Vol.18 コミュニティ×コミュニティデザイン

毎回、さまざまな分野でスペシャリストとして活躍するゲストの方々とコミュニティづくりをサポートする『HITOTOWA Inc.』荒氏の対談を通じてマンションライフやマンションコミュニティのこれからを考える連載企画、「つながり ~マンションコミュニティの話をしよう~」。

今回のゲストは、『studio-L』の代表で、コミュニティデザインの第一人者・山崎亮さん。地域が持つそれぞれの課題を、地域の人たち自身の手によって解決する。そんな手法で、数多くのプロジェクトに関わってきた山崎さんと考えるマンションコミュニティのこれから、とは。

コミュニティはつくれない!? コミュニティをつくるためのきっかけをつくる。

荒:僕は前職時代の住宅デベロッパーにてCSR部署を立ち上げた2007年以来、マンションコミュニティをつくるという仕事に関わっているのですが、コミュニティという言葉が市民権を得た背景には、東日本大震災が起こったことや、山崎さんの著書『コミュニティデザイン-人がつながるしくみをつくる』などの影響が大きかったと思います。

その一方で、どうすればコミュニティが育くまれるか、どうすればうまく回っていくかという部分に関しては、まだまだ手探りの部分も多く、進化の余地が残されていると感じています。今日は、山崎さんとのお話を通じて、マンションコミュニティの未来のためのヒントを掴めればと思っています。

山崎:どうぞ、よろしくお願いします! さて、まず最初に僕からひとつ質問をさせて頂きたいのですが、荒さんは『HITOTOWA.Inc』において、具体的にどのような手法でマンションコミュニティに関わっているんですか?

荒:『HITOTOWA Inc.』では、デベロッパーや住宅管理会社から委託されてマンションコミュニティづくりを行うケースが多いです。新規物件の場合は、期間を決めて、子育てや防災、シェア、スポーツといったテーマごとのワークショップやイベントを開催しながら、理事会・管理組合におけるコミュニティづくりのコンサルティングをしています。

一方で、既存マンションの場合は、理事会にファシリテーターとして入ったり、管理会社さんに対してのコンサルティングだったり。マンションコミュニティづくりというと、大袈裟な仕事を想像されることが多いのですが、地道にコツコツと住民や事業者の相談に乗っています。

山崎:小さなことを積み重ねるのは、すごく大切なことですよね。とても納得できます。

荒:はい。やっぱりコミュニティは一朝一夕にはつくれないものだと思うんです。

山崎:そうですね。そもそもの前提として、コミュニティとは人為的につくれるものではない、という定義が多くの社会学者の間でも為されていますよね。これは、20世紀初頭にアメリカ人社会学者のマッキーバーが『コミュニティ』という本を書いた時からずっと言われているのですが、コミュニティというのはビールのようなもので、それ自体をつくることは難しい。

けれど、そこからぷくぷくと浮き上がってくる小さな気泡は人為的につくることができる。その小さな泡を、アソシエーションと呼ぼう、という考え方があります。つまり、コミュニティという土壌の上に、人為的な組織であるアソシエーションがあるというイメージです。

荒:つまり、コミュニティというものは外部からつくれるものではないけれど、その中にある小さなアソシエーションはつくることができる。そして、ひとつひとつのアソシエーションが少しずつつながっていくことで、コミュニティという土壌に良い影響を与える、と。アソシエーションというのは、防災や防犯、ライフスタイル、スポーツといった特定の目的を持ったテーマ型のコミュニティとも言い換えることもできますね。

そういえば、山崎さんが手がける「コミュニティデザイン」も、外部からコミュニティをつくり上げるという意味ではないですよね。

山崎:そうですね。「コミュニティデザイン」とは、コミュニティ“を”デザインすることではなく、コミュニティ“が”デザインすることです。このことを「プロフェッショナルデザイン」と「コミュニティデザイン」というふたつの言葉を使って説明することが多いですね。

荒:「プロフェッショナルデザイン」と「コミュニティデザイン」の違いとはなんですか?

山崎:たとえば建築家やデベロッパー、管理会社などのプロがマンションをつくるのが「プロフェッショナルデザイン」。一方で、「コミュニティデザイン」とは、マンションの使い手であるコミュニティが、自分たちの住まいや地域をデザインしていくということ。

つまり、プロがつくったものをただお客さんとして使うのではなく、自分たち自身もつくり手になってやっていきましょう、ということです。僕たちは、コミュニティがつくり手になるためのきっかけや仕掛けをつくっているだけで、神様のように、コミュニティや人間関係をデザインするわけではないんです。

荒:コミュニティ自体をそうそう魔法のようにつくれるわけではない、ということなのですね。

山崎:ただし、コミュニティや人間関係自体をデザインするのは無理だとしても、コミュニティの親密具合を高めるためのアソシエーションをつくることはできる。最終的にコミュニティをどうハンドリングしていくかという部分は僕らの手の及ばないことですが、一緒に笑ったり食べたりするきっかけをつくることはできるし、それを何度も繰り返すうちに、信頼感やコミュニティへ意識のようなものが醸成されていけば、それはマンションにとってのメリットになりますよね。

荒:はい、同感です。マンションコミュニティの話をすると、「マンションの住人全員が仲良くならなければいけない」と考える方がいるのですが、そんなことはまったくないんですよね。マンションというコミュニティのなかに、多様なアソシエーションを行うグループがあって、それがちょっとずつゆるくつながっていれば、十分だと思います。

山崎:新しいタイプのコミュニティの在り方とは、そういうものだと思います。かつて日本には、とても強固な地縁によるつながりがありましたが、そういうがっちりとしたコミュニティが“しがらみ”と呼ばれるようになり、そこから抜け出したくて東京を選んでいる人もいます。マンションでも、全員が知り合いで、すべての意思決定に顔を出さねばならない、となると息苦しくなってしまうし、無理があると思います。

そうではなくて、小さな集まりにみんながそれぞれ参加していて、集まりを横断したり、友だちの友だちということでつながったり……。小さな気泡の集まりが結果的にゆるやかなコミュニティにつながっていた、というのが今の時代にマッチするコミュニティの在り方かもしれませんよね。

荒:はい、僕も「しがらみ」にはならない、さらに「孤独」にもならない、ちょうどよい関係性を築くお手伝いをしていると自負しています。また、楽しさや趣味を追求するテーマ型のコミュニティは、できるだけ多彩な方がいいですよね。ただちょっと難しいと思うのは、防災や子育てなどの社会課題に対しては、バラバラの気泡のままでは共助が機能しにくい。マンション全体として取り組むべき課題もあると思うのです。そのあたりの道筋については、どのようにお考えですか?

山崎:一見間接的で、効果がないように思えるかもしれないけれど、やはりまずは楽しみを優先したアソシエーションを充実させていくことが重要だと思います。オセロが好き、卓球が好き、将棋が好き……。そうやって住人同士で関わっているうちに、今までつながりのなかった人と知り合いになって、気持ちや仕事、暮らし方が、双方に感じ取れるようになってくる。

そうなると、防災の話をする時にも「よっしゃ!その話、いっちょ乗ろうか」という気持ちになってくると思うんです。いきなり「防災について話しましょう」みたいなところから始めると、堅苦しいし、なかなか話が前に進みません。遠回りに思えるかもしれませんが、防災のようにみんなで考えなければいけない課題に到達するためにも、まずはテーマ型のコミュニティをどんどん進めていくことではないでしょうか。

次のページ:地縁型コミュニティへの参加は きっと、未来への投資になる。

2014/07/09

プロフィール

荒 昌史

HITOTOWA Inc.代表


1980年東京生まれ。2004年住宅デベロッパーに入社。自ら部署を立ち上げたCSRを中心に、ブランド、住宅企画・プロモーションを担当。携わった複数の住宅がグッドデザイン賞を受賞。

2010年独立、HITOTOWA Inc.設立。都市のコミュニティづくり事業を手掛け、新規物件のプロデュースから既存物件へのコンテンツ導入まで、「ネイバーフッド・デザイン」を取り入れた住宅の企画に取り組む。また、住宅・建設・自動車会社等のCSR/CSV事業も展開。社会環境問題の解決に必要不可欠な地縁コミュニティをつくるプロジェクト「Community Crossing Japan」のオーガナイザーも務めている。


●HITOTOWA Inc http://hitotowa.jp/

●Community Crossing Japan http://communitycrossing.net/

●Twitterアカウント: aramasafumi


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