つながる首都圏のマンション、理事経験者同士の学びと情報交換の場「RJC48」

rjc48

防災、大規模修繕、コミュニティ形成、ひとつのマンションが抱えるさまざまな問題は、他のマンションでの成功事例を聞いてみると、解決できるアイデアがたくさんありそうです。今回は、そんな情報交換を行っている、マンション理事経験者が集まって学び合うグループ「RJC48」の防災勉強会をご紹介します。

それぞれのマンションの知見や経験を共有する「RJC48」

マンション管理組合理事長勉強会「RJC48(アールジェイシーフォーティーエイト)」は、首都圏を中心に約240名(マンション数約190・総戸数6万戸以上)のマンションの現役理事や理事長、元理事経験者が、自主的に集まって勉強会を行っているグループです。
グループに所属している参加者は、メガマンションやタワーマンションの理事経験者も多く、オンラインでの情報交換や、オフラインでの勉強会を活発に行っています。勉強会の会場は、参加者のマンションの共用施設で行われることもあります。ふだんなかなか他のマンションの管理組合の取り組みを知ることはできない中、こうした情報交換の場は非常に貴重です。

RJC48代表 應田治彦さん
「実際に会って話し合う勉強会は、今回が第22回目です。勉強会は年に5〜6回実施していて、常時50人ほどが集まります。ふだんはサイボウズを使ってオンラインで議論を行っていますが、参加は氏名・マンション名を明らかにした“本名同士でのおつきあい”が基本です」

本名でのおつきあいだからこそ、大規模修繕計画や管理規約・細則事例など、重要なテーマの話し合いや、実際に経験した理事からのアドバイスをもらえる、実践的な話し合いの場になっているようです。参加メンバーの方に「RJC48」の感想を伺うと、参加者の実践的な取り組みや居住者視点はもちろん、自分のマンションを良くしようという意欲ある前向きな姿勢にも学ぶことがたくさんあると口々におっしゃいます。

リバーパーク汐入町会防災センターで行われたRJC48防災勉強会の様子(2016年10月)。

リバーパーク汐入町会防災センターで行われたRJC48防災勉強会の様子(2016年10月)。

今回のRJC48勉強会は、荒川区南千住にあるリバーパーク汐入町会防災センターで行われました。50ヘクタールに4500世帯が住む高層マンションが林立するこのエリアは、かつては木造家屋がひしめく下町でした。防災拠点としての再開発計画により、リバーパーク汐入町会は、災害時には周辺住民12万人を受け入れる広域避難所指定場所にもなっています。

それぞれの防災の悩みを出し合って、解決方法を考えるワークショップ

「うちのマンション」の防災の悩みを付箋に書き出して、課題をジャンル分けしていきます。

「うちのマンション」の防災の悩みを付箋に書き出して、課題をジャンル分けしていきます。

勉強会では9グループに分かれて、居住者目線から見た、「うちのマンション」の防災の課題を抽出し、成功事例や失敗事例などを書き出して、問題点や課題を抽出するワークショップも行いました。その後、グループ毎に話し合った内容を発表します。

発表を伺っていると、皆さんの防災の悩みの多くは、「住民の無関心」「予算不足」「推進者やリーダーの不在」といったものでした。
マンション・ラボ編集部が参加させていただいたグループでは、抽出された課題に対してこう対応したという成功事例を聞かせてくれる参加者がいて、以下の様に非常に有意義な話し合いが行われました。

【うちのマンションの課題と解決への糸口】

・無関心→コミュニティイベント(餅つき、ビンゴ大会)+インセンティブ(餅、TDLの招待券プレゼント、備蓄水の配布など)
・予算不足→企業協賛(飲料メーカーの商品供出、優待など)を取り付けて補う。
・推進者不足→フロア毎に防災組織への参加を義務化する一方で、ワイン付き懇親会を実施してお互いを知り合う場を設ける(アメとムチ方式)。

同じマンション内での話し合いだと、課題抽出のままで終わってしまいそうですが、それぞれのマンションでの成功体験や解決方法を聞くと、自分のマンションでも取り入れられそうな気がします。マンション同士が横でつながる、情報共有のメリットを感じました。

「マンション防災マトリックス」で防災力の見える化を図る

「マンション防災マトリックス」 ©2016 m.motose All Rights Reserved.

「マンション防災マトリックス」 ©2016 m.motose All Rights Reserved.

マンションの防災への取り組みの度合いは、なかなか目に見えてはきません。また、マンションによって防災力には偏りがあります。
そこで「RJC48」のメンバーの一人である防災ネットワーク研究所の代表・本瀬正和さんは、90項目の設問からなる「防災力診断アンケート」を発案しました。
各メンバーの住むマンションを診断したアンケート結果を、
・ハード/ソフト/ハート
・発災直後/数日後/半年後
・自助/共助/公助

の3つの軸からなる「マンション防災マトリックス」に落とし込み、どの部分の防災力が足りていないのかを一目で見てわかるようにビジュアル化しました。また、何年か毎にこのアンケートを実施することで、不足していた部分が補われたかどうかも、継続して追いかけることができます。

この「マンション防災マトリックス」がユニークなのは、備蓄や耐震設備の強化を図るハード面や、防災組織づくりやマニュアルづくりを行うソフト面だけではなく、マンションの日常生活での居住者同士の挨拶や表札の有無、コミュニティ活動の有無などのハート(heart)面も評価している点です。これまでハート面での防災評価というのは、なかなか「見える化」されてきませんでしたが、とても大切な視点です。

ITツールを導入した安否確認訓練(東京都荒川区・トキアス)

トキアスが導入したパソコンやスマートフォンから安否確認ができるITを利用したマンションの防災システムの説明。

トキアスが導入したパソコンやスマートフォンから安否確認ができるITを利用したマンションの防災システムの説明。

東京都荒川区のトキアス(620戸)では、2015年末からマンションの安否確認ができるITシステムを導入しています。住民が任意に電話番号やメールアドレスを事前登録しておくと、マンションのある区内で震度5強以上の地震が起こった場合、自動的にメッセージが送られます。住民が安否やけがの状況などを回答すると、自動で集計され、住民の安否確認ができます。
全体の58%にあたる359世帯がすでに登録しており、マンション内の被災状況や復旧状況などを共有することもできます。

トキアス管理組合理事長 平澤裕二さん
「RJC48の勉強会やマトリックスを実施してみて、自分のマンションの防災力で不足している点が見えてきました。このエリアは、23区内で4番目に大きい確保水量などがあり、マンションの隣には消防署もある、なんとなく安全なエリアだと安心ボケしていたのです。しかし実際は、隣の消防署はうちの専属ではないし、給水所の水も広域避難所に避難してきた人々に優先的に配給されます。防災力は、つまり想像力です。たとえば、隅田川花火大会の時にもし地震が起きたら、花火客がそのまま避難民となって、大変なことになるでしょう。常に最悪のシナリオを想像して、危機感を持って防災に取り組まないといけないと痛感しています」

“防災力=想像力”とは、まさにその通りですね。
またトキアスでは、ITシステムの導入以外にも、理事長や理事が不在でも災害時に行動できるよう防災リーダーを育てる必要があると考え、現在は防災リーダー養成のための研修も実施しています。

トキアス公式ホームページ(外部サイト)

アンケート結果から見えてきた居住者の防災意識(千葉県千葉市・ブラウシア)

ブラウシア管理組合が実施した住民アンケート結果発表の様子。

ブラウシア管理組合が実施した住民アンケート結果発表の様子。

千葉県千葉市のブラウシア(438戸)は、これまでにもさまざまな取り組みをマンション・ラボで紹介してきた、コミュニティの結束力が高いマンションです。現在は、防災委員会を立ち上げて、さまざまなマンションの防災対策を学ぶ勉強会を実施するなど、防災力の強化を計画中です。
今回は、居住者に向けて防災ネットワーク研究所が作成した「住民意識調査アンケート」を実施し、その結果発表を行いました。アンケートを実施することで、居住者がどの程度の防災意識を持ち、また自助対策を行っているのか、ということが見えてきます。ブラウシアの場合は、80%もの居住者が防災対策説明会への参加や災害時の名簿登録にも前向きだという結果がわかりました。

ブラウシア 高田 豪さん
「アンケートは、やればいいのはわかっていても実施するのはなかなか大変です。しかし今回アンケートを実施したことで、居住者の防災意識が数字として“見える化”でき、結果的に管理組合による防災対策の必要性がわかりました。また今後は、防災施策がどのような効果を上げているのかという評価にもアンケートを活用できると思います」

マンションそれぞれで、居住者の防災意識も異なります。また、海に近いかどうかという立地によっても対策は異なってきます。アンケートを活用した“見える化”で、これらの課題が明確化し、防災対策に役立てることができそうですね。ブラウシアでは、今後、良い取り組みをしている他のマンションの管理組合に話を伺って情報収集を行いながら、ブラウシアに必要な防災対策を検討していくそうです。

ブラウシア公式ホームページ(外部サイト)

マンション同士が横のつながりを強化することで、防災力も強化できる!

勉強会の最後は、「自分のマンションはまだまだ何も防災対策ができていないと思ってがっかりすることはありません。それだけ成長していく可能性のある“伸び代”があるということです」と締めくくられました。
勉強会で他のマンションの取り組みを知り、それを刺激として、自分達のマンションに持ち帰って議論していけば、それぞれのマンションの特性に即したかたちで発展していけるはず。
これからのマンションは、マンション同士の横のつながりを強化していくことで、防災力、コミュニティ力、さまざまな面で良いマンションに成長していくのではないでしょうか?
この機会に、あなたのマンションも横のつながりを意識してみませんか?

screenshot
管理組合の横のつながりの確保を目指して、首都圏を中心に約110マンション(総戸数は4万戸程度)の理事会の役員経験者(ほとんどは現役・元理事長)約50名が自主的に集まって活動を行う。活動は、主にオンライン上のグループ掲示板での情報交換、および年に3〜4回のオフラインの勉強会で、互いの知見を共有している。

2016/12/28

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