マンションの駐輪場をもっと快適にするには?~最新の駐輪事情について考える!~

東日本大震災以降、自転車の利便性が見直され利用者が増える一方で、マンション駐輪場に置かれる自転車台数や、種類の増加により問題点も増えています。それを受けてマンション・ラボでは、駐輪場に関するアンケートを2013年から実施しています。これまでに問題点が改善されたものもありますが、2017年6月実施のアンケートでは、利用者の約半数が駐輪場に関して何らかの改善を求めています。

そこで、駐輪場の設置などを手掛ける「株式会社ビシクレット」代表取締役 井上喜一朗さんにご協力いただき、駐輪場の最新事情を聞くとともに、アンケート結果を踏まえながら駐輪場について考察していきます。

2017年の駐輪場に関するアンケート結果はこちら

【取材協力】

株式会社ビシクレット 駐輪場関連事業に特化して19年、「街も、人も、自転車も、みんなが喜ぶ駐輪場をトータルプロデュース」をモットーに事業を展開。駐輪機器の製造・販売・施工だけでなく、企画・設計・運営・管理業務など提供サービスは多岐に渡る。マンション駐輪場実績は5,000件以上。→http://www.bicyclette.co.jp/(外部リンク)

ビシクレット代表取締役 井上 喜一朗さん(中央右)とスタッフの皆さん。

駐輪場の見直しのタイミングと把握しておくべきこと

―マンション駐輪場の見直しはどのタイミングで行われているのでしょうか?

大きなきっかけとしては大規模修繕や老朽化のタイミングが多いですが、中には新築から2~3年で、利用のしにくさの声が多く寄せられ、見直しを検討する場合もあります。

実際に見直しを検討する際に大切なことは、課題や問題点がどこにあるかの十分な状況把握と、未来予測です。同じ規模のマンションでも、住人の属性や希望により改善案は変わってきます。

例えば、住人の世帯層が子持ち世代からシニアが中心になり、2段式を撤去し平置きに戻す事例もあれば、子育て世帯の多いマンションでは、数年後には確実に自転車数が増えると予測し、それに見合った策を考えた事例もあります。

アンケートの実施などをして小さな問題点を出し合い、それを踏まえた上で駐輪場の専門家へ相談し、状況にあった改善策をたてることも有効でしょう。ビシクレットではじっくり問題点を聞き取り、マンションごとにカスタマイズした改善策を提案しています。

徹底的に問題点を洗い出すことが快適な駐輪場づくりのカギになります。

スペース不足と出し入れの不便さを解消できるラックとは?

2017年6月に実施したアンケートによると、駐輪場の指摘される問題点はさまざまですが、多いのは、「スペース不足」「出し入れの不便さ」で、2015年のアンケートとあまり変わらない結果でした。その理由は、荷かごやチャイルドシートの巨大化と重量化によるもので、電動アシスト自転車のシェアが2割を超える駐輪場も増えています。

▼2015年の駐輪場アンケートについての記事
「およそ半数の方が不満を抱えるマンションの駐輪場!その理由に迫る!」

―住民の抱える問題点はあまり変わらないようなのですが、最近の駐輪事情はどうでしょう? 

このような課題の解決に向けて採用されてきているのが「垂直2段式ラック」です。従来の2段式ラックは上段ラックを斜めに下ろし、自転車を乗せた後に自力で持ち上げ上段へ戻すので、「重たく辛い」と多くの声が上がっていました。

しかし垂直2段式では、上段のラックをばねの力を利用して垂直移動させるので、女性やシニアでも軽々と上段へ上げることが可能です。また、自転車を取り出した後は自動で上段へ戻る仕組みにもなっていて、不便さが改善されています。

片手で軽々操作できる垂直2段式ラック。雨ざらしの回避とメンテナンスが必要です。

下段ラックについては、スライド式となっていて自転車を左右に簡単に動かせるので、上段の自転車を下ろすときの下段の自転車による出しづらさが回避できます。また40kgまで対応可能なため、電動アシストや大きな荷かご・チャイルドシート付の重さや幅をとる自転車も収容することができ、収容台数を大幅に増やすことができます。取り付け工期も比較的短期間で済みます。

しかし、費用面についてはまとめて導入するとなると、それなりの予算が必要となります。

今あるスペースを生かして収容台数を増やすには?

―では、費用面やスペース的に垂直2段式ラックの導入が厳しい場合、どうしたら少しでも収容台数を増やせるのでしょうか?

放置自転車を整理し、1割近く自転車数を削減できた事例や、平置きの駐輪場にスライド式ラックを導入して、3割程度収容台数が増えた事例があります。

大人の自転車を平置きに置く場合、通常幅55~60cm程度の間隔が理想ですが、チャイルドシート付などの自転車だと60~70cmの間隔が必要となります。平置きとラックと両方が備わっている駐輪場なら、種類を分けて幅をとる自転車はラックに置き、平置きはスリムな自転車専用にするとスペースが増えます。また、子供用自転車は、ラックを使わずに平置きの子供専用駐輪場を作ることでさらにスペースを確保できるようになります。

平置きでスライド式を導入した駐輪場

ラックの導入が困難な場合の問題解消法

―もし、スライド式ラックの導入も困難な場合はどうしたらいいのでしょう?

既存のラックの“メンテナンス”をすることで、使い勝手は確実に良くなります。例えば、高圧洗浄で隙間に入った汚れを落としたり、ボルトの「増し締め」、消耗品のローラー部分を取り替えたりと、年に1回のメンテナンス行うことで利用の不便さの軽減につながります。

隙間に入った落ち葉などを高圧洗浄で排除するだけでも、ラックの出し入れは楽になります

ボルトの増し締めをして不具合を防ぎます。

また、平置きの駐輪場の場合、乱雑な駐輪で出し入れが困難になっていることが多いです。「白線を引く」だけでも整理整頓の意識が生まれ、出し入れがスムーズになることもあります。

白線を引くだけでも整理整頓は可能になります

まずは問題点を洗い出し、自分たちのマンションにあった方法で改善を!

予算もスペースも十分にあれば、垂直2段式ラックを導入することで駐輪場のいくつかの問題点が解決できそうですが、多くのマンションには限られた条件があり、機器の導入は難しい場合もあります。まずは問題点を洗い出し、どう改善できるかを考えた上で、自転車や場所の整理、メンテナンスなど運用面の改善を理事会や管理会社に相談するのが良いでしょう。

井上さんが「ストレスのない、愛のある駐輪場をつくっていきたい!」と話してくれましたが、「互いに気持ちよく駐輪場を使うために何ができるか?」を考え、利用者としてはまずは、ソフト面から良くしていきたいですね。

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文:Loco共感編集部 泉本花代

2017/09/22

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