災害対策のためのマンションコミュニティとは?都市のコミュニティづくりを手掛けるHITOTOWA INC.荒昌史さんと考えてみた

大震災以降コミュニティ形成への関心が高まっている昨今、集合住宅であるマンションで、いかにコミュニティづくりをしていくかは、防災や住みよいマンションライフを考える上で関わり深いものです。
そこで、いち早く都市のコミュニティづくりのサポートや、防災減災に取り組んでいる「HITOTOWA INC.」代表の荒 昌史さんと、マンション・ラボ編集長 伊藤鳴が、マンションコミュニティについて考えてみました。

防災減災はみんなの共通課題、多様な楽しみからアプローチ

伊藤
荒さんは、居住者の声をしっかり拾いながら場づくりを進められていますが、荒さんの考える「コミュニティ」とはどういったものか、どんな想いで取り組み始めたのかを、教えいただけますか?

荒さん
2006年から、“地縁型コミュニティ”をつくり、課題解決を行う取り組みをしてきました。“地縁”とは、近隣住民同士で信頼関係をつくることです。あんまりベタベタな義務的なコミュニティは想定していません。どちらかというとゆるやかな関わりがある程度のものです。
コミュニティには、「一緒に楽しむ」という良さと、子育て・防災・高齢化など「不安に感じることを助け合う」ための役目があります。楽しみながら安心して暮らせる環境をつくりたい方々へ、背中を押すような気持ちで取り組んでいます。

荒 昌史さんの穏やかな語り口で、自然に対話がはずみます。

伊藤
荒さんは、コミュニティづくりにいち早く取り組まれていましたが、東日本大震災などの震災を経て、変化はありますか?

荒さん
東日本大震災をきっかけに居住者の方々の参加率が上がりましたね。多くの人の意識に変化があったのは確かですね。2006年当初は「コミュニティ」という言葉にさえ、ピンとこない人が大半でした。でも、共用施設のルールや使われ方などコミュニティを促進する仕組みのあり方は、まだまだ変わっていないと思います。

伊藤
そうですね、共用施設の使い方などは、シェアハウスのスタイルやノウハウを生かしていくと良いなと、私は思っています。荒さんはマンションでのコミュニティ形成のために、具体的にどんな取り組みをしていますか?

荒さん
ひとつのマンションのコミュニティづくりから複数の街区のエリアマネジメントまで、住宅会社や居住者の向けのコンサルティングやワークショップなどを展開しています。
東日本大震災に被災された方々との出会いもあり、「防災減災」をやらなければならないと力を入れてきた経緯があり、その大切さを伝えるワークショップなどの企画開催をしています。管理組合向けの防災ワークショップのみならず、最近は親子サッカー教室や子育て支援、お年寄りの健康促進のためのワークショップの中に防災減災を取り入れて、マンションに住む多様な人々にアプローチできるようにしています。

伊藤
多彩なイベントが開かれているんですね。防災ワークショップとサッカー教室など一見関係が無いように思えますが、どのように両立しているのですか?

荒さん
サッカー防災ワークショップ「ディフェンス・アクション」の場合は、身体を動かしながら防災減災が学べる仕掛けになっています。また、大半のイベントの冒頭や終わりに、必ず15分間は防災減災の話をするようにしています。ライフスタイルはさまざまですが、防災減災については「共通して持つべき課題」ですよね。だから、どんなイベントでも必ず15分は防災の話をしています。

伊藤
面白いですね。「サッカーワークショップに来たのに防災の話を聞く」ことになるのですね! 「防災の話」と正面切っての入り口でなく、柔らかい話の入り口から入ってコミュニティができれば、防災の話も自然にできそうです。

荒さん
そうなんです。皆さん、初めはキョトンとされることもありますよ。マンション居住者向けのウェルカムパーティでも防災の話をするので、「え?パーティに来たのに……」て、思いますよね(笑)。
それでもいいんです。初めから「防災」をうたったイベントにすると、もともと防災に興味がある人しか来ない。そうではなく、入り口は興味関心のあるサッカーであっても、参加したことで防災減災を少しでも意識し、「本質的に大切しなくてはならない」ことに目を向けてもらうことが大事だと考えています。

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「コミュニティ×防災」

荒さんは、サッカーで社会貢献、人とのつながりをつくる場となるように「social football COLO」(外部リンク)を創設しました。「サッカーの感動を自分以外の誰かへの共感につなげていきたい」

いろいろな入口からマンション防災を伴走支援

伊藤
マンションで行われる防災訓練は、マンネリ化しがちですよね。「毎年同じだから……」と、年を追うごとに人が集まらなくなってしまう。荒さんのアイデアを取り込むことで、居住者を促す効果を得られるのではないでしょうか。

荒さん
そうですね。「HITOTOWA INC.」では、マンション防災の研究と実践を重ねていますので、防災に対する考え方は評価していただいています。イベントは手間がかり、マンション理事だけで実施するのは本当に大変ですし、防災も一朝一夕には果たせません。ですから、継続的なプランニングでメニューを提案するようにしています。僕たちは、この活動は「伴走支援」だと思っています。

3年前に依頼のあった大手デベロッパーの新築物件(野村不動産株式会社のプラウド浦和高砂)では、マンション理事の方々と一緒に、防災を盛り込んだイベントを企画しました。
こちらから案を出しながら、居住者を巻き込んで企画書作りや会場準備をし、町歩きをして防災マップを作ったり、子育て座談会やスポーツフェスタなどをしたりしました。居住者からの希望で、今後の継続支援のご相談をいただきました。

「HITOTOWA INC.」ホームページ上の、埼玉県さいたま市のマンション「プラウド浦和高砂」のネイバーフッド・デザイン。(外部リンク)

伊藤
同じマンションでも、さまざまなライフスタイルの人が住んでいますが、居住者の共通項として不可欠なのが「防災」。マンション・ラボでも、さまざまな角度から「防災」への取り組みを提案しています。環境や関心が異なるそれぞれの読者に、「これならできる」「こんなやり方もあるのか」と、防災を身近なものとして捉えてもらうためです。コミュニティづくりにおいても、入口は柔らかく、しかし、関係づくりはしっかりと進めながら「防災」について話し合うことが重要ですね。

荒さん
違う世代や立場の居住者のニーズを拾い、細やかに分けて考えることはとても大切だと思いますね。ひとつのマンションでもいろいろな入口をつくりながら、いくつかのコミュニティが有機的につながり、全体的にゆるやかな関わりが広がっていくように仕掛けています。

「ご近所どうし」のゆるやかなつながりが広がっています。

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伊藤
ゆるやかなつながりを継続することが大切になってくるというわけですね。とすると、やはり情報共有の重要性も感じますね。以前はご近所同士の伝達は回覧板が担っていましたが、今は情報共有手段の幅も広がりましたね。

荒さん
情報発信は丁寧にするようにしています。イベントに参加しなくても内容を知っておいてもらいたいですし、情報を共有することで帰属意識が芽生えますから。発信方法はいろいろ試しましたが、シンプルな「メーリングリスト」は汎用性があって良いですね。

メールアドレスを登録しておくだけでも、非常時にも使えますから。ただ、「アンケート調査で個人情報の共有の可否とその理由の把握」「全員にコミュニティの意義を説明して一筆サインをいただく」といった、居住者一人一人の意見を丁寧に集めるための、とても地道な作業も行っています。

「防災・防犯アーカイブ」

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2017/07/31

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