マンションコミュニティづくりに役立つ!?注目のDIYの新しいカタチ“DIT”とは?

最近マンションでも、自分で物を作ったりリフォームしたりするDIY(Do It Yourself)を楽しむ人が増えてきていますが、“DIT”(Do It Together=ともにつくる)で、モノづくりの楽しさを近隣の人と共有している人たちもいます。

この“DIT”を提唱し、ワークショップ形式で集合住宅や店舗などのセルフリノベーションをサポートしている「KUMIKI PROJECT」の桑原憂貴さんに、その取り組みについてお話を聞き、”DIT”のもたらすものについて考えてみました。

【取材協力】

KUMIKI PROJECT株式会社代表 桑原憂貴さん。
学生時代から国際協力やNPOといった社会貢献事業に興味を持ち、営業職やコンサルタント職を経て、2013年にKUMIKI PROJECTを設立。「ともにつくるを楽しもう」をコンセプトに、“DIT”を提唱し、各地でワークショップを開催しセルフリノベーションのサポート事業を展開中。→http://kumiki.in/(外部リンク)

陸前高田のまちづくりで気付いた、チームでつくる楽しさ

桑原さんが提唱する“DIT”とは、DIYがDo It Yourselfの略で言わば個人でモノづくりすることに対して、何かを「個」ではなく「チーム」でつくることで、共につくり上げる楽しさを共有し合います。KUMIKI PROJECTでは“DIT”を提唱し、ワークショップを通してセルフリノベーションを一緒にできる場づくりや、材料の調達、人集めなどをサポートしています。

桑原さんが“DIT”を考え始めたきっかけは、2011年に東日本大震災が起り、復興支援の一環で当時勤めていた会社から、コンサルタントとして陸前高田の被災地へ派遣されたことに始まります。復興のためのまちづくりのため策定のサポートを2年半携わっていましたが、なかなかまちづくりが進まなかったことから、「もっと直接的にまちの復興の支えになれないだろうか」と考え、会社を辞めKUMIKI PROJECTを立ち上げました。

まちづくりで初めに手掛けたのが、陸前高田の「地域の集会所」建設でした。集まった人々は地域に暮らす老若男女50名――重いものを運ぶ男性、繊細な作業が得意な女性、子どもの面倒を見たり温かい料理の差し入れしたりするおばあちゃんたちなど。それぞれが得意分野を持ち合い、子どもと大人がともにハンマーを打ち、多くの人と一緒に集会場を組み立てていきました。すると、長引く仮設住宅住まいや変わらない生活、復興のいく先が見えず不安を抱えていた人たちが、楽しそうに語り合い気持ちがつながっていきました。

その様子を見ていた桑原さんは、集会所ができた以上に「ともにつくること」が人々に楽しさをもたらし、ものを作れる人を生み出したことに、喜びと人の心を動かす効果の絶大さを感じました。そしてその時、“ともにつくる=DIT”の活動が、「孤独」に陥りがちな都市型生活の人々にも、良い効果をもたらすのではないかと思い立ち、今に至りました。

集会場づくりでのブロックキットの積み上げの様子。基礎工事のやり方もわからない建築未経験者の集まりでしたが、地域の「気仙大工」と言われる3人の棟梁にサポートしてもらいながら2日間で完成しました。

マンションで“DIT”をすることで何が生まれてくるのか?

ワークショップでは、初心者でも気軽にものづくりに挑戦できるようにするため、基本、材木の下処理などある程度の段階までは加工済みの材料を使用します。加工されたキットを使うことで材料の加工に時間が取られず、例えば床の貼り替えの場合、「貼る作業」に専念できるようにしています。それは、KUMIKI PROJECTでは、初心者の人でも楽しく作業できることを大切にしていて、「DITの良さを存分に味わうこと」を大きな目的としているからです。

では、“DIT”をしていくことで、どのような効果の生み出しがあるのでしょうか? 都市型のワークショップから集合住宅での2つの事例を紹介してもらいました。

【都市型ワークショップ事例】

1.二宮団地暮らし方リノベーション

(場所)東京から1時間ほどの湘南の海と富士山が望める、神奈川県中郡二宮町にある昭和40年代に開発された団地の一室。
(参加者)二宮町へ移住に興味のある人・リノベーションに興味のある人・同じ団地の住人など。

マンション部屋のリノベーショで、床貼り、壁のペイント、家具作りを実施。リノベーション初心者は、床や壁に予算をあまり掛けずに簡単に変える方法を学べる場となりました。人手が多く集まったことで工事にかかる時間の短縮でき、業者任せではなく自分たちで作り上げることで達成感も味わえ、コストも抑えることができました。

みんなでワイワイ言いながら手を動かしリノベーションした部屋は、築40年とは思えない明るい部屋になりました。

2.賃貸マンションリノベーション

(場所)神奈川県相模原の中古賃貸マンション空室
(参加者)対象マンションの住居者・対象マンションに入居を考えている人・DIYに興味のある地域の人

賃貸オーナーが空き室の入内見を兼ねたリノベーションとして、床貼りやキッチンのシート貼り、ペイントを実施。入居を考えている人は、ワークショップでオーナーとDIYすることで、賃貸マンションでどの程度手を加えることができるかを知ることができ、その他の部分のリノベーションのイメージも描くことができました。また、部屋に住む前に居住者と出会い交流することで、住む場所の様子が分かり安心感につながります。オーナーにとっては、建物の良さやDIYへの考え方を伝えられるいい機会となりました。

この2つの事例を見ると、複数人数で一緒に作っていく“DIT”では、個人では難しい大掛かりなリノベーションや家具などの制作ができるだけでなく、作る楽しさを共有できる喜びがあります。また、住むマンションや地域の情報を得られる良い機会となり、参加者や開催者がともに自分たちの暮らしに有益なものも得られるようです。

「一緒につくる」が人をつなげ、しなやかなマンションコミュニティ形成に役立つ

“DIT”でセルフリノベーションサポートをたくさんしてきた桑原さんは、「コミュニティとは、孤独としがらみの中間の“緩やかでしなやか”なつながりであるべき」と言います。

集合住宅であるマンションでは、ある程度プライバシーを保ちながらも、特に災害時のことを考えるとやはりコミュニティをつくっておくことも大切です。しかし、「つながり」や「絆」を強要するようなコミュニティ形成法では、負担になりかねない「しがらみ」と感じられてしまうケースもあります。けれども、桑原さんが言うような“緩やかでしなやか”につながるコミュニティなら、分譲マンションでも居住者同士の程良い関係性が保たれ、負担ではなくなります。

また、“DIT”では、いろいろな人がいろいろな形で個の強みを生かせ、活躍できる場を提供するので自然と交流が生まれます。様々な年代・ライフスタイル・趣味嗜好(しこう)の異なる住人が集まるマンションで行えば、住民同士が緩やかにつながるチャンスとなり、コミュニティを醸成させるのに有効となっていくでしょう。

「つくる」ことを共通項にしながらも、「つながる自由」を選択できるところが“DIT”の良さです。

さらには、マンションの集会室など共用施設で古くなったところを居住者でリノベーションしたり、子どもたちと一緒にキッズルーム作ったりなど、自分たちの使う場所を自分たちで作れば、住まいへの愛着がより一層深まるのではと思います。

DIYの新しいカタチの“DIT”――マンション暮らしの「楽しさや心地よさ」のつくり出しに一役かってくれそうです。

▼自分で作るDIY・リノベーションに関する記事
「ウォールデコレーションが好きになる!ビギナー体験会レポート」

「近くでつなげたい!働く・住む・子育ての場~都市型“リノベーション”で実現していく、磯村さん家の理想の暮らし」

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「マンションのコミュニティ事例!ものづくりでつながるマンションのシェアスペース~日の出ファクトリー~」

文:渡辺みずき(Loco共感編集部)

2017/09/15

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