家庭で行った「ライフラインなしのマンション内被災生活訓練」をレビュー&アドバイス

今回は、3人家族が実施した「ライフラインなしのマンション内被災生活訓練」の訓練内容をレビューしました。皆さんもこの記事を参考に、ご家庭ですぐできる防災訓練に挑戦してみてください。

マンションにお住まいの3人家族の「マンション内被災生活訓練」

東京のマンションにお住まいの3人家族の防災訓練についての記事です。今回はこの記事をレビューしてみました。

都内に住む3人暮らしのご家族が、年に2回ご自分の部屋で「マンション内被災生活訓練」を実施されています(訓練内容は上記記事を参照ください)。これまでに真夏と真冬を選んで数回訓練を実施しているというご家庭だけあって、マンション内被災生活について真剣に考えていらっしゃいます。

訓練レビュー:手洗いや食器洗いは極力避けて、医療用使い捨て手袋の使用を

訓練では手を洗うために水を使っているそうですが、被災下のマンションでは排水管が損傷している恐れがあるため、トイレもキッチンもお風呂も水を流さないのが基本です。排水管に損傷があると、汚水が漏水する恐れがあるためです。次回の訓練では、ぜひ水を使わない・流さない前提で訓練してみてください。

震度5強以上の地震が起こったら、マンションのトイレが危ない?

食器はラップを敷いて使っているとのことですが、調理時の手の汚れが気になる場合は、医療用の使い捨て手袋(ノンパウダー/ラテックスアレルギー対応)を使います。これは100枚入りボックスで販売されています。水が自由に使えない生活をしてみると、生活のあらゆる場面で手が汚れやすいことに気付くはずです。使い捨て手袋は、調理だけでなくトイレを処理する際にも使えますし、被災生活の衛生管理には必須の備蓄品です。

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防災備蓄品レビュー:あらゆる場面を想定することがポイント

これまでに訓練をしているだけあって、防災備蓄品もよく考えられています。こうしたらもっと良くなるという点を以下に挙げます。

【照明】

・懐中電灯ではなく、使いやすいヘッドライトや省エネのソーラー式ランタンを備蓄している点が素晴らしいです。3歳のお子さんにはヘッドライトが重いかもしれませんので、お子さんにはヘッドライトを首からぶら下げるか、ぶら下げタイプの軽量ライトを用意してあげるとさらに良いでしょう。
・「リビングの照明にS字フックでランタンを吊り下げた」とありますが、余震の時が心配です。強い余震が収まるまでは食卓に置いて使用されてはいかがでしょうか?

【トイレ】

・「備蓄しておいた防災用トイレシートは水分の吸収がイマイチだった」とありましたが、吸収・消臭効果の高い災害用トイレもあります。粉末凝固剤、タブレット、吸水ポリマーシートなどさまざまなタイプがあるので以下の記事も参考になさってください。
災害用トイレはどれが使いやすい? 災害用簡易トイレの使用テスト

【水関連】

・水の備蓄は合計72リットルあり、家族3人の1週間分としては問題ありませんが、小さいお子さんもいるので10日分ほどあると安心です。
・水以外に、よく飲む野菜や果実ジュース、乳酸飲料などを多めに備蓄すれば、水分も繊維質もビタミンも摂れます。普段から生の果物も常備しておくと便利です。
[地震対策・水の備え]マンションで1家族に必要な飲料水の備蓄量は?
・ウェットティッシュは、すぐなくなります。代用品としてキッチンペーパーも多めに備蓄してください。食器の汚れ取りや雑巾がわりに大活躍します。

【食事関連】

・災害時は、まず冷蔵庫・冷凍庫内の食品から使います。次回の訓練では、冷蔵庫の作り置きや冷凍庫のストックをいかに効率的に使うかという観点で、ライフラインなしの食事をしてみてください。
流通備蓄は冷蔵庫の常備菜まで考える!フリッジストックⓇのススメ

【その他】

・ヘルメットは家族分あると良いです。小さいお子さん用のものも用意してあげてください。
・富士山の噴火による被災を想定されているのであれば、家族分のゴーグルや防塵マスクの備蓄も必要です。マスクはPM2.5対策マスクであれば入手しやすく普段使いできます。
・あると便利なのは、着て動ける寝袋かスキーウェアです。災害時、室内には物やガラス、粉じんが散乱します。ベッドにガラスや粉じんが飛散して使えない場合もありえます。真冬は暖房も使えません。毛布を羽織っても動きにくくなります。防寒対策や安心して眠れるための用意として寝袋などの備蓄も検討してみてください。
・水が使えない前提で衛生面の備蓄をしましょう。備蓄例:拭き取りクレンジングシート、水のいらないシャンプー、ウェットタオル、水を使わない歯みがきシートなど。
・被災生活が長期化すると情報源がラジオだけだと物足りなくなります。スマートフォンにワンセグアプリをインストールしておくなど、他の手段も用意しておくと安心です。車にテレビ視聴設備があれば、車内でニュースを見ることができます。

【収納場所】

・ひとつ気になったのが防災備蓄品の収納場所でした。本棚下のコーナーに布で覆って収納されていましたが、地震の際にはここにあるすべての物が飛び回って散乱すると考えてください。特にカセットボンベが、コロコロ転がる恐れがあります。耐震ラッチ付きの棚に収納するか、細々したものは大きなボックスに入れて固定してください。

長期化するマンション内被災生活を想定して、今後は衛生面の対策強化を

首都直下型地震が起こったら、ライフラインの復旧までに3ヵ月以上かかるはずです。これまでの訓練は約1日で行っていらっしゃいましたが、お子さんの夏休みや冬休みを利用して、2泊3日の丸2日間頑張ってみてはいかがでしょう。

熊本地震では、長期化した被災生活でお風呂が問題でした。マンション内被災生活でも長期化すれば、お風呂とトイレの問題は深刻です。

熊本・大分地震に学ぶ、今後のマンション防災に必要なもの〜トイレとお風呂問題

真夏に2泊3日、水が使えない・お風呂に入れない生活を過ごすと、入浴をどうするか、電気が使えなくなった冷蔵庫の食品をどうするか、さまざまな気付きとアイデアが出てくるはずです。これまでも訓練結果から備蓄品を見直してきたご家庭なので、さらに万全なものになるはずです。


真剣に防災に取り組んでいる内容を拝見して、防災がここまで出来ているのかと嬉しく思いました。こちらのようなご家庭がどんどん増えていけば、マンション防災はさらに進化していくはずです。お友達やご近所の方にもマンション内防災訓練の話をして、マンション防災の輪を広げてください。この記事をご覧になった方々も、ぜひご自分の家庭で試してみてください。

2017/05/22

プロフィール

国崎 信江

危機管理アドバイザー。危機管理教育研究所代表。女性として、生活者の視点で防災・防犯・事故防止対策を提唱している。文部科学省地震調査研究推進本部政策委員、防災科学技術委員などを務める。講演活動を中心にテレビや新聞など各メディアでも情報提供を行っているほか、被災地域で継続的な支援活動も行っている。

おもな著書に『大地震対策 あなたと家族を守る安全ガイド : ビジュアル版』(法研)、『震度7から家族を守る家: 防災・減災ハンドブック』(潮出版社)、『マンション・地震に備えた暮らし方 (地震防災の教科書)』(つなぐネットコミュニケーションズ)などがある。


株式会社危機管理教育研究所

一般社団法人危機管理教育研究所


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