マンションの「災害時支援名簿」は、個人情報に該当する?しない?

あなたのマンションでは、居住者の持病や健康状態、支援の必要度を登録した「災害時支援名簿」を準備していますか? 万一の際に、高齢者や障がい者などの要援護者はマンション内に何名いるかご存じですか?

災害発生から公的機関の救助の手が届くまでの間、「災害時支援名簿」は、マンション居住者同士で助け合うために、非常に大切なものです。今回はその名簿を作成する上で大切なポイントについてアドバイスします。

マンションの「災害時支援名簿」作成の上で大切な3つのポイント

東日本大震災で都心のマンションが大きく揺れたことを受けて、マンションの防災意識も高まっています。その高まりの中で注目されているのが、災害時要援護者の安否確認です。住んでいるマンションにどれだけ支援の手を必要としている人がいるのか、その実態を探りたいと考えている管理組合も少なくありません。

しかし、大きな足かせとなっているのが、個人情報保護法を盾にした根強い情報開示への抵抗意識です。マンションの「災害時支援名簿」を作成する上で大切な以下の3つのポイントについて整理してご説明します。

①個人情報を開示したくないと考える居住者へどう対応すべきか
②なぜマンションに「災害時支援名簿」が必要なのか
③「災害時支援名簿」は、どのように運用・管理すべきなのか

ポイント①:一般的なマンションの名簿は、個人情報保護法の対象となりません

「個人情報」とは、個人の氏名、年齢、住所、家族構成、クレジットカードの番号など、個人を特定するさまざまな情報のことを指します。

個人情報を守ることは重要ですが、やみくもに個人情報を開示したくないという理由でマンションの居住者名簿や災害時支援名簿づくりに協力いただけないマンション居住者がいらっしゃることも確かです。

よく誤解されているので、前提として知っていただきたいのは、「一般的なマンションの管理組合が作成する名簿に関しては、個人情報保護法の対象とはならない」ということです。

個人情報保護法の対象は「5,000人以上の個人情報を有する民間の事業者」であり、5,000人を超える世帯数を有していないマンションの自治会や管理組合は該当しません。

マンションでの「災害時支援名簿」づくりに関して、法的な制約はないこと、しかしマンションでも法律に準じた適正な取り扱いを行っていることを居住者全員に理解していただきましょう。

災害時の支援名簿など、有用な活動のために必要な情報は、適正な管理のもとで正しく活用すれば、多くの命を守ってくれます。
以下の情報を参考にして、マンション居住者の皆さんの理解と協力を呼びかけましょう。

消費者庁「よくわかる個人情報保護法〜自治会における名簿の作成・配布について〜」
http://www.caa.go.jp/seikatsu/kojin/reef2010/reef2.pdf

消費者庁 個人情報の保護
http://www.caa.go.jp/seikatsu/kojin/

内閣府 災害時要援護者対策
http://www.bousai.go.jp/taisaku/hisaisyagyousei/youengosya/index.html

内閣府「災害時要援護者の避難支援ガイドライン」(平成18年3月28日)
http://www.bousai.go.jp/taisaku/youengo/060328/pdf/hinanguide.pdf

ポイント②:マンションの「災害時支援名簿」と支援体制の徹底で救える命がある!

マンションで「災害時支援名簿」だけを作っても、その支援体制まで構築していなければ意味がありません。

今回ご紹介する「災害時支援名簿」は、居住者の中から災害時に手助けが必要な要援護者をリストアップして、いざというときに運用していくためのものです。また、世帯のなかで医療関係者などがいる場合、災害時にボランティアとして他の人を支援できるかどうかについても確認する項目を設けています。

「災害時支援名簿」は、マンションの中に、支援をしてほしい人・支援できる人、そのどちらもリストアップすることを目的としています。

特に高齢者や障がい者、乳児がいるご家庭では、災害発生時に優先して避難させるために手助けが必須です。管理組合や自治会で、要援護者リストを掌握し、何かあった際には、すぐ手分けして支援できる体制をつくりましょう。

既往症、かかりつけ医など健康情報の記載が必須!

「災害時支援名簿」には、居住者の健康状態やかかりつけ情報など、健康状態を報告いただくものなので、プライバシーの点で提出を躊躇される居住者もいるかもしれません。

しかし、マンションで災害が発生して、飲料水や食べものを運んだり、病院へ運んだりしなければいけない場合のことを考えると、必要不可欠です。この点について皆さんに納得いただけるよう、事前の説明を行いましょう。

「災害時支援名簿」のサンプルがダウンロードできます!

【災害時支援名簿】※クリックすると拡大します。 Copyright (C) 2014 危機管理教育研究所 All Rights Reserved.

名簿のサンプルをご紹介します。名簿作成の注意点は以下です。
・世帯毎に提出していただきます。
・個人情報を記載してもらう名簿ですので、各戸に手渡しで配布・回収しましょう。人の手で配布・回収することで、回収率も上がります。
・救助時に名前を呼ぶ必要がありますので、氏名にふりがなは必須です。
・既往症の欄には、アレルギーの有無なども記載していただきましょう。
・日本赤十字社の「献血カード」保有者には、会員番号を記載していただきましょう。血液型のプラスマイナスなど詳細情報が得られます。
・持病のある方には、飲んではいけない薬「禁忌薬」の記入をお願いしましょう。
・左の空白欄は、関係者用です。要支援度のランク付けを行い、支援の必要な人がすぐわかるようにします。

ポイント③:「災害時支援名簿」の運用や管理方法を規約に明記して定期的に見直す

「災害時支援名簿」と体制ができあがったら、年に一度の情報更新と、確実な運用や管理方法まで規約に明記して定期的に見直していきましょう。

たとえばマンションでは入居時に「入居者名簿」を提出しますが、その後の情報が更新されず、古い情報のままになっているケースも多いのではないでしょうか。

「災害時支援名簿」は、一度作ればいいというものではありません。高齢者の健康状態は毎年変わっていきます。一年に一度は名簿の定期更新が必要です。

また、ただ名簿を保有するだけではなく、名簿を回収したら要支援者リストを作成し、これらの方々に直接お話を伺い、具体的な支援策について事前に話し合いを行います。マンション内でどのくらいの要支援者がいて、どのような支援策を策定したのか、決定事項をマンション全体で共有しましょう。

さまざまな年代・職業の人々がひとつ屋根の下に住むマンションは、ある意味、ヒューマンリソースの宝庫です。支援が必要な人だけでなく、医療勤務者や介護関係者など、何かあった際に支援ができる人もいるかもしれません。

お互いにできることを手助けする。そんな防災体制が構築できれば、マンション防災の大きな力になるにちがいありません。「災害時支援名簿」が、そのきっかけづくりになるといいですね。


すべてを管理組合や自治会まかせではなく、マンション全体で要支援者を助ける必要があるのだということを居住者全体で共有し、最適な行動をするためにはどうしたらいいのか、ぜひ皆さんで話し合ってみてください。

2014/02/05

プロフィール

国崎 信江

防災関連専門委員会所属。危機管理アドバイザーとして、全国で防災・防犯対策の講演を行う傍ら、NHKなどのメディアに多数出演し、広く防災・防犯情報を提供している。『マンション・地震に備えた暮らし方』(つなぐネットコミュニケーションズ)、『狙われない子どもにする!親がすべきこと39』(扶桑社)など、著書も多数。

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