熊本・大分地震に学ぶ、今後のマンション防災に必要なもの〜トイレとお風呂問題

熊本県阿蘇郡西原村の仮設入浴所(写真提供©危機管理教育研究所)

熊本県阿蘇郡西原村の仮設入浴所(写真提供©危機管理教育研究所)

熊本地震以降、益城町の住民の皆さんの長期間に渡る被災生活をお手伝いしてきましたが、現在のマンション防災に欠けている視点は、トイレとお風呂問題だと痛感しています。

マンション防災に欠けていたことは、長期間の避難生活に必要なお風呂とトイレ

私は熊本・大分大地震における益城町の防災アドバイザーとして、益城町の避難所の環境改善を行ってきましたが、この地震の教訓をマンション防災にも生かせることについてお話したいと思います。

これまで行われてきたマンション訓練では、炊き出し訓練はやっていても、トイレやお風呂の問題については取り上げてきていませんでした。長期化すると、特に困るのがお風呂問題です。

トイレだけでなく、避難所の仮設入浴所待ちに1時間の行列は当たり前

熊本県益城町に設置された仮設トイレ。被災当初は数も少ない状況でした。 (写真提供©危機管理教育研究所)

熊本県益城町に設置された仮設トイレ。被災当初は数も少ない状況でした。(写真提供©危機管理教育研究所)

4月14日に発生した地震から、すでに4ヵ月が過ぎようとしています。当初、益城町の避難所生活では、仮設トイレや仮設入浴所での順番待ちに長蛇の行列ができてきました。現在は避難所の人数も減ったので、こうした混雑は改善されてきましたが、長期に渡る被災生活では、食事や飲み水だけでなく、トイレ、入浴といった基本的な営みについても不自由な問題が多々起こってきました。

自衛隊による仮設入浴所。15時〜22時までオープンしていますが、日中は自宅の復旧作業に忙しく、19〜20時が混雑のピークとなり1時間ほどの入浴待ちの行列ができていました。 (写真提供©危機管理教育研究所)

自衛隊による仮設入浴所。15時〜22時までオープンしていますが、日中は自宅の復旧作業に忙しく、19〜20時が混雑のピークとなり1時間ほどの入浴待ちの行列ができていました。(写真提供©危機管理教育研究所)

仮設入浴所には、シャワー設備が設置されている入浴所とそうでないものがあります。シャワーがなければ、湯船からお湯を使います。写真の規模で1回に入浴できるのは最大20名というところ。1時間入浴待ちをしても、入浴時間は1人10分程度。1人出たら、次に1人入浴できるという具合です。赤ちゃんのいる家庭や高齢者には、つらかったことでしょう。 (写真提供©危機管理教育研究所)

仮設入浴所には、シャワー設備が設置されている入浴所とそうでないものがあります。シャワーがなければ、湯船からお湯を使います。写真の規模で1回に入浴できるのは最大20名というところ。1時間入浴待ちをしても、入浴時間は1人10分程度。1人出たら、次に1人入浴できるという具合です。赤ちゃんのいる家庭や高齢者には、つらかったことでしょう。(写真提供©危機管理教育研究所)

益城町には、3箇所に自衛隊が設置した仮設入浴所がありましたが、使うのは避難所の方だけではありません。入浴所のないほかの避難所や自宅避難している方々が車でやってきて、入浴所の順番待ちをされていました。どうしても誰もが入浴したい時間帯というのは重なってくるものです。また、乳児のいるご家庭や高齢者には、1時間も立ちっぱなしの行列はつらいものです。春から夏にかけての季節だったとはいえ、大雨の日も寒い日もありましたので余計に大変だったことでしょう。ご家族に介護が必要な高齢者がいる人のなかには、入浴をあきらめる方々もいらっしゃいました。お風呂に2週間入っていないという方もざらでした。

もし、都内の大規模マンションの居住者が、避難所の仮設入浴所を使うと?

益城町の避難所は、多いときで約2,000人。7月16日現在で、益城町の14ヶ所の避難所へ避難されている方は合計1,553人。仮設住宅への入居などで徐々に減少してきました。仮設入浴所には避難所以外の人々がやってきていたとはいえ、もしこれが、1,000〜3,000戸規模の高層マンションがある東京で起こった災害だったら、いったいどうなるのでしょうか?

マンションの躯体が無事だったとしても、被災者であふれる避難所にはマンション住民は入りきらないでしょう。救援物資の受け取り、トイレやお風呂を使うために避難所へ通うとしても、物資の配布に数時間、トイレ・入浴待ちに数時間、大規模マンションが多い都心では、まさに民族大移動くらいの大行列になるにちがいありません。また、揺れが怖くて室内で生活できず、車上生活を過ごす方々が多くいらっしゃいました。高層マンションの場合、エレベーターがしばらく使えなくなるので、共用施設を居住者に開放するなどの対策が必要でしょう。

大規模地震は長期化するもの、命は助かっても毎日の営みをどうするのか?

大規模な災害は、復旧までに時間がかかり、長期化するものです。昨今は防災意識も根付いてきたとはいえ、手軽に自分でできる水や食糧の備蓄にばかり目がいきがちで、ようやく防災トイレへの意識も浸透しはじめたばかり。お風呂問題などはいままで取り上げて来られませんでした。ウェットタオルや水のいらないシャンプーなどの準備があったとしても、1ヶ月以上の被災生活ではそれも限界があります。

居住者の多い大規模マンションであればあるほど、災害時には居住者のための避難所として機能できるように考えておくべきでしょう。避難所として認定するかどうかは、自治体ごとに基準が異なります。マンション内避難所も、準避難所として捉えてもらえるのか、お住まいの自治体の防災担当部署への確認や話し合いは必須です。

熊本・大分地震に学ぶ!マンションの共用部分を避難所として活用するなら?

益城町では全1万312棟のうち、9割以上の1万155棟が被災しました。首都直下により、23区がすべて被害を受けたら、いったいどうなるのでしょう?避難所に行けば物資がもらえる、トイレやお風呂が使える。自衛隊がすぐに救助に来る。そんな楽観的な展望は、存在しえないかもしれません。

毎日のあたりまえの営み、食べる、寝る、排泄、入浴が、被災生活でどのように営めるのか。マンションにも避難所と同じ機能を持たせないと、とてもすべてに対応できないはずです。いまマンション防災は、そこまで考えて行動すべきフェーズにあるのではないでしょうか?

皆さんのマンションでも、これからのマンションが避難所機能を持つためにできることを考えてみませんか?

2016/08/26

プロフィール

国崎 信江

防災関連専門委員会所属。危機管理アドバイザーとして、全国で防災・防犯対策の講演を行う傍ら、NHKなどのメディアに多数出演し、広く防災・防犯情報を提供している。『マンション・地震に備えた暮らし方』(つなぐネットコミュニケーションズ)、『狙われない子どもにする!親がすべきこと39』(扶桑社)など、著書も多数。

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「減災:3月の議論」で減災コメンテーターとして参加しています。


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