高齢者専門人材派遣会社の取り組みにマンションの人材潜在力を探る!

いま、元気でいきいきと働く高齢者が増えている。「元気だから働く、働くから元気。高齢者の元気の素は、実は“働くこと”です」と、高齢者専門人材派遣会社である株式会社高齢社の有我昌時氏は言う。
マンション・ラボが考える「マンションの高齢者のためにコミュニティができること」、それはすなわち高齢者の活躍の場づくりではないだろうか。今回は、その可能性を探るため、「高齢者に働く場と生きがいを提供すること」を理念に掲げる高齢社に話を伺った。

高齢社に学ぶ、高齢者のためにマンションコミュニティができること

これまでマンション・ラボ「マンションみんなの研究室」では、マンションに住む高齢者のためにコミュニティができることについてさまざまな観点から考えてきた。その中ででてきたのが以下の二つのテーマだった。

・ 単なるマンションの交流コミュニティではなく、高齢者が生きがいや満足を感じる仕組みづくりができないだろうか。
・ 安価で利用できる、高齢者人材を活用したサービスをマンションでも利用できないだろうか。

研究室「高齢者のためにコミュニティができること Part.4」

実は、この二つのテーマをすでにビジネスモデルとして実践しているのが、今回お話を伺った高齢者の人材派遣を行う株式会社高齢社だった。

採用資格60歳以上、働きたい「高齢者」のための会社「高齢社」

名は体を表すというが、高齢社では「60歳以上」という年齢資格があり、60歳以下の人材は採用しない。人材派遣の対象地域は、東京、神奈川、千葉、埼玉の首都圏。現在約520名の人材登録があり、最高齢の社員は79歳だという。
2000年の設立以降、順調に営業成績を伸ばし、2011年度の売上高には3億8000万円となった。数あるシニア活用ビジネスの中でも「高齢社モデル」と呼ばれて評価されるほど成功した。

「設立者で現在会長の上田研二から高齢社というネーミングを聞かされた時、僕はそんなダサイ名前の会社を手伝うのはいやだって言ったんですよ(笑)。しかしこのネーミングは、我が社の業務をそのままストレートに体現しています。一度聞いた方には必ず覚えていただけるという凄い宣伝効果もあります。おかげさまで高齢社の活動は、いまや日本だけでなく世界で有名になりました。この春にも、人口問題と高齢者対策をテーマにしたスイスの国際フォーラムに参加してきたばかりです」と、代表取締役社長の有我昌時氏は語る。

元気に働く高齢者がいっぱい! それこそが日本の活力につながる

「定年退職後も元気な高齢者に、過去の知識や経験を生かして働くための“場”と“生きがい”を提供するのが我が社の目的です。これはすなわち、元気に働く高齢者がいっぱいいる国づくりをするということです」

有我氏が言うように、高齢社は高齢化の進む日本社会に対して確かなビジョンを持って活動している。

「日本の平均寿命は現在、男性79.44歳・女性85.90歳(※1)です。しかし自立して健康に生活できる健康寿命(※2)は、男性70.42歳・女性73.62歳。健康寿命から平均寿命の間の約10年は、介護や病気で寝たきりになった状態ということです。いかにこの差をなくして健康寿命を限りなく平均寿命に近づけられるかということが今後の日本社会の大きな課題となります。この差をなくさないと現役世代の医療費負担は増えるばかりですからね。そこで、元気でいるために働くことを推奨しているんです」

※1 厚生労働省発表「2011年 簡易生命表」による。
※2 厚生労働省発表「2010年 健康寿命」による。

元気だから働きたい。働いているから元気になる。ポジティブな発想は連鎖してさらによい結果を生んでいくようだ。

「私が尊敬している東北大学の特任教授 村田裕之氏が提唱されているのが“スマートエイジング”という概念です。これは、加齢に逆らおうとする“アンチ”の発想ではなく、年を取って生きていくことに賢く対処し、個人や社会が成熟していくことを意味しています。これからはエイジングを肯定する価値観へ、個人も社会も変化していかなければなりません。実際、我が社で働く高齢者の方々は、仕事に生きがいを感じ、プライベートも充実している方が多いですね。皆さんに共通して言えるのは、お金も大切ですが、人や社会との関わりを楽しんいでらっしゃるということです」

高齢社が実施した登録社員アンケートでは、働く理由として「いきがい・やりがい」が60%近くを占めていたと言う。高齢者にとって、仕事によって精神的な満足を得ることは大切なモチベーションなのだ。
これは以前マンション・ラボ研究室で取り上げた「海外の高齢者ビジネスの主な取り組み」に共通している。海外の高齢者ビジネスの特色は、能動的な生きがいの機会や社会的役割を担っているということだった。

研究室「高齢者のためにコミュニティができること Part.3」〜海外の事例から考える、高齢者による社会貢献の仕組み〜

高齢者雇用のポイントは、働き過ぎないこと、経験を活用すること

ガス関連事業分野で働く登録社員の方々

次に「高齢社モデル」と呼ばれる、ビジネススキームを見てみよう。高齢社では、ワークライフバランスとワークシェアリングを導入している。高齢者の就労の場合、年金受給を併用するためにどうしても労働時間が限られてくる。そのためひとつの仕事を2人で受け持つようにしている。週に34時間以内、1人が1週間に2〜3日働くペースとなる。仕事のスケジュールは、前月に申告し、営業部署が2人1組のシフトを組んで、働きたい人が働きやすい環境づくりを行う。
また、高齢者が働く上で、どうしても自身と家族の健康問題が絡んでくる。急に体調が悪くなったり、連れ合いが病気や介護になったりすることも考えられる。そのためにも2人1組のチーム制度は有効だ。

「2人で働けば、どちらかがカバーできますからね。それに皆さん定年までしっかりと働いてきた方々ですから、もうあくせく働く必要はないんです。高齢者雇用のポイントは、働き過ぎないこと、そしてこれまでの技能を生かせる仕事に就くことだと思います。余裕を持って、これからの人生のワークライフバランスを考えて働いていただきたい。職務内容は、創業者や私が東京ガス出身ということもあって、ガス事業関連業務が多くあります。これは今まで蓄積してきた技術や経験が生かせる仕事です。他に設備管理やメンテナンス、一般事務や営業事務などの業務があり、経験や技術を登録していただいた方の名から適した仕事を斡旋しています」

中高年女性の雇用の場づくり、家事代行サービス「かじワン」の登場

さらに高齢社では、中高年女性の就労を促進するために新しく「かじワン」という家事代行サービスもスタートした。

家事代行サービス「かじワン」http://www.kajione.com

「中高年の女性の就労の場はまだまだ少ないですね。『かじワン』家事の経験豊かな主婦の方々の労働力によって、子育て家庭や介護家庭などの支援を行っています。お子さんが病気になっても仕事を休めない時のシッターや学校や塾の送迎・世話などの家事代行、介護保険でやってくれないような病院の付き添いや買い物の代行といった介助サービスといった、きめ細かな内容を提供しています」

少子化問題が深刻化する現代、こうしたきめ細かな家事支援サービスを安価で提供する「かじワン」は、子育て・介護サポートといった側面でも期待できる。マンションでもこうしたサービスを利用する家庭は多い。マンション内にミニ「かじワン」的なサービスが存在すれば、気軽に利用できそうな気がする。また、居住者がサービスの利用者でありサービスの提供者のどちらにもなれるというフレキシブルなシステムがあれば便利そうだ。

研究室「高齢者のためにコミュニティができること Part.2」〜子育て、シェアハウス、国内の事例〜

「高齢者雇用は、ご本人の人間性と仕事のマッチングが重要な鍵を握っています。我々もその点には非常に注意を払って取り組んでいます。また、今後はマナー研修の強化、さらに高齢者のための仕事塾の開催といった就労サポートも計画しています」

マンションでも高齢者雇用ビジネスの可能性がある!

では、いま紹介してきたような高齢社が行うビジネスは、マンション内での展開も考えられるだろうか? 有我氏は、マンションでの可能性も模索できるはずだと答える。

「高齢者の仕事は、責任を持ちつつも、楽しみながら働くことが大切です。報酬も大切ですが、やはりやりがいを得るという満足感が大きな部分を占めています。実は私の住むマンションでは、以前から自治会が会員制の「助け合いの会」を運営しています。こちらは年齢資格はなく、マンション居住者なら誰でも任意で会員登録できる自主運営組織です。やはり定年退職した人達が主軸になって活発に活動しています。会員は、設備の不具合の点検や補修、家事支援などの作業を、あらかじめ定めた利用料で受注・依頼します。マンション・ラボのテーマを体現するマンションコミュニティなんじゃないでしょうか?」

そんな積極的な取り組みを実践しているマンションコミュニティが身近にあるとは! 次回はこの「助け合いの会」を実践しているマンションをご紹介し、その活動内容を詳細にレポートする。

株式会社 高齢社

株式会社 高齢社 http://www.koureisha.co.jp
「働く元気な高齢者が多くいる高齢社会の実現」を目指して、高齢者に働く場と生きがいを与える高齢者雇用に取り組む。最近は、女性の就労の場として、経験豊かな中高年主婦による家事代行サービス「かじワン http://www.kajione.com」もスタート。定年退職者と高齢者の就労をサポートする高齢社の取り組みは、テレビ・新聞などでも取り上げられ注目を浴びている。

2012/11/08

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