マンションのコミュニティ事例~SNSや地域住民のつながりが孤独な子育て“孤育て”を救う!~

子育て世代の母親にとってマンションでの生活は、なかなか近隣住民と親しくなる機会が持てず、孤独な思いをしてしまうことが少なくありません。そんな母親を支援し地域コミュニティへの足掛かりとなる場として、マンションの共用スペースにある“グロースリンクかちどき”が今話題となっています。
マンション住人だけでなく近隣住民も登録すれば利用でき、エリア内外に約2万人の登録者があり、多くの親子に利用されています。今回は、グロースリンク勝どきでの取り組みを通して、マンションで安心して子育てできる環境づくりについて考察してみたいと思います。

【グロースリンクかちどきの施設概要】

住所:東京都中央区勝どき1-3-1 アパートメンツタワー勝どき1階
施設内容:プレイホール・多目的室・屋外施設
定休日:月曜日、年末年始、お盆、その他臨時休館日あり
利用時間:朝10時~13時までは未就学児(生後6か月~6歳)専用時間。小学1、2年生は13時~17時まで利用可
会員数:およそ2万人

【取材協力】

PIAZZA(以下ピアッツア)株式会社代表取締役:矢野晃平さん(写真左)
PIAZZA(以下ピアッツア)株式会社PR担当:吉澤晶子さん(写真右)
グロースリンクかちどき施設長:砂金由香さん(写真中)

※PIAZZA株式会社とアパートメンツタワー勝どきは、コミュニティを協働運営しています。

孤独な子育て「孤育て」をサポートするコミュニティスペース

“グロースリンクかちどき”は、東京都中央区にある子育て世帯向け住戸がある賃貸マンション「アパートメンツタワー勝どき」の共用スペースに設けられています。このエリアはここ10年の間に、新しいタワーマンションが続々と建設されました。銀座や丸の内など都心部からのアクセスも良く、子どもを育てやすい施設が揃っているため、子育て世代が多く住んでいます。
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“グロースリンクかちどき”は、子育て世代が多くいる中で、親同士のつながるきっかけがつかめずにいたり、家族や知人の手助けを得られずにいたりして、「孤育て(孤独な子育て)」になっている親の悩みを解消するために始まりました。

遊びも学びも!マンション共用スペースが「地域の広場」に

施設では、ガラス張りが印象的な「プレイホール」で遊べたり、街の先生が子どもたちに特技を教える「マナViva!」のレッスンを受講したり、ワークショップなどを開催できたりします。他にも、じゃぶじゃぶ池やクライミングウォール、レンタルガーデンなど、外遊びができる設備も揃っています。住民以外も利用ができ、街の人たちが気軽に集まれる「広場」のような所になっています。

(左)巨大なジャングルジムがある「プレイホール」は、屋内施設であるため、雨の日の遊び場として重宝がられています。(右)赤ちゃん向けの遊び場や、授乳スペースも用意されています。年齢の異なる兄弟を連れて遊びにいくのにも適しています。

「マナViva!」ではレッスンが受講できる一方で、地域の人たちが活動を行うための「第一歩」となるように、教室やサークルを開くための場としても無料で利用できる機会も設けてくれています。

「マナViva!」は親子連れで参加しやすいものも多数用意されているので、子育て世代のコミュニケーションの場としてはうれしいですね。

リアルとオンラインを融合した新しいコミュニティの形

気軽に利用できる“グロースリンクかちどき”ですが、やはり初対面ではコミュニケーションを取りたくても声をかけにくいものです。そういったサポートに一役買っているのはピアッツァのもう一つの事業でもある、街のシェアリングコミュニティ“PIAZZA”です。
“PIAZZA”は、勝どきエリアの住民同士がコミュニケーションをはかることができ、登録すれば誰でも書き込んだりコメントをしたりすることのできるSNSです。飲食店やお出かけスポットなど地域のおすすめ情報はもちろん、日々の生活の中で困っていること、助けを求めていることを相談する投稿も寄せられています。

このオンライン上で知り合った人を“グロースリンクかちどき”で見かけたり、グロースリンクかちどきで見かけた人がオンライン上の投稿で見つけたり――「リアルとオンラインが融合する」と、それをきっかけに声をかけやすく連絡を取り合えるので、利用者からも好評です。
また、何か困ったことがあっても、「近所の知り合いを直接呼び出して、助けを求めるのははばかられる」と思うときも、オンラインに投稿すれば、投稿を見つけた“ご近所さん”がすぐに反応してくれます。急なSOSに反応してくれるユーザーがいるだけで、顔は見えなくても地域のつながりを感じることができるのです。

幼い娘が40度の高熱を出してしまった母親から、助けを求める投稿が“PIAZZA”にあった時、投稿から10分後に“ご近所さん”からの声がけや、娘さんのことを心配するコメントがたくさん寄せられました。

このオンラインコミュニティではこれまで、「運営側で削除などの対応が必要になるような投稿やコメントはなかった」とピアッツァの矢野さんは話します。オンラインでのつながりにとどまらず、“グロースリンクかちどき”や地域での「リアルなつながり」があるからこそ、節度のある心地よい距離感のコミュニケーションが実現しているのかもしれません。

“良質なコミュニティの仕組み化”を勝どきのマンションから他の地域へ

近頃、新設されたタワーマンションでは、マンション内での親睦を深める共用施設や、イベントが取り入れられているのをよく耳にします。しかし、自分たちが暮らすマンション内で完結するのではなく、マンションの枠を超えた地域でのつながりも必要とされているのかもしれません。

新しいタワーマンションが次々と建設されていく一方で、そこかしこに昔ながらの下町風情を残している街並みが魅力の勝どきエリア。どちらかがどちらかを淘汰するのではなく、新旧が融合しマンション同士でもコミュニティ形成できる場をシェアし合う。また、リアルに集まる場所だけでなく、オンラインを上手く利用した場を融合する――新しいコミュニティの形が誕生しているのを感じました。

個人の空き時間や所有物をシェアすることによって、人と人がつながる「シェアリングコミュニティ」。“グロースリンクかちどき”では、プレイホールに設置された掲示板からも、この「シェアリングコミュニティ」が活発に稼働している様子がうかがえます。

たとえば、グロースリンクかちどきのような素晴らしい設備がなくても、マンションのパーティールームやキッズルームを地域に開放し、SNSのコミュニティなどを作成してメンバーであればだれでも利用できたりするだけでもありがたいですよね。また、子育てや防災訓練など参加する意義の大きなテーマでイベントを設定し、SNSのグループつながりだけで小さな輪をつくり、リアルとSNSを使い分けてコミュニケーションをとってみるのも、すぐにはじめられそうな気がします。

「より良質なコミュニティを醸成するための仕組みづくりをしていきたい」と語る矢野さん。この取り組みを通して、SNSとリアルな場を融合させることで、マンション単体ではなく、町内会や地域でつながりが生まれ、新旧マンションなどの垣根を越えたコミュニティを創り出せることが実感できました。勝どきでのこのような取り組みが、他の再開発の進む地域や移住者の多い地域のマンションでも行われるようになれば、“孤育て”の悩みを抱える親をコミュニティの仕組みによって減らすことができそうです。社会課題を解決できるコミュニティに今後も注目です。

文:Loco共感編集部 夏梅有希

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