本と図書館から始めるコミュニティづくり①~まちライブラリー~

まちライブラリー@大阪府立大学

今回から4回シリーズで、本を媒介にしたコミュニティづくりの可能性について、個人や団体によるさまざまな個人図書館づくりの活動を紹介しながら、考察してまいります。第一回目に取り上げるのは、「まち塾@まちライブラリー」の活動です。

全国で高まるマイクロ・ライブラリー(個人図書館)活動

いま全国でマイクロ・ライブラリー(小さな個人図書館)と呼ばれる活動が活発に行われています。さまざまな場所で、さまざまな人や団体が、本を媒介にしたコミュニティづくりを、それぞれのスタイルで始めているようです。

本には、老若男女問わず確かなつながりをつくる力と可能性があります。マンション・ラボでも、以前マンションで行われた本を交換するイベント「ブックチェンジ」の場を取材して、本の持つ魅力がコミュニティをつくる力になるのだと強く感じました。

2014年8月末に大阪と東京で開催された「第2回マイクロ・ライブラリーサミット2014」では、小さな個人図書館を開設して活動している個人や団体が全国から集まって、それぞれの活動についての発表や活発な意見交換が行われました。東京会場へ行ってみて驚いたのは、こんなにもたくさんの人が個人図書館にすでに自ら実践していたり、これからやりたいと考えていることでした。会場は熱い思いで満たされていました。

「第2回マイクロ・ライブラリーサミット2014」
http://opu.is-library.jp/ml/mls2014/

大阪と東京で3日間にわたって開催された第2回サミットでは、全国の個人図書館の方々による講演のほか、全米・全世界20,000ヶ所に鳥の巣型図書館を設置する運動「Little Free Library(リトル・フリー・ライブラリー)」の創設者、トッド・ボル氏による特別講演も行われました。

書籍『マイクロ・ライブラリー図鑑〜全国に広がる個人図書館の活動と514のスポット一覧』

第1回サミットから生まれた書籍『マイクロ・ライブラリー図鑑〜全国に広がる個人図書館の活動と514のスポット一覧』(マイクロ・ライブラリーサミット2013実行委員会、礒井純充著/出版者:まちライブラリー)。全国514ヶ所のマイクロ・ライブラリーの活動からさまざまなことを試みている個人図書館の活動を知ることができます。

『マイクロ・ライブラリー図鑑』

マンションコミュニティを育成する上で、本を媒介にしたコミュニティづくりの手法は、潜在ニーズも高くさまざまな可能性がありそうです。

今回から4回にわたって、個人図書館活動を行っている個人や団体の方々にお話を伺い、マンションコミュニティでの可能性についてもアドバイスをいただきました。これからシリーズで以下の方々の活動を紹介してまいります。

第1回 まちライブラリー
第2回 リブライズ
第3回 西国図書室
第4回 情報ステーション

第1回目の今回は、マイクロ・ライブラリーサミット実行委員長であり、「まちライブラリー」の提唱者でもある礒井純充さんにお話を伺いました。

各地に広がるコミュニティ型「まちライブラリー」

まちライブラリー

「まちライブラリー」は、持ち寄った「本」にメッセージをつけて共通の本棚に置き、本を媒介にして、「人」と出会うことを目的にしたコミュニケーション活動です。まちのカフェやギャラリー、オフィスや住宅、お寺や病院、大学などの一角に共通の本棚を置き、そこにメッセージ付きの「本」を持ち寄り、交換しながら「人」の縁をつむいでいきます。2011年春からスタートし、現在、東京、大阪、埼玉、名古屋、兵庫、奈良など全国100カ所近くで展開。2013年グッドデザイン賞受賞。

まちライブラリー
http://www.machi-library.org

まちライブラリー Facebookページ
https://www.facebook.com/machilibrary

「まちライブラリー」提唱者の礒井純充さん。

「まちライブラリー」提唱者の礒井純充さんは、2003年に六本木ヒルズ49階の六本木ヒルズライブラリーをつくった方です。仕事として会員制ライブラリーを成功に導いた一方で、もっと顔の見える関係でつながり学び会える場づくりを行いたいという思いから、「まちライブラリー」を呼びかけました。

礒井さん「公立も私立も大きなシステムの中で行う図書館にはいろいろな制約が生まれてくる。それは仕方のないことです。しかし、そうではない、顔の見える関係の中で“読書の共有”を行いたいというのが、『まちライブラリー』の考え方です。本とその感想を書いたメッセージカードを持ち寄って、人が語り合う場をつくる。そんな学び合いの場を、まち中のいろいろなところに増やしていきましょうということで2010年頃から始まりました」

「まちライブラリー」のツール。本のオーナーや読んだ人からのメッセージが連句のように綴られていく「みんなの感想カード」(写真右)。

蔵書ゼロからのスタート、みんなに本を植えてもらう「植本祭」

東京や大阪のカフェ、お寺、医院など、さまざまな場所で「まちライブラリー」づくりを実施していくうちに、徐々にいろいろな人達が自分の場所で「まちライブラリー」を展開するようになっていきました。

神戸市にある「岡本まちライブラリー」は、岡本商店街振興組合と「まちライブラリー」が一緒に運営している、商店街の各店舗が本棚のある「まちライブラリー」となっているものです。商店街のカフェ、レストラン、お蕎麦やさんなどが、それぞれの個性を打ち出した図書館になっていて、商店街中に本が溢れています。

「岡本まちライブラリー」で行われた「植本祭」のリーフレット。「植本祭」は、書店街に点在するお店に、本を持ち寄って本を植えに行く(寄贈する)イベントです。タイ料理やさんはアジアに関する本、日本茶カフェは、日本茶に関する本と、お店のカラーによって本のテーマもさまざまで楽しそうですね。

礒井さん「『まちライブラリー』は、蔵書ゼロからスタートするケースが多いので、みんなからメッセージ付きの本を寄贈してもらう『植本祭(しょくほんさい)』というイベントを催します。『植本祭』というイベントもまた、人と人とが本を媒介にして知り合うきっかけとなっています」

礒井さん「2015年春には、日本生命球場跡地にできる『もりのみやキューズモールBASE』というショッピングセンター内に、まちライブラリーをつくる予定です。まだオープン前ですが、こういうことをやるという告知とディスカッションを経て、すでに市民サポーターが90名ほど集まってくれています。これもやはり本の力だと思います。みんな何かおもしろい場づくりをしたいという気持ちで関わってくださっているんですね」

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2015/01/08

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