当の宅配をとっていました。離れて暮らしているので、いつでも親の安否確認ができるといいのにという話や、ショッピングセンターの宅配事業化のアイデアなどの話をされました。

家業を息子に譲ってリタイアした大工さんは、拠点に企画書を持参して、団地の修理を請け負えばどうかと提案してこられました。ふすまの貼り替え、窓やドアの修理、必要な資材や方法は教えるからと持ちかけてきてくださいました」

すでに実施していた住民調査でも、室内の壁紙の汚れ、扉や窓の修理の必要性が挙げられていました。しかし手間がかかる割に大きな利益も見込めない団地のリペアには、工務店もメーカーも手を出したがらないという実情も背景としてありました。建て替えなしで建物の寿命を長く延ばして集合住宅に住み続けるためには、メンテナンスとリペア、リフォームは欠かせないポイントです。

CR3では、団地のふすまや壁紙の貼り替えといった、大きな商業サービスが抜け落ちた部分に焦点を当てて、住民にサービスを提供していこうと考えました。またサービスを提供する側も、地元の主婦を中心に編成。地域の技能者を育てながら、団地のメンテナンスに取り組んだのです。

CR3が手がけた『リフォーム事例集』のリーフレット。このエリアで、年間約20件の戸建てとマンションのリフォーム、年間約100件のリペアを手がけてきました。バリアフリーなどのリフォーム、戸車などの細かなリペア、結露対策などの事例が紹介されています。

しかし自宅へ人を入れるのを厭がる住民の方々も多いと思います。住民の皆さんはこのサービスをすぐ受け入れられたのでしょうか?

陶守さん「すでに団地のアンケート調査で、住民の皆さんには、何が必要で何に困っているのかということがわかっていましたし、生活に必要なサービスだったため、すぐに受け入れてくださいました。私達も、コミュニティづくりのためにこうしましょうとか、必要とされていない押し付けのサービスを提供したくはありませんでしたから」

CR3では、地元の主婦によるレディース隊を組織して、エレベーターのない団地の住民向けに、買い物のお手伝いを行うなど、生活に密着した暮らしのサポートも行っています。

これら地域に密着した地道な取り組みから、団地の住民の顔が一人一人くっきりと見え始めてきました。たとえば、シニアの方は介護保険の適用外でレンジまわりなどの掃除が頼めないでいたり、網戸の貼り替え修理に伺った方が自宅に陶芸の窯を持つクリエイターだったり。髙州・高浜地区団地の、ニーズ(needs)とシーズ(seeds)が次第に見えてきたのです。

この日も、買い物帰りの主婦の方が荷物を預けて、自宅への配達をお願いしていました。ショッピングセンターのスーパーと提携して、荷物預かりや買い物宅配を安価な価格設定にして誰もが利用しやすくしています。

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2015/04/15

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