不動産コンサルタント長嶋修さんと「マンションの未来を考える」 マンションの管理やコミュニティが資産価値として評価される未来がやってくる!?

本シリーズでは、「マンションの未来を考える」というテーマのもと、さまざまな分野で活躍する専門家の方々のお話をマンション・ラボ編集長 伊藤 鳴が伺ってまいります。

第一回目の今回は、業界初の第三者性を堅持した不動産コンサルタント会社・さくら株式会社会長であり、国土交通省・経済産業省などの委員も歴任している、NPO法人日本ホームインスペクターズ協会理事長の長嶋 修さんです。

国土交通省「不動産総合データベース」の登場で、マンションの履歴書が誕生する?

国土交通省「不動産総合データベースについて」を元に作成 ©長嶋修

伊藤
長嶋さんの近著『不動産格差』に、国土交通省が不動産に関するあらゆる情報を集約したデータベース(不動産総合データベース)を整備しているとありました。このデータベースが出来上がると、将来的には住宅評価に革命が起きるだろうと述べられています。これは大変興味深いですね。

長嶋さん
「不動産総合データベース」は、物件の過去の取引履歴、成約価格、マンション管理情報、周辺不動産取引価格情報、ハザードマップや公共施設などの周辺環境に関する情報、インフラ情報のすべてを一元管理するものです。すでに横浜市、静岡市、大阪市、福岡市において施行運用されています。早ければ2018年度には、順次全国に拡大されていくでしょう。
このデータベースは、当初宅建業者だけに公開されますが、将来的には民間への情報公開も見据えられています。

国土交通省 不動産総合データベースについて(外部サイト)

伊藤
「不動産総合データベース」は、いわば住宅の履歴書、いや履歴書以上の詳細なプロファイルが出来上がる訳ですよね。将来公開されたら、どんな変化が起こるのでしょうか?

長嶋さん
今まで任意のアンケート回答を用いた不動産価格指数やネット情報だけで推測されてきた不透明な中古物件の取引相場価格が、きわめて透明化されるでしょうね。
ある物件の相場価格が現在いくらなのか、過去にはいくらで取り引きされてきたのか、という履歴がひと目でわかるようになります。また、その周辺地域の価格推移までわかるので、同じエリア内にある条件の似たマンションの価格比較なども、一定のアルゴリズムを用いて算出できるようになります。

伊藤
マンションでいえば、その物件の取引価格の履歴もわかるし、現在の推定価格も見えてくる訳ですね。中古マンションを購入する側にとっては素晴らしいシステムです。売る方にとっても適正な市場価格がわかるということですね。

長嶋さん
ただ、このデータベースに入力されていないのが「建物のコンディション」の情報です。しっかり管理されたマンションなら、同じ築年数でも建物の品質や管理状態によって建物の寿命はかなり変わってきます。それからマンションの場合は「管理の質」によっても、住み心地や修繕計画がまったく変わってきますね。

伊藤
マンションの管理の質や、建物のコンディションがデータベースの項目に組み入れられる可能性はあるのでしょうか?

長嶋さん
国土交通省は、中古住宅の評価手法も見直そうと考えているところなので、将来的に可能性はあります。今までのように、経年と共に建物の価値を一律ゼロと見なすのではなく、実際の価値を査定していく必要があるでしょう。
たとえば都心にある築40数年の高経年マンションで、管理体制が良くて大規模修繕も行っているAマンションと、その隣に同じ築年数で大規模修繕もまだやっていなくて建物のコンディションが悪いBマンションがあるとします。「管理の質」で評価されない現在の市場では、この2つのマンションは同じ価格で売られているんです。

伊藤
それを伺うと、ますますマンションの管理体制やコンディションも指標化してほしいですね。

長嶋さん
近未来の住宅市場ではそうなっていくでしょう。中古マンションも、築年数ではなく建物のコンディションと管理状態の善し悪しで、資産価値が二極分化していく時代になるはずです。
アメリカでは、マンションの長期修繕計画や管理組合の運営状況については、買い主はもちろん、お金を貸す金融機関も厳しくチェックします。私がアメリカでマンションを購入した際にも、契約のサイン前に、3年分の分厚い議事録を見せられてチェックしたことがありました。議事録によって、管理組合の体制と熱意を知ることができます。ただ日本では、議事録などの内部資料は、所有者にしか見せないというマンションが多いですが。

伊藤
しっかりと評価されるマンションであるためには、ある程度の情報公開も必要ということですね。以前取材した築41年の京都・西京極大門ハイツ様では、売り主の方のために「管理に関わる重要事項書」というパンフレットを独自に制作して、管理組合の活動や建物の情報などを開示しておられました。他にも、売買価格の安定化を図るために管理組合による「買い取り制度」を検討するなどの画期的な取り組みを行っておられますが、こうした意欲的なマンションがどんどん評価されていくと嬉しいですね。

【京都・西京極大門ハイツの事例】
西京極大門ハイツのスゴイ取り組み マンションは、まちづくりだ!経営学編

伊藤
それ以外に、評価されるマンションであるためにはどういう情報が必要ですか?

長嶋さん
議事録や重要事項書もそうですが、建物に関する各種書類が整備されていることですね。特に、新築時の竣工図書(設計図)を保管していることが重要です。我々さくら事務所へホームインスペクション(住宅診断)の依頼に来られる管理組合さんの半分位が、受け取っていない・紛失したという理由で竣工図書を保有されていません。まれに、カビが生えていて閲覧不可能というケースもありました。非常に大事なものなので、竣工図書は必ず管理組合として保管しておいてください。

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2017/07/04

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