超防災マンションが教える、防災コミュニティづくり成功の秘訣

阪神・淡路大震災を経験した後、防災功労者 内閣総理大臣表彰を受賞したすごいマンションがあるんです!

「無理せず」「楽しい」をモットーに自主的な防災に取り組む、超防災マンション「加古川グリーンシティ」。その成功の裏にはいったいどんな秘訣があるのでしょう?加古川グリーンシティ防災会の会長に直接インタビューして、マンション防災のこと、いろいろ聞かせていただきました。

加古川グリーンシティ防災会

加古川グリーンシティ防災会 【HP

兵庫県加古川市に位置する大規模マンションの自主防災組織。その多彩な防災活動で各方面から高く評価され、「防災功労者内閣総理大臣表彰」等数々の受賞歴をもつ。

大西賞典さん

大西賞輔さん

加古川グリーンシティ防災会の会長。軽快かつコミカルな語り口の中に、時折見せる理系思考が印象的。ゆるぎないリーダーシップで周囲からの信頼も厚そう。

「きっかけ」はなんでもいい。 とにかく、スタートしてみることが肝心。

こちらの防災会は、現在何人で活動されていますか?

大西会長
マンションに住む全員が防災会員です。だから約1800人ですね。その中に幹事会があり、班長、副班長、各棟の隊長etc…といった連絡ラインが組織されています。
実際災害が起きてしまえば、必ずしもそのライン通りに機能するとは限りません。だから全員がそれぞれの役割を担ってフレキシブルに動けるようにしていきたいですね。

なるほど。全居住者が当事者、ということですね。
では、どうやって組織化していかれたんでしょうか?

大西会長
もともと、管理組合設立直後からあった自衛消防隊という組織をベースにして今の形に編成していきました。

立ち上げに際し、ご苦労なさった点は?

大西会長
実はそれほどの苦労はないです。全くのゼロからのスタートではなかったし、比較的スムーズだったように思います。
たとえゼロからの立ち上げでも、まず「誰か」が核になって、小さなチームで活動を開始できれば、同じような組織づくりは可能だと思います。最初は本当に少人数でいいんです。どんな形でもスタートを切れば後につながっていくと思います。

「コミュニティこそがライフラインだ」と語る大西さん

「コミュニティこそがライフラインだ」と語る大西さん

初めの一歩を踏み出してみることこそ肝心、ということですね。
ところで、防災組織を立ち上げようと思ったきっかけはやはり、阪神・淡路大震災を経験されたからなのでしょうか?

大西会長
そうですね。阪神・淡路大震災の後、県が各自治体に自主防災組織の結成を呼びかけたんです。それで「うちのマンションで防災組織を作れば60万の補助金がもらえるらしい」って聞いて、「じゃあうちでもやろうか?」といった軽いノリでした(笑)。

えーっと、それはつまり・・・補助金目当て、だったと?(笑)

大西会長
そうです、完全にヨコシマな考えです(笑)。記事にしにくいでしょ?でもそれが事実なんです。
当時、防災対策に60万円なんて、相当な防災備品が買えると思いましたね。実際に防災対策をやり始めてみたら、60万なんて微々たるものでしたが。それでも、それをきっかけに今の形があるわけです。

大工仕事が得意。炊き出しができる。 みんなのスキルを登録する「町内チャンピオンマップ」。

こちらの防災会では、アイデアに富んださまざまな防災の取り組みをされています。中でも「町内チャンピオンマップ」は実に画期的ですね。

大西会長
あるセミナーでヒントを得ました。マンション住民はさまざまな職種や得意な能力を持っています。そのスキルを登録してもらうという制度です。

加古川グリーンシティの町内チャンピオンマップとは?

マンションに住む方に、職種や免許、特技などを登録してもらう制度のこと。防災意識の向上と、災害時・緊急時など「もしも」の時、適切な人に力を借りるための手助けになる。

例えば・・・
大工仕事が得意だ/重機を扱える/インターネット関連に強い/お裁縫が趣味だ/特技は特にないが、炊き出し、買い物、子守、なんでもします

・・・など、どんなことでも登録できる!

今、何名くらい登録されていらっしゃるのですか?

大西会長
大体250名くらいですね。

そんなに多くの方が?!

大西会長
まだまだ少ないですよ。現在居住者が約1800名ですから。せめて2割程度には増やしたいですね。「登録してくれた人には何か進呈!」とかできればいいのですが、予算的にはそういう訳にもいきませんし(笑)。

登録された皆さんの職種まで、きちんと控えてあるのですか?

大西会長
いえ、そこまでは控えてません。ものすごくおおざっぱですよ。3歳の子どもの「楽しくお歌が歌える」なんて登録もあるくらいで。でも、それこそ、その家庭で防災意識が芽生えている証拠です。それがマンション全体の防災力アップにつながっていくはずです。
僕らは、防災とは自分の大切な人を守ることに尽きると考えています。地域を守るという前提ではやっぱり続かない。しんどくなりますしね。自分の家族をしっかり守ることが、結果的に強いコミュニティを作ると思うんです。

地域活動の優先度は“3番目”でいいんです。 大切な人を守るという意識から取り組んでもらえれば。

チャンピオンマップに登録した人には、役割があるんですか?

大西会長
一切ないです。できる範囲で行動していただくことですから。そもそもこの防災会の活動自体、余力で手伝ってもらえればいい、という考え方なんです。災害時は家族優先、仕事優先、その後の“3番目”でいいんです。
強制的に役割が振られると言われれば、誰だって登録をためらいますよね。チャンピオンマップはあくまで、防災意識を高めるための啓発活動のひとつに過ぎないんです。
それに、特に強制しなくても、普段の活動の中で専門的なことを聞けたり、自主的に力を貸してくれたりする人がたくさんいますからね。

他のマンションでも同じような取り組みはできると思いますか?

大西会長
できると思いますよ。実際僕らの資料を他のマンションにも提供しており、この活動は近隣に広まっています。関東のマンションでも取り組まれていますし、テレビでも取り上げられました。

お祭りのイカ焼きで訓練も兼ねる コミュニティのつながりこそが防災のライフライン。

その他、イカ焼き機導入やインターネットラジオなど、ユニークな取組みも多いですね。

大西会長
楽しむことが一番重要です。ただその裏にはとても理系的な計算があるんですよ。
たとえばイカ焼きなら、非常時に米を炊くよりも早くたくさんの量が焼き上がります。お好み焼き粉ならどこの家庭にも大抵あるから、食材確保としても合理的です。お祭りで定期的に使うことで、みんなの訓練も兼ねて楽しめますしね。コミュニティのつながりこそ防災のライフラインです。

噂のマシーン「イカ焼き機」

噂のマシーン「イカ焼き機」 1分30秒で2人前、30分で40人分の食をまかなえる実力をそなえているとか

防災に関心のない人までは助けられない。 日本一厳しい防災組織かもしれません。

空きチャンネルを利用したマンション内のテレビ放送「ニューメディアシステム」の導入なども斬新ですね。

大西会長
はじめは各棟のエレベータホール液晶モニターで緊急情報やコミュニティ情報を確認できるようにしたんです。ただ、いざ緊急事態に直面した時、1階のエレベータホールにまで確認に行かなくてはならなかったんです。
そこでテレビの空きチャンネルを利用して24時間自宅で視聴できるように整備しました。それによって回覧板も必要なくなりました。

ニューメディアシステム

全棟エレベータホールに設置された液晶モニターで緊急情報やコミュニティ情報を確認できる「ニューメディアシステム」。この画面を各家庭テレビでも視聴できるように整備されている

でも、回覧板じゃないと、テレビを見ない人が気付かないのでは?

大西会長
回覧板でも、内容を読まずにハンコだけ押す人がいるでしょう。絶対伝えなくちゃいけないことは、エントランスやエレベータ内へも掲示して、「見ていない」とは言わせない対策を徹底しています。
防災会としては、防災に関心がない人まで助ける必要はないと思っています。極端にいえば、情報を見る気のない人はつまり、助かりたくない人なのだろうし、そこまで救えるとは考えていないんです。

それはなかなかシビアな考え方です!住民の皆さんには周知されているんでしょうか?

大西会長
たぶん、伝わっているでしょう。僕らもあらゆるところで繰り返し、「なにもしない、聞かないというならなら知らないよ」というアナウンスを行っています。助かる気持ちのある人だけが助かればいいと思ってますし。もしかしたら「日本一厳しい防災組織」かもしれませんね(笑)。

現実的に考えれば、そういった割り切りがあるからこそ進めていける側面もあるってことですよね。

大西会長
何もかもすべて、と考えていると、先に進めなくなります。できるところから少しずつ取り組んでいくのが一番着実な方法です。
僕たちのコンセプトは「防災を防災と語らずとも、防災の役割を果たすこと」。つまり、「防災」という言葉を前面に出さず、堅苦しくならないように行事を行ない、参加者が「知らず知らずのうちに防災に関わってしまっていた」と感じるようにし、強い町づくり、仲間づくりをしていくことです。その積み重ねで、忘れた頃にやってくる災害にも間違いなく対応できるはず。最大限、ではなく最小限の対応ですね。
それが「生活防災」という考え方です。

編集後記

冗談を交わしながら、終始楽しそうにインタビューに応じてくださった大西会長。「無理をせず、楽しく」を自らが実践することで、マンション全体にも自然と防災意識が広がっているみたいです。

たくさんの人が防災を身近に感じてマイペースに取り組めば、結果的にマンション全体の防災力がアップするという仕掛け、決して難しいことじゃないような気がしました。

※当記事は株式会社つなぐネットコミュニケーションズ運営サイト「Chorocobi」に過去掲載した記事を転載しています。

2011/01/20

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