熊本地震の調査から考える、マンションでの車中泊避難の注意点と必要装備

pixta_25968481_m

熊本地震により、被災時の車中泊避難が注目されています。この機会に、マンション敷地内や駐車場で車中泊避難を検討するときの注意点と必要装備を考えてみましょう。

熊本地震の車中泊避難者調査、単身者は日中職場で過ごし、家族は自宅近傍避難が多い

何十年も前から、車中泊自体は、アウトドア・アクティビティのひとつとして人気でした。
東日本大震災、熊本地震以降、避難生活として車中泊を活用する人々が増えています。しかし、慣れない車中泊で、エコノミークラス症候群といった健康被害問題も発生しています。

2016年7月、危機管理教育研究所と日本財団が、熊本地震の被災地・益城町で車中泊避難をしている被災者に聞き取り調査を実施しました。調査は、益城町各地にある避難所で車中泊生活を行っている車中泊避難者(24世帯36人)と、自宅近くで車中泊をしている自宅近傍避難者(44世帯97人)から聞き取りました。

車中泊避難者は、男女半々の単身者が多く、大多数は日中職場で過ごして、夜眠るときだけ車中泊を行っていました。自宅近傍避難者には家族が多く、プライバシーを確保したい女性や体力的に問題がある高齢者がいる大家族が、自宅近くで車中泊を行っていました。

聞き取り調査を実施した結果、長期間に及ぶ車中泊生活で心身共に負担が大きくなっていることがわかり、益城町の町民グラウンドに宿泊場所としてトレーラーハウスを無料提供する支援を行いました。

熊本の車中泊での問題は、エコノミークラス症候群、不眠、虫、トイレ、防犯の5つ!

熊本地震の車中泊避難者への聞き取り調査からわかったのは、車中泊で困っている5つの問題でした。もしマンションの敷地内や自走式駐車場で、車中泊避難を行う場合にはどう対処したらいいのか、その解決案も含めてご紹介します。

(1)エコノミークラス症候群

熊本地震では車中泊をしていた80代の男性が肺梗塞で死亡した他、エコノミークラス症候群を発症した高齢者が数多くいました。医師などの関連団体が、車中泊避難者や避難所生活者へエコノミークラス症候群対策を呼びかけて、車中泊避難から避難所生活へ切り替える方々も多くいました。
車内をフラットにする
エコノミークラス症候群防止や安眠のためには、車内をフラットにする必要があります。
足元にクーラーボックスを置いて座席と同じ高さにしたり、毛布や布団を丸めて足元を埋めたりするのも有効です。
長時間ずっと車内に籠もるのではなく、日中は外に出て作業をする、体操をするなど、マンションで避難生活の仕組み作りを考える必要があるでしょう。

(2)ストレス・不眠

車中泊避難者は、避難所近くの駐車場に停車して眠っています。駐車場は、夜間も車の出入りがあり、エンジン音、ライト、人の声、車のドアの開閉音、カーラジオや音楽によって安眠が妨げられることがわかっています。
夜間の安眠を確保する注意喚起
熊本地震では、マンションの揺れが怖くて車中泊を選んだ被災者が多く見られました。マンション敷地内や駐車場で車中泊を実施する場合は、夜間の車の出入りや音漏れへの注意を呼びかけて、夜間の安眠を確保するような自治運営が必要となってくるでしょう。

(3)虫

車のドアを開け放って過ごしていると、蚊やハエ、蛾などの虫が車中の灯りに寄ってきます。男性の車中泊避難者は扉を開け放ってTシャツ一枚で過ごせますが、夏になるにつれて虫刺されの大変さから、虫よけ用品を求める人が多くいました。
電池式虫よけの備蓄・供出
車中泊避難では、蚊取り線香などの火を使う虫よけは火災の危険があるので使わないでください。電池式の虫よけ器具や虫よけスプレーをふだんから余分に備蓄していると車中泊避難でも使えます。これは、電気が使えない夏場のマンション内被災生活でも同様に起こりうる問題です。

(4)トイレ

グランメッセ益城の避難所では、車中泊避難者が車を停めている場所からトイレまでの距離がかなり離れていました。真っ暗で遠距離ということもあり、夜間のトイレを我慢する人も多くいました。
仮設トイレの設置
高層マンションで住民全員分が賄える仮設トイレを備蓄している管理組合は、まだまだ少ないと思います。しかしマンションだからこそ、マンション内被災生活に欠かせないトイレ問題を最優先で考えておく必要があります。マンホールトイレは、自治体の下水状況によって使用可否が異なります。自治体に確認して、最適な仮設トイレを備蓄するようにしましょう。

(5)防犯

熊本地震では、単身者女性が一人で車中泊をしていることが少なくありませんでした。益城町では警備員による夜間パトロールを実施していましたが、夜間パトロール時に突然車内を懐中電灯で照らされるのは怖いという苦情があり、車内を照らすのは中止にした経緯がありました。特に女性の場合、就寝中や着替え時、誰かに車内を覗かれるのではないかという不安感はぬぐえません。
すき間のない目隠しを常備する
車内にレールで取り付けるタイプのカーテンだと、少し開いたすき間から覗かれる恐れがあります。窓の四隅を吸盤で押しつけて、窓面すべてを目隠しできるマルチシェードがあると安心です。マルチシェードは、断熱効果や保温効果がある材質のものであればなお便利です。

車中泊避難の注意点と必要装備

熊本地震の車中泊避難聞き取り調査からわかった、車中泊避難で車に備えておくと便利なものをいくつかご紹介します。

車中泊避難であると便利なもの

・非常用簡易トイレ
万一に備えて、車内でできる簡易トイレを備えておきましょう。
・給水袋(折りたたみ式のポリタンク、コック付き)
ちょっと手を洗う、お湯をわかす、うがいする、というときに車内に水があると便利です。
・霧吹き
閉め切った車内は乾燥しがちです。ときどき霧吹きで湿度を上げましょう。
・アイマスク
シェードやカーテンをしていても車のライトは車内に入ってきます。車中泊避難の必須品。
・消臭剤・脱臭剤
車内は、食べものや体臭などのいやな臭いが充満しがちです。常に車内に置く設置タイプの消臭剤が効果的です。
・マルチシェード
着替えや就寝時のプライバシーの確保や、犯罪防止に役立ちます。
・防犯ブザー
女性の単身者には必須アイテムです。小さいお子さんにも持たせておきましょう。

最近はシガーソケットで炊飯できる便利な炊飯器もあります。他にも、災害時に車で役立つという視点で、活用できそうなものを探してみてください。

車中泊避難をする際の注意点や便利グッズなどについては、アウトドア・アクティビティで車中泊を楽しむ雑誌や書籍があります。参考にするとよいでしょう。ふだんから車中泊をアクティビティとして楽しんでいれば、災害時にすぐ応用できますね。

book『カーネル特選!安全・快適車中泊マニュアル―完全保存版』(外部サイト)
車中泊を楽しむ雑誌カーネル(CarNeru)が、熊本地震被災者の車中泊事情を取材した雑誌。車中泊の基本と季節の注意点、車中泊のための便利グッズ紹介などが満載。

マンションでの車中泊避難は、管理組合による検討が必要

上記に挙げた5つの問題をどのように解決するかという課題もありますが、そもそもマンション敷地内や平置き駐車場で、住民の車中泊避難を認めるのかどうかという問題を決めておく必要があります。
熊本地震では、度重なる揺れの恐怖からマンションの部屋で眠るのが怖いという住民が、1階の共用部分や、近くの公園でテント泊をしていたケースがありました。
管理組合として、車中泊避難者に対してどのように対処するのかについては、事前に話し合っておきたいものです。

他に、以下の関連記事もありますので、あわせてお読みください。

熊本・大分地震に学ぶ!マンションの共用部分を避難所として活用するなら?

マンション・ラボ関連サイトでも車中泊避難について役立つ防災グッズを紹介していますので、あわせてご覧ください。
つなぐネットコミュニケーションズ マンション防災支援(外部サイト)
e-mansion life(外部サイト)

2016/12/20

プロフィール

国崎 信江

防災関連専門委員会所属。危機管理アドバイザーとして、全国で防災・防犯対策の講演を行う傍ら、NHKなどのメディアに多数出演し、広く防災・防犯情報を提供している。『マンション・地震に備えた暮らし方』(つなぐネットコミュニケーションズ)、『狙われない子どもにする!親がすべきこと39』(扶桑社)など、著書も多数。

危機管理教育研究所の公式ホームページはこちら!


「守る力を」ネットワーク

「守る力を」サポーター

「減災:3月の議論」で減災コメンテーターとして参加しています。


↑ page top