18年目を迎えるパリ生まれの「隣人祭り」にみた、管理人がつなぐ住民の絆

隣人同士が集合住宅の中庭や近隣の広場に集まって、つながりを深める「フェット・デ・ヴォワザン(隣人祭り)」がパリで始まったのは、1999年。2011年に発祥の地であるパリ17区のお祭りの様子をレポートしました。

パリ生まれの「隣人祭り」に学ぶ、マンション内ご近所づきあいの秘訣

その翌年、パリで風刺新聞社への襲撃事件が発生するなど、フランスでは日常生活の中で犯罪テロに対する不安がより増加。隣人同士とのつながりや助け合いの重要性をあらためて考えさせられる機会が増えています。

「隣人祭り」の創設者であるアタナス・ペリファンさんが主宰する非営利団体「ヴォワザン・ソリデールVoisins Solidaires(連帯する隣人)」は、パリでテロが発生した直後、「怖くて外出ができない」「子供に説明できない」といった悩みを隣人同士で語り合い、支え合おうというキャンペーンも実施しました。不安を言葉に出し、聞いてもらえる人が近くにいると実感できるだけでも、安心感につながるからです。

写真左:2017年の隣人祭りのポスター
写真右:テロ発生後に配布されたポスター。「パリでのテロ-隣人同士で語り合いませんか」と書かれています。

そんななか、18年目を迎える今年の「隣人祭り」は5月19日に開催されました。隣人祭りのスタート時から開かれ、いまや500人もの人が集まるというパリ17区のお祭りを訪れました。主催しているのは、共同住宅の管理人をしているルルド・フェルナンデーズさん、通称ルルさんです。

中央の女性がルルさん。歩けば次々と住民に声を掛けられて、なかなか道を進めません。

ルルさんは管理人になって24年目。「隣人祭り」が始まる前から、バカンスの後やクリスマスの前後に住宅の住民を招待し、共同住宅の中庭で夕食前のアペリティフ(食前酒)の会を開催していたそうです。「隣人祭り」がスタートすると、住民がそのまた隣人や友人、家族を呼び始め、規模が徐々に拡大していきました。3年前からは、パリ市に申請して住宅前の道路を通行止めに。パン屋や美容室、レストランなど近隣の商店の協力を得て、子供向けのデッサン教室やメイク教室を開いたり、DJを呼んだりして、地区のお祭りまで発展したのです。

今年は、犯罪テロ対策の特別警戒態勢によって、道路を封鎖してお祭りを実施することはできませんでしたが、同じ通りの集合住宅の中庭で行われました。

会場となった建物の前には大きなポスターがはられました。

ピエロも登場して、子供たちも大喜び。

壁には近隣の協力店の写真を展示。左に見える本は、集合住宅の住民が置いたもの。自由に本を置いて交換しあっているそうです。

来場した方々は、みな名前を書いたシールを胸に張っています。「『隣人祭り』で出会った人たちはこうして名前で呼び合うようになり、次の日から挨拶をしあい、『バカンスはどこに行ったの』『子供は何歳になったの』といった会話をするようになる。そうすると、ただすれ違っていた時とは互いの見方が違ってくるでしょう。より好意的でポジティブな交流が生まれるんです」

ルルさんは、外出がしにくい高齢者の方のために毎日バゲットを届けているそうです。「顔を見たら声を掛けて、できることをしてあげる。それだけです」。隣人の生活環境などを自然のつながりの中で知ることで、隣人の変化にもより敏感になるものです。ひとり暮らしの住民や子供の安全のことなど、日常生活のさまざまな心配事や問題に、より早く、敏感に気づくことができるようになるでしょう。

通常、管理人室が空いている時間は決まっているものですが、ルルさんは「時間があるかぎり」と言って時間を決めていません。また集合住宅に届く郵便物は、すべて管理人室で預かり、住民に手渡すようにしているそう。「管理人室に必ず顔を出してもらうようにして、住民との交流を保つようにしているんです」

「ルルは管理人の中でも特別な存在。とにかく誰かのために、人のために、行動するのみ。理由なんて探さないんです」と誰もが口にしていました。「この地区には49の国籍の人が住んでいるんです。フランス人でも何人でも、私には関係ありません」とルルさん。ルルさんを通して、住宅の住民だけでなく、地域の人々がつながっていきます。

パリには現在、1万5000人の管理人がいますが、管理費を軽減したいという理由などから、近年数が減っているといいます。管理人室がつねに住民を“監視“することを嫌がる住民もいるそうで、それを恐れて、住民とのつながりを最小限に留めようとする管理人もいるという話も聞きます。パリ市は、パリ市民の生活の質は管理人の力によるところが大きいとして、管理人の仕事への理解を深めるために、昨年1月にイベントも開催していました。

人とのつながりを避ける傾向にあるといわれる現代ですが、だからこそ、フランスでも日本でも、住民と住民をつなぐ管理人の役割が、再認識されていくかもしれません。

隣人祭りについて

パリ17区の助役アタナス・ペリファンさんが、孤独や引きこもりや無関心といった社会問題に抵抗するために1999年にスタート。2003年からヨーロッパ、2007年から世界規模に拡大。2017年は在仏英国大使館がパートナーとなり、“隣人”であるフランスとイギリスの友好が宣言されました。

在仏英国大使館で開かれた2017年の「隣人祭り」の発表会で、挨拶をする在仏英国大使。中央は「隣人祭り」創始者のアタナス・ペリファンさん。

2017/06/01

プロフィール

三富 千秋

パリ在住のフリーライター。パンや菓子、料理など食の話題を中心に雑誌や食専門誌に発信しているほか、フランス人のライフスタイルについてのコラムも執筆。フランス人の日常生活をさらに知るべく、フランス各地で取材中。


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