マンションの未来は、ロボットとIoTでさらに便利に?!「変なホテル」の事例からわかったこと

ロボットが、もしマンションの共有部分に導入されたらどうなるでしょう? また、近い未来、ロボットが注目の先進技術IoT(Internet of Things)と結びつくと、どんなに便利な暮らしが待っているのでしょうか?今回は、いち早くホテルにロボットを導入して成功を収めているハウステンボスの「変なホテル」を取材して、ロボットやIoTを活用したマンションの未来を考えてみました。

【IoT(Internet of Things)】とは

情報・通信機器だけでなく、身の回りのさまざまなモノに通信機能を持たせてインターネットに接続。情報交換や相互制御を行い、私達の生活をより便利にするものです。

ロボットスタッフが働く「変なホテル」に学ぶ、ロボットの活用方法

SFアニメを彷彿とさせる動作拡大型スーツ「スケルトニクス」がお出迎え!

「初めてロボットがスタッフとして働いたホテル」として2016年にギネス世界記録に認定された「変なホテル」は、長崎県のテーマパーク ハウステンボス内にあります。
「変なホテル」は、イーストアームとウェストアームの2エリアの宿泊棟があり、共有のフロント棟の入り口には巨大ロボットの姿が見えます。
「おお! 巨大ロボットがお出迎え!?」と思って近付くと、なんと動作拡大型スーツ「スケルトニクス」でした。これは、スーツの中に人が搭乗して動かすというもの。巨大ロボットに搭乗するSFアニメを彷彿とさせますね。

ロボットホテル「変なホテル」は、代表の澤田秀雄社長(株式会社H.I.S.代表取締役会長兼社長)が、光熱費と人件費のかかる従来のホテル運営に対して「いかに生産効率を向上させるか」という課題に取り組んだ結果、実現したものです。メインスタッフにロボットを使うなど、省エネと合理化を追求し、環境配慮型のまったく新しいコンセプトのホテルとして登場しました。

フロント業務を担当するのは、なんと美人過ぎるロボットと恐竜ロボット

フロント業務担当の美人過ぎるロボットの「ゆめこ」さんと、恐竜ロボットの「未来」君。もう1体、恐竜ロボットの「希望」君もいます。

フロントでは、女性型と恐竜型のロボット3体がお客様をお出迎え。ロボットと話しながら、液晶画面で予約名を確認するとチェックイン完了です。
しかも恐竜ロボットは、日本語・英語・中国語・韓国語の4カ国語対応のマルチリンガル。「変なホテル」は、外国人旅行客にも人気のホテルです。マルチリンガルロボットは外国人宿泊者にとってもありがたいですね。

フロントでは、家族連れの小さいお子さんが恐竜ロボットに「バイバイ〜」と挨拶してチェックアウトしている姿を見かけました。ロボットスタッフは、子どもだけでなく大人にも嬉しい存在。チェックインやチェックアウト時にロボットスタッフの写真を嬉しそうに撮るお客様が目立ちました。

→もしマンションのコンシェルジュが、ロボットスタッフだったら?

マンションのコンシェルジュ業務のすべてをロボットに任せるのは難しいとしても、人間コンシェルジュのサポートとして、クリーニング受付などの簡単な受付業務ならロボットにもできそうです。外国人居住者が多いタワーマンションなどには、多国語対応のロボットコンシェルジュがいると便利なのではないでしょうか。

ロボットクロークや荷物を運ぶポーターロボットは、マンション共用部分にもほしい存在!

宿泊者専用のロボットクローク。ロボットアームが働く様子を見ているだけでも楽しい!

ロビーには、ガラス張りのコーナーにロボットクロークがあります。これは小さな手荷物を預かってもらえる宿泊者専用のクロークサービス。パネル操作を行うと、ロボットアームが預かった荷物をロッカーに収納&取り出しまでしてくれます。

ポーターロボットに荷物を載せてタッチパネルで部屋番号を入力すると、お部屋まで案内してくれます。

客室へ荷物を運ぶのは、ポーターロボットです。ポーターロボットが客室を行き来するため、館内は段差がなく自然とバリフリー構造になっているのも嬉しい点です(イーストアームA棟のみ)。ポーターロボットは安全に配慮されてゆっくりと館内を進み、後ろに人が付いていなかったり前に人がいたりすると自動的にストップする安全機能が装備されています。お年寄りや小さいお子さん連れのお客様でも安心ですね。

予約した部屋の前まで来ると自動ストップ。荷物を運び終わると、自分でフロントへ戻っていきます。「なんて賢い!」と、編集部スタッフ一同大感激でした。

→もしマンションの共用部分に、ロボットクロークやポーターロボットがあれば?

スペース的な問題もありますが、マンションに備え付けの宅配ロッカーがロボットクロークになったら楽しそうです。
現実問題として宅配ロッカーに預けられると困るのが、大きくて重い荷物のお届け物。ロボットクロークとポーターロボットがうまく連動して、預かった大きな荷物をポーターロボットで部屋まで運んでくれれば、不在時に大きな荷物を届けてもらっても安心です。
また、マンションのエントランスから自分の部屋まで重い荷物を運んでくれるポーターロボットがいたら、高齢者や乳幼児のいる住民にはかなり便利なのではないでしょうか? なんだか夢が膨らみます。

顔パスで入室OKなお部屋

部屋の操作盤のカメラによって顔認証します。ICカードキーとの併用も可能。

初めて入室する際にルームカードをかざすと、同時に顔認証の画像が撮影完了。次回入室時には、部屋のモニターに顔を映すだけで鍵の解除ができます。
「変なホテル」で採用されている顔認証システムは、人種や年齢の違いにも対応した精度の高いもの。個人情報保護の観点から、チェックインで保存された顔データはチェックアウト時に破棄するそうですが、今後定宿として使用されるお客様には、ご意向を聞いて保存することも可能だとか。顔パスで定宿ホテルに宿泊できる未来は、実現可能な世界になっているのですね。

→もしマンションのオートロックが、顔認証システムだったら?

顔認証システムは、文字通り「顔パス」という便利な機能。マンションのオートロックや各戸の鍵に顔認証システムを採用していたら、鍵を持ち歩く必要がなくなって便利なのではないでしょうか。「鍵を忘れた!」という場合も、顔パスで自分のマンションへ入れると助かりそうです。

ホテルの室内では、お部屋ロボットが宿泊客をサポート!

ベッドサイドには、照明やエアコンのオン・オフ、アラーム、天気予報を会話形式で行うお部屋ロボット「ちゅーりー」ちゃんと、客室間電話やテレビの視聴、館内設備などをチェックできるタブレットが1台設置されています。

全面ガラス窓の明るい館内では窓ふきロボットが、外では芝刈りロボットが作動中。芝刈りロボットを使っている芝生と使っていない芝生を見比べるとその仕事ぶりが一目瞭然。マンション敷地内の芝生ですぐにでも採用できそうですね。

→マンションの内と外をサポートするロボット

「変なホテル」の室内設備を見ていると、マンションの専有部に電話やテレビの役割を担う多機能タブレット、リモコンやアラームをセットするお喋りロボットなどが常備されていく未来も、そう遠くないと感じさせます。
お部屋ロボット「ちゅーりー」ちゃんのように、お喋りをして室内アシスタントをしてくれるロボットには、将来的に高齢者の見守りサービスを担ってもらう可能性もあるかもしれません。
庭やエントランスなどの共用部分でも、お掃除ロボットを使うことでかなりコストダウンにもつながります。
これら機能を備えたマンション専用ロボットが開発されれば、マンションライフはもっと豊かになるのではないでしょうか。

省エネによる光熱費削減、ロボットによる人件費削減が、マンションでも実現できたら?

「変なホテル」総支配人 大江 岳世志さん

——「変なホテル」を見学させていただいて、スタッフの少なさにも驚きました。現在どのくらいのロボットが稼働しているのでしょうか?

大江さん
「現在ロボット197台(2017年2月1日現在)+従業員が8名で、144室のホテルを管理・運営しています。この規模のシティホテルならば通常約35名の従業員が必要ですので、人件費は1/4程度の削減となっています。代表の澤田秀雄社長が、ロボットを使った生産性の高いホテルをつくりたいという願いが、まさに実現したホテルだと言えます。
ただし従業員が少ない分、普通のホテルにあるルームサービスやレストランは敢えてありません。また、省エネのために人感センサーによる照明、最新空調設備「輻射パネル」、水素エネルギー発電システムを採用しており、光熱費も通常の1/3に抑えられています。ゴミ削減のために必要最低限なアメニティしかご用意しないなど環境にも配慮したホテルですので、宿泊していただくお客様にもご協力とご理解をお願いしております」

人がいないとできないサービスを切り捨てることで人件費削減、最新のエネルギーシステムの導入で光熱費の削減にもつながったということですね。こうしたことが未来のマンションづくりにも生かされれば、管理コストを抑えたIoTマンションが実現しそうです。

有料のアメニティを自動販売機で提供するアメニティストア。簡単なスナックや飲料を販売するスマートキオスク(自動販売機)もあり、1階カフェコーナーで飲食が楽しめます。

ソーラパネルからの余剰電力を水素として貯蔵できる、日本初の水素エネルギー発電システムH2Oneを利用しています。将来的には、余剰電力の売電も計画中だとか。

ホテル全体の空調設備「輻射パネル」。温水と冷水で館内を温度調整する、クリーンでエコな最新設備です。これはぜひ未来のマンションにほしい設備ですね!

——「変なホテル」が実現した究極の生産性を、未来のマンションに取り入れることは可能でしょうか?

大江さん
「縦に長いマンションの場合は、2017年3月にオープンする変なホテル2号 舞浜 東京ベイが具体的な意味で参考になるかもしれませんね。変なホテル2号は、6階建て・全100室で、同じくフロントにロボットを設置します。ロボットアームやポーターロボットの導入は未定ですが、ほとんど同じ設備を予定しています。変なホテル2号における省エネ化やロボット導入による効率化は、未来のマンションのヒントになるのではないでしょうか?」

「変なホテル」2号舞浜 東京ベイの外観とフロント(2017年3月オープン予定)。

——「変なホテル」のコンセプトをマンションに生かすために大切なポイントはありますか?

大江さん
「変なホテルの“変”には、変化し続けるという意思が込められています。今までの常識を越えたところにあるものを目指しているのです。
だから、究極の生産性を追い求める一方で、ワクワクと心地良さが体験できることをとても大切にしています。やはり女性ロボットや恐竜ロボットがホテルで出迎えると、お客様はワクワクされます。その体験を大切にしています。変なホテルは決して無機的なロボットサービスではなく、ポジティブなロボット体験ができる場なのです。未来のIoTを導入したマンションにも、感動と快適さがもたらされれば、きっと豊かな生活が生まれてくるのではないでしょうか」

管理スタッフに専門的な技術がなくても、ロボットは活躍できる!

今回の変なホテルの取り組みについて、マンションのIoT商品企画を行う専門家の視点から、(株)つなぐネットコミュニケーションズ事業推進本部 商品企画室 室長 桂 明伸氏に伺いました。

桂氏
「これだけ多くのロボットを導入しているのに、専門的な技術者は常駐せず、現場スタッフでできることについては対応し、難しい修理に関しては保守会社に送るという合理的な運用が印象的でした。変なホテル様の運用を参考にすると、マンション共用部においてロボットが活躍する日は遠くないと感じました。

ホテルにおける生産性向上の一要因として光熱費の削減があり、これはマンション管理費の削減にも通じるところがあります。ハウステンボスの施設は広大な敷地に低層の建物が広がっており、太陽光パネルの接地面積もたくさん確保できます。今後計画されている施設には、ビル型の施設があるそうで、そういった施設での光熱費削減事例は、マンションにおいても活用できるのではと期待しています。今後の事業展開にも注目です。

私自身、マンション暮らしを行っていて、宅配ロッカー横にポーターロボットがいてくれれば、台車を押すこともなく、手軽で快適と感じました。また、窓拭きロボットを見ていて、外壁の気になる汚れを取るロボットがあれば、マンションの美観の維持、もしかすると資産価値の維持にもつながるかもしれません。私の住むマンションでは、植栽が枯れやすく管理に苦慮しています。芝刈り作業だけではなく、たとえば専門的知識を備えたロボットが植栽を最高の状態に管理・維持してくれれば良いですね。変なホテル様のロボット活用をマンションで置き換えて考えると、さまざまな可能性が感じられました」


「変なホテル」は、ロボットによって生産性を高め、未体験のサプライズをお客様にプレゼントするという、しっかりしたコンセプトに支えられたものでした。未来のIoTマンションは、便利さだけでなく、感動や快適性も住民に与えられるものでありたいですね。とても勉強になりました。

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ロボットホテル「変なホテル」

ハウステンボスにある世界初のロボットホテル。先進技術を導入し、ロボットクロークなどが働き、省エネと合理化によりコスト削減を実現。2017年3月には、千葉県に「変なホテル」2号舞浜 東京ベイがオープン予定。
http://www.h-n-h.jp/(外部サイト)
http://www.h-n-h.jp/maihama/(外部サイト)

2017/01/31

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