1枚のカードから始めるマンションコミュニティづくりのアイデア〜切手のいらない年賀状

マンションのお隣さん、顔は知っているけどあまり話す機会がない。そもそもどうやって会話のきっかけをつくればいいの?という人も多いはず。そこで、いま広がっているコミュニティカードや年賀状を使ったマンションコミュニティづくりの活動をご紹介します。

お隣さんへ「切手のいらない年賀状」で、ゆるく長くつながる関係づくり

マンションコミュニティ研究会が作成・配付している「年賀カード」。HPから購入もできます。

マンションコミュニティ研究会が作成・配付している「年賀カード」。HPから購入もできます。

マンションコミュニティをつくるための活動として全国に広がっているのが、「切手のいらない年賀状」運動です。テレビなどでも紹介されているこの運動は、マンションの住民同士で年賀状を送り合うという、とてもシンプルなもの。マンション内のポストに入れるから、切手いらず。「何号室の○○です。今年もよろしくお願いします」の一言でもOK! 簡単ですね。年一度の年賀状なら、あまり会ったことのない住民同士でも自然なかたちでやりとりできます。

実はこの運動には、初年度に1万人が参加し、そこから今も広がっています。この活動を推進しているマンションコミュニティ研究会代表 廣田信子さんにお話を伺いました。

廣田さんふだんあまり交流のないマンションのお隣さん同士でも、1年に1度の年賀状なら、簡単な挨拶と近況を知らせることができますよね。インターネットがこれだけ広がった現代でも、年賀状の習慣だけは、まだまだ日本人の習慣として残っています。

赤ちゃんのいる家庭だったら“泣き声でご迷惑をかけていませんか?”
いつもお世話になっている管理員さんに一言“いつもありがとう”
理事会でご一緒したけどその後会ってない役員仲間に“最近いかがですか?”

一言年賀状に書き添えるだけで、心の距離感がぐんと近づきます。それでいて、べたべた近づきすぎる訳でもありません」

確かに、年賀状だとハードルが低くて簡単です。廣田さんが発案したこの運動、まわりの人や勉強会、講演会で繰り返し呼びかけているうちに、このアイデアを取り入れたマンションがどんどん増えていったそうです。

毎年オリジナルの年賀状カードを作成して、使い方や書き方、実際に使えるカードをセット販売しています。

毎年オリジナルの年賀状カードを作成して、使い方や書き方、実際に使えるカードをセット販売しています。

マンションコミュニティ研究会が配布している冊子では「切手のいらない年賀状」のメッセージ例も紹介して、気持ちを伝える工夫をアドバイス。

マンションコミュニティ研究会が配布している冊子では「切手のいらない年賀状」のメッセージ例も紹介して、気持ちを伝える工夫をアドバイス。

廣田さんマスコミにもこの運動を推進しているマンションを取材いただいて、確実に運動の輪は広がっているようです。神奈川県の大規模マンションでは、管理組合が主導してこの運動を推進してくださっており、オリジナルの年賀状デザインのコンテストを行うなど、どんどんこの運動が進化しているのが嬉しいですね」

廣田さんが「切手のいらない年賀状」運動を思いついたのは、ご自身のマンション暮らしでの体験からだそうです。

廣田さん私が住んでいる部屋のお隣に、お子さんのいる若いご夫婦が引っ越していらっしゃったんですが、生活時間の違いもあって、なんとなく挨拶の機会を逃していたんです。うまくタイミングを掴めないままだったのですが、ある年末に“そうだ年賀状をポストに入れてみよう!”と思いついたんです」

両隣と上下階のお部屋に、日頃のご挨拶と何か一言添えて集合ポストに投函。以来、年に1回の年賀状のやりとりが続き、顔を合わせる機会があれば自然と会話も弾むそうです。

確かに我々は同じマンションに住みながら、お隣の生活の変化に気づくことはありません。子どもが生まれた、結婚した、そんな一言を添えた年賀状が、ゆるやかにお互いのことを知るきっかけになっていきます。もしかすると、マンションにこそ住民同士の年賀状のやりとりが必要なのかもしれませんね。

マンション内の友人同士で年賀状のやりとりをしている人は1/4

マンション・ラボでも2013年12月に実施したアンケートで、「同じマンションの住民間で年賀状を出したことはありますか?」と聞いてみたことがあります。アンケートの回答数約2,500人のうち、約400人(1/6)の方が、住民間で年賀状を出したことがあるとわかりました。

マンション住民間で年賀状を出したことはありますか?

そのきっかけはというと、

・いろいろマンション内のことで相談にのってもらい、お世話になったから。
・引っ越してきてから産まれた子供の同級生のママ友だから。郵便ポストに投函せずに、直接自宅ポストに入れることも。

などのように、ママ友同士で年賀状のやりとりすることが多かったようです。

廣田さん両隣、上下階で暮らすことになったのも“ご縁”です。マンション内のお友達だけでなく、知らないご近所さんにも、遠い友人に近況を知らせるように“切手のいらない年賀状”を送る。そんな小さな勇気を持ってみてはいかがでしょうか?」

マンション内で年賀状の輪が広がるなんて素敵ですね!

つかずはなれず、ゆるやかなコミュニティをハグくむ「コミュニティカード」

マンションコミュニティ研究会が配付している『カードdeコミュニケーション』冊子。「切手のいらない年賀状」のツールとして、使い方説明や文例、切り取り式ですぐ使えるオリジナルカードがついています。

マンションコミュニティ研究会が配付している『カードdeコミュニケーション』冊子。「切手のいらない年賀状」のツールとして、使い方説明や文例、切り取り式ですぐ使えるオリジナルカードがついています。

廣田さんらは、年賀状だけに限らず、ふだんからカードで気持ちを伝えるために「コミュニティカード」のやりとりも提案しています。

廣田さんたとえば長期間家を留守にするときには携帯番号を添えてカードで伝えておけば、何かと安心です。また誕生会などで子ども達が家に大勢集まる日の前日にも、あらかじめ隣近所にイベントがあることを伝えておけば、不愉快な思いをさせずに済みます。ちょっとしたメッセージを一言伝えるだけで、その後の対応はかなり違ってくるはずですよ」

仕事やプライベートでも、何かの受け渡しの際に一言書き添えてあると嬉しいですよね。自分が嬉しいことは、相手も嬉しいはず。相手の気持ちになって、気遣いをする。その積み重ねが、きっとコミュニティをつくりだしていくのではないでしょうか。それにカードの手書きの文字には、メールやSNSにはない、あたたかみがありますよね。これはグッドアイデアです。

結局アナログな手法で心を伝えるのが、コミュニティづくりの早道なのかもしれない

飼っているペットの写真を使って、カードや年賀状を自作してみてもいいですね。

飼っているペットの写真を使って、カードや年賀状を自作してみてもいいですね。

これまでにこの運動をマンション内でやった方々からの感想が、マンションコミュニティ研究会のサイトにまとめられています。少し抜粋して紹介してみましょう。

●上階の方、その他、お顔がわかる方10数軒に年賀カードを送りました。 すると翌日には家の郵便受けにほとんどの方からのお返事カードが!どれもこれもうれしくて。思わずもう一度お返事を書きたくなりました。

●3年くらい前に一軒家から移って来られたという、殆どお話をしたことのない年配の方は、「一軒家よりもむしろマンションの方が、コミュニティは必要ですね」とカードにしたためて返信を! 親近感を持って接してくださいました。

相手から返事があるって嬉しいもの。運動に参加したほとんどの方々が、確かな手応えを感じているようです。

マンションコミュニティ研究会 カードdeコミュニケーションの感想はこちらで読めます。

廣田さん最初は、「返信がなくてもいいや」くらいの気持ちでおおらかに構えていればいいと思います。いつか気持ちは自然と伝わります。

カードのやりとりで、相手の顔や生活が見えてくる。そうすると、隣近所の人は「無個性の誰か」ではなく、名前と顔を持った一個人として認識されていくはずです。顔の見えている誰かとつながっていくことが、結局マンションの騒音問題にしても防災にしても、さまざまな課題解決に役立ってくるんですよね。」

アナログな手法が、実はマンションコミュニティづくりのいちばんの早道なのかもしれません。お金も手間もかからない。必要なのは、ポストに投函するというほんの少しの勇気だけ。あなたも、来年は両隣や上下階の人に来年の年賀状を出してみませんか?

マンションコミュニティ研究会

2010年に設立された、マンションにおける実践的コミュニティの研究と活動を推進する研究会。「切手のいらない年賀状」運動以外にも、民泊問題、高齢者支援、コミュニティづくりなどマンションに関するさまざまな課題解決のために活動しています。勉強会の開催や講師派遣も行っているので興味のある方はサイトをご覧ください。
http://www.mckhug.com

2016/05/09

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