阪神・淡路大震災の被災マンション、震災直後の被害状況と修復への道のりとは?

Yさんが撮影した震災後の神戸・三宮方面の街

前のページでは、阪神・淡路大震災直後のとあるマンションの被災状況についてご紹介しましたが、今回はその後の管理組合としての話し合いや修繕について、マンション居住者の手記からご紹介します。もし自分が住んでいるマンションが被災したら? その後の話し合いの様子は、マンション居住者全員が真剣に考えておくべき内容といえます。

被災後、マンション修復への道のり

Yさんが住むマンションは、阪神・淡路大震災により大きな損傷を受けました。

Yさん:「私の住むマンションは、幸い倒壊はしませんでしたが、主柱や梁、外壁には少なからず損傷を受けました。しかし、東京から駆けつけてくれた長男(某ゼネコンに勤務)は、“おやじ、心配してもしゃあない。多分大丈夫やで” と言って大きないびきをかいて眠っておりますので、とりあえずは安心しておりました。」

当時理事の一人であったYさんは、震災後の復旧対策に関わりました。その詳細な記録は、知人へのE-mailというかたちで残されていました。当時を振り返ったYさんと一緒に、修復の道のりを追いかけてみましょう。

マンションの被害状況と復旧にかかった1戸あたりの費用

マンションは、震災により建物の支柱のほか、外壁のひび割れ、欠落など無数に被害が生じました。「このまま住んでいて大丈夫なのか」という居住者の声もあり、管理組合から建物の設計・施工を行った業者に調査を依頼。地震発生の1週間後に業者による説明会が開催され、以下の説明がなされました。

・全戸を調査したところ、建物は目視では主柱の破断・梁、ブレースの損傷外壁のひび割れなどが認められるが、傾斜や一部崩壊箇所はない。
・コンピューター解析によれば、もし、補修完了までに相当に大きな余震が来ても震度5程度ならば倒壊の危険はないため、居住には大きな問題がない。
・とりあえず主柱等主要構造部分の損傷箇所の修復工事を早急に行う。

建物の共有部分の修復費用に関しては、管理組合の承認を経たのち、積立金の中から負担。建物のほかの部分も含め修復工事費は、合計約数億円に達しました。当管理組合の世帯数は300戸強ですから1戸当たり約200万円の負担となりました。

そのほかにも、全体共用土地施設復旧工事費が1戸当たり50万円など、1戸当たりの震災復旧工事費は、共用部分だけで合計約250万円。その資金調達は、以下のような内訳となりました。

・各戸より一括徴収 170万円(1戸あたり)
・管理組合の日本住宅金融公庫からの借り入れ 50万円(1戸あたり)
・管理組合の積立金取り崩し 30万円(1戸あたり)

その後、公的補助として1戸ずつへの義援金も支払われました。マンションが被災した場合、こうした費用が発生することは現実問題としてしっかり認識しておく必要があります。

また、被災後まもなくということもあり、不安になった居住者から、説明会の場で、業者への非難や怒号が起こることもあったそうです。

「怒号が起こり始めた説明会の場で、“命が助かったんやから、そういう設計をしてくれた彼らの仕事をちゃんと評価をしようやないか”と言ってくれた人がいて、そこから話し合いの流れが変わりました」とYさん。こうした状況だからこそ、冷静になる必要があります。

紛糾した話し合いの場

Yさんのマンションには、2棟を一括管理する管理組合がありました。しかし、棟によって被害の状況が異なっていたことが、居住者の話し合いの場を紛糾させる結果になりました。その時の様子を、Yさんはこのように記録しています。

Yさん:「管理組合は2棟から構成されておりますが、主柱の破断は、1棟で3カ所、2棟で1カ所発生しました。その後、復旧工事に関して臨時総会を開催。このとき私は議長をつとめておりました。

審議の途中で2棟の住民から、“1棟の被害が大きいのだから、管理組合を2つに分けて、1棟の被害は1棟の住民だけで負担すればいいではないか”という意見が数人からでてきたことには驚かされました。

今まで仲良く1・2棟で協力してやってきたにもかかわらず、お金が絡むとこのような考えがでてくるとは! その気持ちもわからないでもありませんが、少なくとも今はそれを言うべき時ではないし、また、このままでは収拾がつかないと思いましたので、“将来、管理組合を2つに分けると言うことは今後の議論とするとしても、災害発生時以前に遡って分かつというのは不可能であり、また1・2棟住民のお互いの信義にもとるのではないか”と言って押し切りました。」

2棟の管理組合という状況から、このような意見が出たのでしょうが、もし同じ1棟のマンションだとしても、たとえば被害の大きい階と小さい階とでは、こうした意見の食い違いが発生しないとも限りません。お金の問題は、人の心や判断を惑わせます。こうした場合にも揺るがないルールの構築と徹底が必要といえます。

居住者の命を守った、マンションの建物のチカラ

阪神・淡路大震災により、Yさんのマンションで犠牲者は実質上発生しませんでした。死者を一人もださなかったことをもっと評価するべきではないかと、Yさんはいいます。

Yさん:「建物の最大の役割は、中に住んでいる人の命を守るということです。私達のマンションの建物は、その一番大切な役割を十分に果たしてくれたのです」

「住んでいる人の命を守ることが、マンションの最大の役割」、Yさんのその言葉は、重要な意味を持ちます。

耐震や制震マンションが主流になってきた現代、堅固な建物で人の命を守ることができても、中に住む人の防災意識が低ければ、家具の倒壊などの二次災害によって命を失う可能性もあります。マンションという建物のチカラに守られているから安心だという思い込みを捨てて、いまこそ、きちんとした防災対策を室内に施して地震に備えるべきなのです。Yさんの被災体験はそのことを教えてくれています。

 「災害は忘れない間にやってくる」〜日々の備えへ

Yさんの教訓は、「災害は忘れない間にやってくる」ということだそうです。いまも自身のホームページで防災情報を発信し続けています。

また、震災後は、マンションのご近所づきあいが活発になったといいます。

Yさん:「マンションは、鉄の扉を閉めたら没交渉となります。それがいい部分でもあるけれど、悪い部分でもあります。震災直後は、居住者の安否確認をするすべもなく、一人暮らしの高齢者の部屋には郵便受けから声をかけました。幸いちゃんと避難されたあとだったのですが、日頃のご近所づきあいの大切さを痛感しました」

その後も大がかりな地区全体の防災訓練、年に数回の児童公園での餅つきなどの地域イベントで顔見知りをつくる機会を持つなど、地区全体でさまざまな防災への取り組みが実施されているそうです。

南海トラフ地震のニュースも多い昨今、自助と共助で災害に備えることが大切だと語るYさん。いまも南海トラフ地震に備えて関連ニュースのチェックを欠かすことはありません。

Yさんが撮影した震災後の神戸・三宮方面の街

もし明日、大地震が来たら?
あなたはどんな行動がとれるでしょう?
あなたと家族の命を守るために、もう一度マンションの防災を考え直してみませんか?

2015/01/13

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