マンション共用施設でコミュニティカフェを運営!プラウド国分寺に見た地域コミュニティにおけるマンションの可能性

街の中に立つマンション。その役割は人が住むということだけでしょうか?地域へ開き、人とのつながりを生む場がマンションにあれば、マンションにも、新たな出会いや住む街への親しみも生まれやすくなるのではないでしょうか?

そこで今回は、東京郊外にある駅近の分譲マンション1階で、街に開かれたコミュニティカフェを運営している鎌田菜穂子さんに、これからのコミュニティの場として、マンションの可能性についてお話を伺いました。

取材協力

鎌田菜穂子さん
地域づくり・地域交流・地域環境の保全などに関する事業を行う「特定非営利活動法人ツナグバヅクリ」代表理事。「カフェといろいろ びより」 (外部リンク)
「コミュニティカフェななつのこ」(外部リンク)を運営。

マンションの1階にコミュニティカフェをオープンするまで

鎌田さんが運営するコミュニティカフェ「カフェといろいろ びより」は、JR中央線国分寺駅近のマンション「プラウド国分寺」の1階にあります。その名の通り、いろいろな人やものが集まりイベントなども開かれるこのカフェは、どのようにして生まれたのでしょうか。

鎌田さんは以前、東京郊外のあるニュータウンで「愛着のある地域を発展させるための仕事をしたい」という思いで10年にわたってまちづくりの仕事に関わりました。

そんな中で出会ったのは――「子育てをしながら暮らす街で、自分たちにできる仕事をつくっていこう」とする同世代の主婦たち。そして、目の当たりにしたのが――当時、郊外の大規模住宅開発で流行していた共用施設が、造るだけ造られた後は意外と使われていない事実でした。

鎌田さんは「共用施設を生かして、マンションに暮らしている人同士はもちろん、マンション居住者と地域住人、マンションと地域をつなぐことが、何かできないか?」という思いが生まれました。その後、鎌田さんの思いを反映するように、千歳烏山駅近くに「コミュニティカフェ ななつのこ」が開設。それを追うように、鎌田さんが子育て時期に縁があった国分寺に、「カフェといろいろ びより」が開設され、鎌田さんに両店舗の運営が任されました。

実はプラウド国分寺が開発される折、市から「地域に開かれた施設」の設置の依頼がありました。そのため、建設側と地元町会や商店会とともに協議を重ね、市民参加のワークショップを開催するなど開発者と地域の相互の理解を深め、理想的なものとして考えられたのが、「カフェといろいろ びより」でした。

中の様子が見えるので、気軽に入ることができますね。

「カフェといろいろ びより」では、イベント内容なども相談にのって、「やりたいこと」の支援をしてくれます。

「カフェといろいろ びより」は、鎌田さんの「愛着のある地域を発展させたい」思いと、「地域に開かれた場をつくろう」と目指して協力した人々の思いが一つなって生まれた、コミュニティカフェと言えるのでしょう。

実際にはどのように活用されているのでしょうか?

「カフェといろいろ びより」では、大きく3つのカテゴリー(日替わり店主・まいにちマルシェ・イベント&ワークショップ)があり、いずれも「やってみたい人」を随時募集しています。

①日替わり店主

出店者の顔ぶれは、地域のママさんグループ、個人店を引退したベテランシニア、お国の料理を提供する外国人とさまざまです。「小さなお子さんからお年寄りまで、誰でも安心して食べられる食材で作られたもの」が統一したコンセプト。マクロビからローフード、「バーバのご飯」のような懐かしい味など、店主さんによってさまざまな料理を味わうことができます。取材した月は12店の参加があり、盛況ぶりが感じられました。

壁のボードには店主名と簡単な内容の説明が書かれています。

②まいにちマルシェ

素材からこだわった焼きたてのお菓子や、手作りのアイスクリーム、丁寧に作られたアクセサリー、昔懐かしい駄菓子、おもちゃが作れるポストカードなどが毎日販売されています。住まいの下に買いに行けるので、気軽にゆっくりと見ることができますね。

レジ横の棚に見やすくディスプレイされています。

③イベント・ワークショップ

カフェと間仕切りされているイベントスペースでは、パン作りやスノードーム作り、編み物などのワークショップが行われる他、間仕切りを外し、カフェ全体を利用して行う寄席や歌声喫茶など、ウキウキするようなイベントがたくさんあります。

近隣の大学卒の落語家、桂竹わさんによる寄席は笑いに包まれます。

町会長さん自ら歌い手さんを紹介して下さった歌声喫茶には、年配の方たちが多く集います。
また、天井や壁に展示ができるので、ギャラリーとしての機能もあります。(展示は軽い物に限られます)

おもちゃを作って遊べるポストカードが販売されており、完成形がディスプレイされていました。

また、夏休みには住民講師による学習塾が開講され、マンション内で勉強のサポートをしてもらえるので、安心して子どもたちが通うことができました。

付き添いの母親は、間仕切り1枚向こうで読書をしながらお茶を飲み、つかの間の自分時間も楽しめます。

出店者もさまざまなら、訪れる人々もさまざま。親子連れはもちろん、シニアのファンも多く、また近隣の大学生も利用しており「私たちは、白いキャンバス地のようなもの。使う方、それぞれが、自分たちの色に染めていける空間であることを大事にしています」と鎌田さんは言います。

何かを、自分の暮らす街で始めたい人への場の提供にもなって、コミュニケーションの場としての広がりを感じます。

マンションでつながる人と地域 ~マンションがクッションの役割に~

「カフェといろいろ びより」では、マンションの入居がひと段落したころ、マンションの住民同士の交流会も開かれ、多くの世帯が集まりました。
同じマンションに入居していても、世代が違う人とはなかなか会う機会はなく、また、引っ越して来たばかりでは地域のことに不案内。そんな人にとって「カフェといろいろ びより」は、マンション内はもとより、マンションの内外の人たちが出会える接点の場となり、気軽におしゃべりをし、地域情報が得られる場となっています。

マンション住民の交流会。この集まりは同じマンションに暮らす人同士の顔の見える関係づくりのきっかけになりました。

また、「カフェといろいろ びより」は国分寺界隈の赤ちゃん連れの母親にも喜ばれています。マンション周辺には小上がりのカフェがなかったのですが、「カフェといろいろ びより」ではマットを敷いたちゃぶ台のあるスペースで、赤ちゃんをねんねさせながらランチが楽しめる日が、定期的に設けられています。赤ちゃん連れの母親にとっては優しい取り組みとして歓迎されています。

――共用施設が地域に開かれていることで、マンションと街の接点が次々と生まれ、いい関係ができているようです。

「カフェといろいろ びより」横の公園の奥には、国分寺崖線と既存樹木を生かした樹林地が保存され、地域に開放されており、訪れる人の心を癒しています。

いろいろな企画をし、多くの多世代の人が訪れる場となるように運営している鎌田さん、「オープンしてもうすぐ1年ですが、次の時代の“まちのコミュニティの担い手”が生まれてほしい。そうした人たちに伴走しながら、地に足をつけて何より人を大事に歩いていきたい」と場を育むことに意欲的です。

最近は、「カフェといろいろ びより」のように「まちづくり」の視点から地域とのつながりを意識したマンションが増えつつあります。マンションと地域を優しく結ぶ「カフェといろいろ びより」は、これからのマンションの施設有効活用のモデルケースと言えるかもしれません。

街とマンションがつながるような施設づくりを意識するだけで、その関係性は変わっていきます。思わず寄りかかりたくなる“クッション”のような、居心地の良い施設を持つマンションは、くつろげるコミュニティの場となり得るのかもしれません。

(文:Loco共感編集部 前田加奈)

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2017/10/05

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