Vol.15 コミュニティ×マンション管理員

毎回、さまざまな分野でスペシャリストとして活躍するゲストの方々とコミュニティづくりをサポートする『HITOTOWA Inc.』荒氏の対談を通じてマンションライフやマンションコミュニティのこれからを考える連載企画、「つながり ~マンションコミュニティの話をしよう~」。

今回のゲストは、「マンション管理員検定協会」理事長の日下部理絵さん。マンション管理士としての豊富な経験をもとにマンション管理員のための検定制度を様々な専門家と共に創設した日下部さんが考えるマンションコミュニティとマンション管理員のより良い関わり方とは。

管理員さんは、マンションの顔!?

「マンション管理員検定」とは?

マンション管理の“専門職”である「マンション管理員」の資質の向上を目指し、2011年に創設された検定制度。

マンションの歴史などの基礎知識から、管理組合運営、マンション管理に関する法令、マンションの建物や設備、「マンション管理員」としての実務スキルや接遇マナー……など、幅広い内容をカバーした検定試験を実施。

現場の「マンション管理員」はもちろん、マンションの管理組合理事やマンション管理会社スタッフ、リノベーション事業者など、マンションに関わる幅広い人々が受験している。
http://www.m-kanken.or.jp/

荒: 2010年に「マンション管理員検定協会」を立ち上げられるなど、日下部さんはマンション管理の専門家として活躍されていますが、そもそも「マンション管理員検定」をスタートさせた理由を教えてください。

日下部:私は2001年度に資格制度が始まった国家資格「マンション管理士」試験の一期生で、取得後、マンション管理会社の勤務を経て、マンション管理士として独立しました。

また自分の住まいも分譲マンションということもあって、プライベートでも仕事でも、数多くのマンション管理員さんとお会いし接する機会が多かったのですが、その度に感じていたのが、マンション管理員さんの存在の大切さです。というのも、マンション住民の立場から見ても、管理会社の立場から見ても、マンション管理士の立場から見ても、管理員さんの対応が良いと、そのマンションの居心地が、すごく良くなるんですよね。

ただ、管理員さんの対応能力は、個人の資質に負うところがとても大きかったし、そもそも「管理員さんってどんな仕事をしている人?」と職業的な地位すら、曖昧だったのです。そこで、“専門職”としてのマンション管理員を客観的な指標で評価するために、「検定制度」を作ろうと思ったことがきっかけになります。

荒:なるほど。マンション管理員さんの業務内容や資質を、可視化するための「マンション管理員検定」というわけですね。

たしかに僕もたくさんのマンションにお邪魔しますが、管理員さんって、すごく頼れる存在ですよね。ただ、日下部さんがおっしゃったように、実はマンション住民の多くは、管理員さんの仕事内容をきちんと把握していないように思うんです。

まず、「管理員さんって何をしている人なのか」ということを教えていただけますか?

日下部:基本的な管理員さんの仕事は、「受付等」、「点検」、「立会」、「報告連絡」の4つの業務プラス、これらに属さない補助業務ですね。

「受付」とは、来客や宅配便、各種申し込みなどへの対応、「点検」は建物や設備、施設の見回りなど。「立会」は工事やゴミ搬出、災害時や事故時などの現場の立ち会い、「報告」は点検や立ち会い結果の報告や、マンション住民への文書配布、マンション管理会社への業務状況報告などです。

荒:その4つに加えて、補助業務がある、と。けっこう仕事が幅広いんですね(笑)。

日下部:そうなんですよ。日本のマンションは平均1棟50戸程度なのですが、80~100戸以下の規模だと清掃員さんが雇用されることは少ない。そうなると、多くの場合、管理員さんが清掃員も兼ねることになります。

また、都市型マンション等では、マンションの代表として地域の町内会などに出席する場合もあります。「管理員=楽な仕事」というイメージを持つ人もいますが、実は知識だけではない対応能力や人柄まで問われるかなりの専門職。なかには、「管理員になって、3カ月で10kg痩せた」なんて人もいるくらいなんです。

マンション管理員の平均的なスケジュール

荒:ずっと管理事務室に座っているだけの印象を持たれていた読者の方も少なくはないと思いますが、実は日々のマンション生活を現場で支えてくれているのが、管理員さんというわけですね。

日下部:困った時やトラブルがあった時に、問い合わせをすることが多いのが管理員さんですし、マンション周辺の地域や来客の受付対応するのも管理員さんです。そう考えると、管理員さんって、マンションの“顔”のような存在ですよね。

だからこそ、事務処理能力だけでなく、コミュニケーション能力がとても大切。ホテルのフロントマンのような対応ができる管理員さんがいれば、マンションそのものの価値も上がると思うんですよ。

実際、海外におけるマンションの管理員さんの地位ってすごく高くて、アメリカだと優秀な管理員さんは他の物件からの引き抜きがあったりしますし、韓国では公的な資格制度があったりもする。“専門職”として、きちんと評価されているんですよね。

荒:たしかに、ある意味でマンションのことを住民以上に知り尽くしているのが、管理員さんなのかもしれませんね。

日下部:実際、自分が勤務するマンションに強い愛着や責任感を持つ管理員さんは、すごく多いんですよ。たとえば、東日本大震災の時の話ですが、管理員さんのほとんどの方が、自分の勤務先のマンションに泊まられたそうなんです。

もちろん、自宅に帰ることができる方もいたはずですが、多くの管理員さんは、心配で帰らなかった。なかにはとても勇敢な方が、「住民の顔を知っている自分が声をかけた方が、みんな安心するから」といって、一戸一戸に声をかけてまわった方もいるそうです。

荒:それは素晴らしいですね。僕もコミュニティイベントなどでマンションに行く機会が多いのですが、積極的に手伝ってくださる管理員さんも多いんです。「マンション管理員検定」に“接遇”の内容が含まれていることが象徴するように、昔にくらべて管理員さんのホスピタリティって、すごく向上しているという印象があります。

それと、管理員さんのなかには、単なる“仕事”というよりも、“社会貢献”という位置づけでマンション管理員になっている人が増えているような気もします。後半は、マンション管理員さんとコミュニティの関係について、より深くお聞きできればと思います。

次のページ:管理員と住民の間に、感謝のサイクルを。

2014/02/07

プロフィール

荒 昌史

HITOTOWA Inc.代表


1980年東京生まれ。2004年住宅デベロッパーに入社。自ら部署を立ち上げたCSRを中心に、ブランド、住宅企画・プロモーションを担当。携わった複数の住宅がグッドデザイン賞を受賞。

2010年独立、HITOTOWA Inc.設立。都市のコミュニティづくり事業を手掛け、新規物件のプロデュースから既存物件へのコンテンツ導入まで、「ネイバーフッド・デザイン」を取り入れた住宅の企画に取り組む。また、住宅・建設・自動車会社等のCSR/CSV事業も展開。社会環境問題の解決に必要不可欠な地縁コミュニティをつくるプロジェクト「Community Crossing Japan」のオーガナイザーも務めている。


●HITOTOWA Inc http://hitotowa.jp/

●Community Crossing Japan http://communitycrossing.net/

●Twitterアカウント: aramasafumi


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